こんにちは、ひかりです。
今回は微分方程式から正則点での級数解法とルジャンドルの方程式について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 正則点での級数解について
- ルジャンドルの方程式について
正則点での級数解
いままでは、解が初等関数で表される微分方程式のみ扱ってきましたが、一般には解が初等関数で表せない微分方程式の方が多いです。
そこで、このような同次形の2階変数係数線形微分方程式を解く方法である級数解法について紹介していきます。
まず、同次形の2階変数係数線形微分方程式
$$ y^{\prime\prime}(x)+p_1(x)y'(x)+p_2(x)y(x)=0 \tag{1} $$
において、変数係数 \( p_1(x),p_2(x) \) が \( x=x_0 \) のまわりでテイラー級数展開(べき級数展開)
$$ p_1(x)=\sum_{n=0}^{\infty}a_n(x-x_0)^n, \quad p_2(x)=\sum_{n=0}^{\infty}b_n(x-x_0)^n $$
可能であるような場合を考えます。
このとき、点 \( x=x_0 \) のことを方程式(1)の正則点といいます。
正則点 \( x=x_0 \) のまわりで方程式(1)の解を \( \displaystyle y(x)=\sum_{n=0}^{\infty}c_n(x-x_0)^n \) の形で求めることを考えてみましょう。
まず、変数変換 \( t=x-x_0 \) によって、 \( x_0=0 \) の場合に帰着させることができます。
よって、 \( x_0=0 \) と仮定します。このとき、解 \( y(x) \) を
$$ \begin{align} y(x)&=\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n=c_0+c_1x+c_2x^2+\cdots \end{align} \tag{2} $$
とすると、
$$ \begin{align} y'(x)&=c_1+2c_2x+3c_3x^2+\cdots=\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1} \end{align} $$
$$ \begin{align} y^{\prime\prime}(x)&=2c_2+3\cdot 2c_3x+4\cdot 3c_4x^2+\cdots=\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2} \end{align} $$
であるので、これらを方程式(1)に代入すると、
$$ \sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2}+\left(\sum_{n=0}^{\infty}a_nx^n\right)\left( \sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1} \right)+\left( \sum_{n=0}^{\infty}b_nx^n \right)\left( \sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n \right)=0 $$
となるので、 \( x \) に関して同じべき \( x^n \ (n=1,2,\cdots) \) についてまとめると、
$$ a_0=y(0), \quad a_1=y'(0) $$
を任意定数とすることにより、 \( a_2,a_3,\cdots \) が順々に求まります。
したがって、これを式(2)に代入することにより、方程式(1)の解が \( \displaystyle y(x)=\sum_{n=0}^{\infty}c_n(x-x_0)^n \) の形で求まります。
次の2階線形微分方程式を考える。
$$ y^{\prime\prime}(x)-(x+1)y'(x)+x^2y(x)=0 \tag{3} $$
このとき、 \( x=0 \) での級数解 \( \displaystyle y(x)=\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n \) を求める。
まず、係数
$$ a_1(x)=-(x+1), \quad a_2(x)=x^2 $$
は多項式なので、 \( x=0 \) で正則点である。ここで、
$$ y'(x)=\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1}, \quad y^{\prime\prime}(x)=\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2} $$
を方程式(3)に代入すると、
$$ \sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2}-(x+1)\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1}+x^2\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n=0 $$
このとき、
$$ \sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2}=2c_2+6c_3x+\sum_{n=0}^{\infty}(n+4)(n+3)c_{n+4}x^{n+2} $$
$$ \begin{align} (x+1)\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1}&=-\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^n-\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1} \\ &=-c_1x-\sum_{n=0}^{\infty}(n+2)c_{n+2}x^{n+2}-c_1-2c_2x-\sum_{n=0}^{\infty}(n+3)c_{n+3}x^{n+2} \end{align} $$
であるので、 \( x \) に関して同じべき \( x^n \ (n=1,2,\cdots) \) についてまとめると、
$$ \begin{align} &(-c_1+2c_2)+(-c_1-2c_2+6c_3)x \\ &\quad +\sum_{n=0}^{\infty}\{ c_n-(n+2)c_{n+2}-(n+3)c_{n+3}+(n+4)(n+3)c_{n+4}\}x^{n+2}=0 \end{align} $$
これが任意の \( x \) に対して成り立つ必要があるので、
$$ c_2=\frac{c_1}{2}, \quad c_3=\frac{c_1}{3} $$
$$ c_{n+4}=\frac{-c_n+(n+2)c_{n+2}+(n+3)c_{n+3}}{(n+4)(n+3)} \quad (n≧0) $$
となる。よって、 \( c_0,c_1 \) を任意定数とすると、
$$ c_2=\frac{c_1}{2}, \quad c_3=\frac{c_1}{3}, \quad c_4=\frac{-c_0+2c_1}{12}, \quad c_5=\frac{-c_0+2c_1}{60}, \cdots $$
となり、方程式(3)の級数解は
$$ y(x)=c_0\left( 1-\frac{x^4}{12}-\frac{x^5}{60}+\cdots \right)+c_1\left( x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+\frac{x^4}{6}+\frac{x^5}{30}+\cdots \right) $$
