こんにちは、ひかりです。
今回は微分方程式から非同次連立1階線形微分方程式の一般解について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 非同次連立1階線形微分方程式の特殊解について
- 非同次連立1階線形微分方程式の一般解について
- \( n \) 階単独線形微分方程式の一般解について
非同次連立1階線形微分方程式の特殊解
微分方程式08の記事では同次連立1階線形微分方程式について考えました。
今回は、非同次連立1階線形微分方程式
$$ \begin{cases} \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x)+\mathbf{b}(x) \\ \mathbf{y}(x_0)=\mathbf{y}_0 \end{cases} \tag{1} $$
について考えていきましょう。ここで、
$$ \mathbf{y}(x)=\begin{pmatrix} y_1(x) \\ \vdots \\ y_n(x) \end{pmatrix}, \quad A(x)=\begin{pmatrix} a_{11}(x) & \cdots & a_{1n}(x) \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{n1}(x) & \cdots & a_{nn}(x) \end{pmatrix}, \quad \mathbf{b}(x)=\begin{pmatrix} b_1(x) \\ \vdots \\ b_n(x) \end{pmatrix} $$
まず、前回の記事より、対応する同次連立1階線形微分方程式
$$ \begin{cases} \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x) \\ \mathbf{y}(x_0)=\mathbf{y}_0 \end{cases} \tag{2} $$
の解は
$$ \mathbf{y}_0=\sum_{k=1}^n\alpha_k\mathbf{v}_k \quad (\alpha_k\in \mathbb{C}, \ \mathbf{v}_k:\mathbb{C}^nの基底), \quad \mathbf{\alpha}=\begin{pmatrix} \alpha_1 \\ \vdots \\ \alpha_n \end{pmatrix}\in \mathbb{C}^n $$
とおいて、方程式(2)の基本解を
$$ Y(x)=\begin{pmatrix} \mathbf{y}_1(x) & \mathbf{y}_2(x) & \cdots & \mathbf{y}_n(x) \end{pmatrix} $$
とおくと、 \( \mathbf{y}(x)=Y(x)\mathbf{\alpha} \) と表されました。
したがって、方程式(1)の解を定数変化法で、つまり
$$ \mathbf{y}(x)=Y(x)\mathbf{u}(x) $$
の形で求めてみましょう。
(解の定数 \( \alpha \) を \( x \) による関数に置き換えた形で解を求めるということです)
$$ \begin{align} \mathbf{y}'(x)&=(Y(x)\mathbf{u}(x))’=Y'(x)\mathbf{u}(x)+Y(x)\mathbf{u}'(x) \\ &=A(x)Y(x)\mathbf{u}(x)+Y(x)\mathbf{u}'(x) \quad (Y'(x)=A(x)Y(x)より) \\ &=A(x)\mathbf{y}(x)+Y(x)\mathbf{u}'(x) \quad (\mathbf{y}(x)=Y(x)\mathbf{u}(x)より) \end{align} $$
よって、
$$ \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x)+\mathbf{b}(x) $$
であるためには、 \( Y(x)\mathbf{u}'(x)=\mathbf{b}(x) \) となる必要があります。
したがって、
$$ \mathbf{u}'(x)=Y(x)^{-1}\mathbf{b}(x) $$
( \( Y(x) \) は基本解なので、リウビィルの公式より任意の \( x \) に対して、 \( W(x)=\det Y(x)\not=0 \) であること、つまり逆行列が存在することに注意してください。)
よって、
$$ \mathbf{u}(x)=\mathbf{u}(x_0)+\int_{x_0}^xY(\xi)^{-1}\mathbf{b}(\xi)d\xi $$
となるので、 \( \mathbf{y}(x)=Y(x)\mathbf{u}(x) \) で戻すと、方程式(1)の特殊解は次のようになります。
