こんにちは、ひかりです。
今回は微分方程式から定数係数単独線形微分方程式について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 定数係数単独線形微分方程式の微分作用素 \( D \) を用いた表現について
- 定数係数単独線形微分方程式の一般解と基本解について
- 微分作用素 \( D \) の性質と計算法について
定数係数単独線形微分方程式の微分作用素 \( D \) を用いた表現
いままでは、変数が \( x \) による関数(つまり変数係数)の線形微分方程式を扱ってきました。
今回はもう少し扱いやすい定数係数の線形微分方程式
$$ y^{(n)}(x)+a_1y^{(n-1)}(x)+\cdots+a_{n-1}y'(x)+a_ny(x)=f(x) \tag{1} $$
を考えます。ここで、 \( a_1,\cdots,a_n \) は定数、 \( f(x) \) は既知の連続関数、 \( y(x) \) は未知関数になります。
この方程式(1)は
$$ D=\frac{d}{dx}, \ D^2=\frac{d^2}{dx^2}, \ \cdots, \ D^k=\frac{d^k}{dx^k} \quad (k:自然数) $$
とおくことにより、
$$ (D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n)y=f $$
と表すことができます。
つまり、この \( D \) というのは微分可能な関数 \( f \) を作用させると、 \( Df=\frac{df}{dx} \) として \( f \) の微分を返すものなので、微分作用素といいます。
また、この \( D \) を用いて、積分可能な関数 \( g \) に対して \( \displaystyle D^{-1}g=\int g dx \) とおきます。
ここで、
$$ L(\lambda)=\lambda^n+a_1\lambda^{n-1}+\cdots+a_{n-1}\lambda+a_n \quad (\lambda\in\mathbb{C}) $$
に対して、
$$ L(D)=D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n $$
と定めると、方程式(1)は \( L(D)y=f \) と表せます。
(この \( L(\lambda) \) のことを方程式(1)の特性多項式といいます。)
定数係数単独線形微分方程式の一般解と基本解
まず、 \( y=L(D)^{-1}f \) が方程式(1)の解となるように、 \( L(D)^{-1} \) を定義していきましょう。
(1) まず、次の方程式を考える。
$$ D^2y=f $$
これは、 \( y^{\prime\prime}(x)=f(x) \) と表せる。よって、
$$ (D^2)^{-1}f=y=\iint f dxdx $$
と定めればよい。よって、 \( (D^2)^{-1} \) を \( D^{-2} \) と表す。
(2) 今度は、次の方程式を考える。
$$ (D-a)y=f $$
これは、次のように表せる。
$$ y'(x)-ay(x)=f(x) $$
よって、両辺に \( e^{-ax} \) をかけると、
$$ (e^{-ax}y)’=e^{-ax}f $$
となるので、積分をして \( e^{ax} \) をかけると、
$$ y=e^{ax}\int^xe^{-a\xi}fd\xi $$
そこで、 \( y=(D-a)^{-1}f \) より \( (D-a)^{-1} \) を
$$ (D-a)^{-1}f=e^{ax}\int^xe^{-a\xi}fd\xi $$
で定義する。
(3) 最後に、次の方程式を考える。
$$ (D^2-2aD+a^2)y=(D-a)^2y=f $$
これは、
$$ \begin{cases} (D-a)y=z \\ (D-a)z=f \end{cases} $$
と表せるので、(2)より、
$$ z=(D-a)^{-1}f=e^{ax}\int^xe^{-a\xi}fd\xi $$
したがって、
$$ \begin{align} y&=(D-a)^{-1}z=e^{ax}\int^xe^{-a\xi}zd\xi \\ &=e^{ax}\int^xe^{-a\xi}\left(e^{a\xi}\int^{\xi}e^{-a\eta}fd\eta\right)d\xi \\ &=e^{ax}\int^x\int^{\xi}e^{-a\eta}fd\eta d\xi \end{align} $$
そこで、 \( y=(D-a)^{-2}f \) より \( (D-a)^{-2} \) を