ルジャンドルの方程式
この解法の1つの具体例として、次のルジャンドルの方程式について紹介していきます。
微分方程式が
$$ (1-x^2)y^{\prime\prime}(x)-2xy'(x)+\ell(\ell+1)y(x)=0 \quad (\ell:定数) $$
という形で表されるとき、 \( \ell \) 位のルジャンドルの微分方程式という。
1位のルジャンドルの微分方程式を考える。
$$ (1-x^2)y^{\prime\prime}(x)-2xy'(x)+2y(x)=0 \tag{4} $$
このとき、 \( x=0 \) での級数解 \( \displaystyle y(x)=\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n \) を求める。
まず、両辺を \( 1-x^2 \) で割ると、
$$ y^{\prime\prime}(x)-\frac{2x}{1-x^2}y'(x)+\frac{2}{1-x^2}y(x)=0 $$
となり、係数
$$ a_1(x)=-\frac{2x}{1-x^2}, \quad a_2(x)=\frac{2}{1-x^2} $$
は \( |x|<1 \) でテイラー級数展開可能であるので、 \( x=0 \) で正則点である。ここで、
$$ y'(x)=\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1}, \quad y^{\prime\prime}(x)=\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2} $$
を方程式(4)に代入すると、
$$ (1-x^2)\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2}-2x\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1}+2\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n=0 $$
このとき、
$$ \begin{align} (1-x^2)\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2}&=\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n-2}-\sum_{n=2}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n} \\ &=\sum_{n=0}^{\infty}(n+2)(n+1)c_{n+2}x^{n}-\sum_{n=0}^{\infty}n(n-1)c_nx^{n} \end{align} $$
$$ \begin{align} 2x\sum_{n=1}^{\infty}nc_nx^{n-1}&=\sum_{n=1}^{\infty}2nc_nx^{n}=\sum_{n=0}^{\infty}2nc_nx^{n} \end{align} $$
であるので、 \( x \) に関して同じべき \( x^n \ (n=1,2,\cdots) \) についてまとめると、
$$ \sum_{n=0}^{\infty}[(n+2)(n+1)c_{n+2}-\{n(n-1)+2n-2\}c_n]x^n=0 $$
これが任意の \( x \) に対して成り立つ必要があるので、
$$ (n+2)(n+1)c_{n+2}-\{n(n-1)+2n-2\}c_n=0 $$
であるので、
$$ (n+1)c_{n+2}-(n-1)c_n=0 \quad (n=0,1,2,\cdots) $$
となる。これは \( c_0,c_1,\cdots \) に関する漸化式であるので、 \( c_0,c_1 \) を任意定数とすると、
$$ c_2=-c_0, \quad c_3=0, \quad c_4=-\frac{1}{3}a_0, \quad c_5=0, \cdots $$
一般に、
$$ c_{2m}=\frac{2m-3}{2m-1}c_{2m-2}=\frac{2m-3}{2m-1}\cdot \left( -\frac{1}{2m-3}c_0 \right)=-\frac{1}{2m-1}c_0, $$
$$ c_{2m+1}=\frac{2m-2}{2m}c_{2m-1}=\frac{2m-2}{2m}\cdot 0=0 \quad (m=1,2,\cdots) $$
となり、方程式(3)の級数解は
$$ y(x)=c_0\left( 1-x^2-\frac{1}{3}x^4-\frac{1}{5}x^6-\cdots \right)+c_1x \quad (|x|<1, \ c_0,c_1:任意定数) $$
よって、方程式(3)の基本解は
$$ y_1(x)=1-x^2-\frac{1}{3}x^4-\frac{1}{5}x^6-\cdots, \quad y_2(x)=x $$
一般の \( \ell \) 次のルジャンドルの微分方程式の場合は、次のような漸化式が得られます。
$$ (n+2)(n+1)c_{n+2}-(n-\ell)(n+\ell+1)c_n=0 \quad (n=0,1,\cdots) $$
このとき、 \( c_0,c_1 \) を任意定数にすることで、次のような基本解が得られます。
$$ y_1(x)=1-\frac{\ell(\ell+1)}{2!}x^2+\frac{\ell(\ell+1)(\ell-2)(\ell+3)}{4!}x^4-\cdots $$
$$ y_2(x)=x-\frac{(\ell-1)(\ell+2)}{3!}x^3+\frac{(\ell-1)(\ell+2)(\ell-3)(\ell+4)}{5!}x^5-\cdots $$
したがって、 \( \ell=0,2,4,\cdots \) のとき \( y_1(x) \) が、 \( \ell=1,3,5,\cdots \) のとき \( y_2(x) \) が \( \ell \) 次の多項式となります。
つまり、
$$ \ell=0 \ のとき \ y_1(x)=1 $$
$$ \ell=1 \ のとき \ y_2(x)=x $$
$$ \ell=2 \ のとき \ y_1(x)=1-3x^2 $$
$$ \ell=3 \ のとき \ y_2(x)=x-\frac{5}{3}x^3 $$
と続きます。これらの \( \ell \) 次の多項式において、最高次の係数 \( a_{\ell} \) が
$$ \ell=0 \ のとき \ a_0=1 $$
$$ \ell≧1 \ のとき \ a_{\ell}=\frac{(2\ell)!}{2^{\ell}(\ell !)^2} $$
となるように、定数を調整したものを \( \ell \) 次のルジャンドル多項式といい、 \( P_{\ell}(x) \) と表します。
つまり、
$$ P_0(x)=1, \ P_1(x)=x, \ P_2(x)=\frac{1}{2}(3x^2-1), \ P_3(x)=\frac{1}{2}(5x^3-3x), $$
$$ P_4(x)=\frac{1}{8}(35x^4-30x^2+3), \quad P_5(x)=\frac{1}{8}(63x^5-70x^3+15x), \cdots $$
となります。これは一般に次のようになります。
$$ P_0(x)=1, \quad P_{\ell}(x)=\sum_{0≦n≦\frac{\ell}{2}}(-1)^n\frac{(2\ell-2n)!}{2^{\ell}n!(\ell-n)!(\ell-2n)!}x^{\ell-2n} \quad (\ell=1,2,\cdots) $$
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。