$$ \mathbf{y}(x)=Y(x)\left( \mathbf{u}(x_0)+\int_{x_0}^xY(\xi)^{-1}\mathbf{b}(\xi)d\xi \right) \tag{3} $$
したがって、次が成り立ちます。
非同次連立1階線形微分方程式
$$ \begin{cases} \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x)+\mathbf{b}(x) \\ \mathbf{y}(x_0)=\mathbf{y}_0 \end{cases} \tag{4} $$
を考える。このとき、対応する同次方程式のレゾルベントを \( R(x,z) \) とすると、方程式(4)の解は次で与えられる。
$$ \mathbf{y}(x)=R(x,x_0)\mathbf{y}_0+\int_{x_0}^xR(x,\xi)\mathbf{b}(\xi)d\xi $$
定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)
式(3)より、
$$ \begin{align} \mathbf{y}(x)&=Y(x)\mathbf{u}(x_0)+\int_{x_0}^xY(x)Y(\xi)^{-1}\mathbf{b}(\xi)d\xi \\ &=Y(x)\mathbf{u}(x_0)+\int_{x_0}^xR(x,\xi)\mathbf{b}(\xi)d\xi \end{align} $$
これに \( x=x_0 \) を代入すると、
$$ \mathbf{y}_0=Y(x_0)\mathbf{u}(x_0) $$
したがって、
$$ \mathbf{u}(x_0)=Y(x_0)^{-1}\mathbf{y}_0 $$
であるので、
$$ Y(x)\mathbf{u}(x_0)=Y(x)Y(x_0)^{-1}\mathbf{y}_0=R(x,x_0)\mathbf{y}_0 $$
よって、まとめると、
$$ \mathbf{y}(x)=R(x,x_0)\mathbf{y}_0+\int_{x_0}^xR(x,\xi)\mathbf{b}(\xi)d\xi $$
となり、定理が成り立ちます。
非同次連立1階線形微分方程式の一般解
次に、非同次連立1階線形微分方程式
$$ \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x)+\mathbf{b}(x) \tag{5} $$
の一般解を
$$ \mathbf{y}(x)=\begin{pmatrix} y_1(x) \\ \vdots \\ y_n(x) \end{pmatrix} $$
として、 \( y_i(x) \) の表示を求めてみましょう。
対応する同次連立1階線形微分方程式
$$ \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x) $$
の基本解を
$$ Y(x)=\begin{pmatrix} \mathbf{y}_1(x) & \mathbf{y}_2(x) & \cdots & \mathbf{y}_n(x) \end{pmatrix} $$
として、
$$ \mathbf{y}_j(x)=\begin{pmatrix} y_{1j}(x) \\ \vdots \\ y_{nj}(x) \end{pmatrix} $$
とおくと、 \( Y(x)=(y_{ij}(x))_{1\le i,j\le n} \) となります。
よって、 \( Y(x)^{-1}\mathbf{b}(x)=\mathbf{w}(x) \) とおくと、 \( Y(x)\mathbf{w}(x)=\mathbf{b}(x) \) であるので、クラーメルの公式より、
$$ w_j(x)=\frac{\det Y_{j,\mathbf{b}}(x)}{\det Y(x)}=\frac{W_{j,\mathbf{b}}(x)}{W(x)} $$
ここで、
$$ Y_{j,\mathbf{b}}(x)=\begin{pmatrix} \mathbf{y}_1(x) & \cdots & \mathbf{y}_{j-1}(x) & \mathbf{b}(x) & \mathbf{y}_{j+1}(x) & \cdots & \mathbf{y}_n(x) \end{pmatrix} $$
\( W(x) \) は \( Y(x) \) のロンスキアン、 \( W_{j,\mathbf{b}}(x) \) は \( Y_{j,\mathbf{b}}(x) \) のロンスキアンです。
( \( Y(x) \) は基本解なので、リウビィルの公式より任意の \( x \) に対して、 \( W(x)=\det Y(x)\not=0 \) であること、つまり逆行列が存在することに注意してください。)