$$ (D-a)^{-2}f=e^{ax}\int^x\int^{\xi}e^{-a\eta}fd\eta d\xi $$
で定義する。
まとめると、
任意の定数 \( a \) に対して、 \( (D-a)^{-k} \) を次で定義する。
$$ (D-a)^{-k}f=e^{ax}\int^x\int^{\xi_1}\cdots\int^{\xi_{k-1}}e^{-a\xi_k}fd\xi_k\cdots d\xi_1 \quad (k:自然数) $$
特に、
$$ D^{-k}f=\int^x\int^{\xi_1}\cdots\int^{\xi_{k-1}}fd\xi_k\cdots d\xi_1 \quad (k:自然数) $$
これをもとにして、 \( L(D)^{-1} \) を考えてみましょう。
次の方程式を考える。
$$ (D-a)(D-b)y=f $$
これは次のように表される。
$$ \begin{cases} (D-a)y=z \\ (D-b)z=f \end{cases} $$
まず、 \( D-a \) と \( D-b \) が交換可能であることを見る。
$$ \begin{align} (D-a)\{ (D-b)y \}&=(D-a)(y’-by) \\ &=D(y’-by)-a(y’-by) \\ &=y^{\prime\prime}-by’-ay’+aby \\ &=\{ D^2-(a+b)D+ab \}y \end{align} $$
同様に
$$ (D-b)\{ (D-a)y \}=\{ D^2-(a+b)D+ab \}y $$
よって、
$$ (D-a)(D-b)=(D-b)(D-a)=D^2-(a+b)D+ab $$
これを用いると、
$$ y=(D-b)^{-1}z=(D-b)^{-1}(D-a)^{-1}f=(D-a)^{-1}(D-b)^{-1}f $$
となり、 \( L(D)=(D-a)(D-b) \) の場合は \( L(D)^{-1}=(D-a)^{-1}(D-b)^{-1} \) である。
より一般に
$$ L(D)=D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n $$
に対して、 \( L(D)y=f \) を考えます。まず、対応する \( n \) 次多項式
$$ L(\lambda)=\lambda^n+a_1\lambda^{n-1}+\cdots+a_{n-1}\lambda+a_n \quad (\lambda\in\mathbb{C}) $$
を複素数の範囲で因数分解します。
$$ L(\lambda)=(\lambda-\lambda_1)^{n_1}(\lambda-\lambda_2)^{n_2}\cdots (\lambda-\lambda_r)^{n_r} $$
ここで、
$$ n_1+n_2+\cdots+n_r=n, \quad i\not=j \ \Rightarrow \ \lambda_i\not=\lambda_j $$
すると、
$$ L(D)y=(D-\lambda_1)^{n_1}(D-\lambda_2)^{n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{n_r}y=f $$
であるので、例2を参考にすると、
$$ y=(D-\lambda_1)^{-n_1}(D-\lambda_2)^{-n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{-n_r}f $$
は方程式(1)の一つの解となります。
したがって、対応する同次方程式 \( L(D)y=0 \) の基本解を \( y_1(x), \cdots,y_n(x) \) とおくと、 \( L(D)y=f \) の一般解は次のようになります。
$$ y=\sum_{k=1}^nc_ky_k+(D-\lambda_1)^{-n_1}(D-\lambda_2)^{-n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{-n_r}f \quad (c_1,\cdots,c_n:任意定数) $$
それでは、 \( L(D)y=0 \) の基本解を求めていきましょう。
$$ L(D)y=(D-\lambda_1)^{n_1}(D-\lambda_2)^{n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{n_r}y=0 $$
より、次の解を求めてみましょう。
$$ (D-\lambda_j)^{k+1}y=0 \quad (k=0,1,2,\cdots,n_j-1, \ j=1,2,\cdots,r) $$
(1) まず、 \( k=0 \) のときは
$$ (D-\lambda_j)y=0 \ \iff \ y’-\lambda_jy=0 $$
両辺に \( e^{-\lambda_jx} \) をかけると、
$$ (e^{-\lambda_jx}y)’=0 $$
したがって、両辺 \( x \) で積分をすると、
$$ y=Ce^{\lambda_jx} \quad (C:任意定数) $$
(2) 次に、 \( k=1 \) のときは
$$ (D-\lambda_j)^2y=0 \ \iff \ \begin{cases} (D-\lambda_j)y=z \\ (D-\lambda_j)z=0 \end{cases} $$
(1)より、 \( z=C_1e^{\lambda_jx} \) である。
したがって、
$$ \begin{align} y&=(D-\lambda_j)^{-1}z=e^{\lambda_jx}\int e^{-\lambda_j\xi}zd\xi \\ &=e^{\lambda_jx}\int e^{-\lambda_j\xi}C_1e^{\lambda_j\xi}d\xi \\ &=C_1xe^{\lambda_jx}+C_2e^{\lambda_jx} \end{align} $$
とくに、 \( xe^{\lambda_jx} \) は \( k=1 \) のときの解となっている。
この例より、 \( x^ke^{\lambda_jx} \) は \( (D-\lambda_j)^{k+1}y=0 \) の一つの解となっています。
したがって、
$$ x^ke^{\lambda_jx} \quad (k=0,1,2,\cdots,n_j-1, \ j=1,2,\cdots,r) $$
はすべて \( L(D)y=0 \) の解となっています。
さらに、これらの解は \( x \) のべきと \( e \) のべきがすべて異なっているので一次独立となっていて、解の個数は \( n_1+\cdots+n_r=n \) 個であるので、これらが基本解となります。
よって、いままでの話をまとめると、次の定理が成り立ちます。
$$ L(D)=(D-\lambda_1)^{n_1}(D-\lambda_2)^{n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{n_r} $$
とする。ここで、
$$ n_1+n_2+\cdots+n_r=n, \quad i\not=j \ \Rightarrow \ \lambda_i\not=\lambda_j $$
このとき、 \( L(D)y=0 \) の基本解は次で与えられる。
$$ x^ke^{\lambda_jx} \quad (k=0,1,2,\cdots,n_j-1, \ j=1,2,\cdots,r) $$
よって、 \( L(D)y=f \) の一般解は次で与えられる。
$$ y=\sum_{j=1}^r\sum_{k=0}^{n_j-1}c_{jk}x^ke^{\lambda_jx}+(D-\lambda_1)^{-n_1}(D-\lambda_2)^{-n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{-n_r}f $$
ここで、 \( c_{jk} \) は任意定数であり、
$$ (D-\lambda)^{-m}f=e^{\lambda x}\int^x\int^{\xi_1}\cdots\int^{\xi_{m-1}}e^{-\lambda \xi_m}fd\xi_m\cdots d\xi_1 $$
微分作用素 \( D \) の計算法
定理1の非同次項に対応する部分
$$ L(D)^{-1}f=(D-\lambda_1)^{-n_1}(D-\lambda_2)^{-n_2}\cdots (D-\lambda_r)^{-n_r}f $$
の計算は定義に従って計算しようとすると大変です。
そこで、特殊な状況において \( L(D)^{-1} \) を簡単に計算できる方法をいくつか紹介します。
定数 \( \lambda \) に対して、次が成り立つ。
$$ L(D)^{-1}(e^{\lambda x}f)=e^{\lambda x}L(D+\lambda)^{-1}f $$
定理2の証明(気になる方だけクリックしてください)
$$ \begin{align} (D-\mu)^{-m}(e^{\lambda x}f)&=e^{\mu x}\int^x\int^{\xi_1}\cdots\int^{\xi_{n-1}}e^{-\mu\xi_m}(e^{\lambda\xi_m}f)d\xi_m\cdots d\xi_1 \\ &=e^{\mu x}\int^x\int^{\xi_1}\cdots\int^{\xi_{n-1}}e^{-(\mu-\lambda)\xi_m}fd\xi_m\cdots d\xi_1 \\ &=e^{\lambda x}e^{(\mu-\lambda)x}\int^x\int^{\xi_1}\cdots\int^{\xi_{n-1}}e^{-(\mu-\lambda)\xi_m}fd\xi_m\cdots d\xi_1 \\ &=e^{\lambda x}\{D-(\mu-\lambda)\}^{-m}f=e^{\lambda x}\{(D+\lambda)-\mu\}^{-m}f \end{align} $$
よって、これをくり返せば定理2が成り立ちます。
$$ L(\lambda)=\lambda^pM(\lambda), \quad M(0)\not=0 $$
とする。このとき、 \( M(\lambda)^{-1} \) をマクローリン展開して、
$$ L(\lambda)^{-1}=\lambda^{-p}(b_0+b_1\lambda+b_2\lambda^2+\cdots) $$
となったとする。このとき、 \( f \) が \( k \) 次式とすると、
$$ L(D)^{-1}f=D^{-p}(b_0+b_1D+b_2D^2+\cdots+b_kD^k)f $$
定理3の証明(気になる方だけクリックしてください)
$$ P(\lambda)=1-(b_0+b_1\lambda+\cdots+b_k\lambda^k)M(\lambda) $$
$$ Q(\lambda)=b_{k+1}\lambda^{k+1}+b_{k+2}\lambda^{k+2}+\cdots=\frac{P(\lambda)}{M(\lambda)} $$
とおきます。すると、
$$ Q(0)=Q'(0)=\cdots=Q^{(k)}(0)=0 $$
となるので、 \( n=1,2,\cdots,k \) に対して、
$$ P^{(n)}(0)=(QM)^{(n)}(0)=\sum_{j=1}^nnC_jQ^{(j)}(0)M^{(n-j)}(0)=0 $$
したがって、
$$ P(\lambda)=N(\lambda)\lambda^{k+1} \quad (N(\lambda) : 多項式) $$
よって、 \( P(\lambda) \) の定め方より、
$$ 1=M(\lambda)(b_0+b_1\lambda+\cdots+b_k\lambda^k)+N(\lambda)\lambda^{k+1} $$
であるので、
$$ \begin{align} f(x)&=M(D)(b_0+b_1D+\cdots+b_kD^k)f+N(D)D^{k+1}f \\ &=M(D)D^pD^{-p}(b_0+b_1D+\cdots+b_kD^k)f \quad (fがk次式よりD^{k+1}f=0) \\ &=L(D)(D^{-p}(b_0+b_1D+\cdots+b_kD^k)f) \end{align} $$
よって、両辺 \( L(D)^{-1} \) を作用させると定理が成り立ちます。
\( L(\lambda) \) が
$$ \frac{1}{L(\lambda)}=\frac{A_1}{(\lambda-\mu_1)^{m_1}}+\frac{A_2}{(\lambda-\mu_2)^{-m_2}}+\cdots+\frac{A_k}{(\lambda-\mu_k)^{-m_k}} $$
と部分分数分解できたとすると、
$$ L(D)^{-1}=A_1(D-\mu_1)^{-m_1}+A_2(D-\mu_2)^{-m_2}+\cdots+A_k(D-\mu_k)^{-m_k} $$
定理4の証明(気になる方だけクリックしてください)
$$ y=\sum_{j=1}^kA_j(D-\mu_j)^{-m_j}f $$
とおいたときに \( L(D)y=f \) を示せばよいです。
部分分数分解の形より、 \( L(\lambda) \) は \( (\lambda-\mu_j)^{m_j} \) を因子に含む
$$ L(\lambda)=(\lambda-\mu_j)^{m_j}L_j(\lambda) $$
となる多項式 \( L_j(\lambda) \) が存在します。したがって、
$$ 1=L(\lambda)\sum_{j=1}^k\frac{A_j}{(\lambda-\mu_j)^{m_j}}=\sum_{j=1}^kA_jL_j(\lambda) $$
となるので、
$$ \begin{align} L(D)y&=L(D)\left( \sum_{j=1}^kA_j(D-\mu_j)^{-m_j} \right)f=\sum_{j=1}^kA_jL(D)(D-\mu_j)^{-m_j}f \\ &=\sum_{j=1}^kA_jL_j(D)f=f \end{align} $$
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。