同様に、 \( Y(x_0)^{-1}\mathbf{y}_0=\mathbf{\alpha} \) とおくと、 \( \alpha_j=\frac{W_{j,\mathbf{b}}(x_0)}{W(x_0)} \) となります。
したがって、
$$ \begin{align} \mathbf{y}(x)&=R(x,x_0)\mathbf{y}_0+\int_{x_0}^xR(x,\xi)\mathbf{b}(\xi)d\xi \\ &=Y(x)\left( Y(x_0)^{-1}\mathbf{y}_0+\int_{x_0}^xY(\xi)^{-1}\mathbf{b}(\xi)d\xi \right) \end{align} $$
の第 \( i \) 行は、
$$ y_i(x)=\sum_{j=1}^ny_{ij}(x)\left( a_j+\int^x\frac{W_{j,\mathbf{b}}(\xi)}{W(\xi)}d\xi \right) $$
となります。
よって、非同次連立1階線形微分方程式(5)の一般解は次のようになります。
非同次連立1階線形微分方程式
$$ \mathbf{y}'(x)=A(x)\mathbf{y}(x)+\mathbf{b}(x) $$
の一般解(初期値を指定しない解)は次で与えられる。
$$ \begin{cases} \displaystyle \mathbf{y}(x)=Y(x)\left( \mathbf{a}+\int^xY(\xi)^{-1}\mathbf{b}(\xi)d\xi \right) & (\mathbf{a}:任意定数ベクトル) \\ \displaystyle y_i(x)=\sum_{j=1}^ny_{ij}(x)\left( a_j+\int^x\frac{W_{j,\mathbf{b}}(\xi)}{W(\xi)}d\xi \right) & (a_1,\cdots,a_n:任意定数) \end{cases} $$
ただし、
$$ Y(x)=\begin{pmatrix} \mathbf{y}_1(x) & \mathbf{y}_2(x) & \cdots & \mathbf{y}_n(x) \end{pmatrix} $$
は対応する同次方程式の基本解であり、
$$ \mathbf{y}(x)=\begin{pmatrix} y_1(x) \\ \vdots \\ y_n(x) \end{pmatrix}, \quad \mathbf{y}_i(x)=\begin{pmatrix} y_{i1}(x) \\ \vdots \\ y_{in}(x) \end{pmatrix}, $$
$$ Y_{j,\mathbf{b}}(x)=\begin{pmatrix} \mathbf{y}_1(x) & \cdots & \mathbf{y}_{j-1}(x) & \mathbf{b}(x) & \mathbf{y}_{j+1}(x) & \cdots & \mathbf{y}_n(x) \end{pmatrix}, $$
\( W(x) \) は \( Y(x) \) のロンスキアン、 \( W_{j,\mathbf{b}}(x) \) は \( Y_{j,\mathbf{b}}(x) \) のロンスキアンである。
\( n \) 階単独線形微分方程式の一般解
最後に、連立1階線形微分方程式に関連して、 \( n \) 解単独線形微分方程式
$$ y^{(n)}(x)+p_1(x)y^{(n-1)}(x)+\cdots+p_n(x)y(x)=q(x) \tag{6} $$
を考えましょう。
ここで、 \( p_i(x),q(x) \) は既知連続関数、 \( y(x) \) は未知関数です。
(連続性を課すことにより、対応する同次方程式
$$ y^{(n)}(x)+p_1(x)y^{(n-1)}(x)+\cdots+p_n(x)y(x)=0 $$
の一般解の集合が線形空間となります。)
この \( n \) 解単独線形微分方程式は
$$ y_1(x)=y(x), \ y_2(x)=y'(x), \ \cdots, \ y_n(x)=y^{(n-1)}(x) $$
とおくことにより、
$$ y(x),y'(x),y^{\prime\prime}(x),\cdots,y^{(n-1)}(x) \tag{7} $$
を未知関数とする非同次連立1階線形微分方程式
$$ \begin{cases} y’_1(x)=y_2(x) \\ y’_2(x)=y_3(x) \\ \quad \quad \vdots \\ y’_{n-1}(x)=y_n(x) \\ y’_n(x)=q(x)-p_1(x)y_n(x)-\cdots-p_n(x)y_1(x) \end{cases} \tag{8} $$
に帰着することができます。
次の2階単独線形微分方程式を考える。
$$ y^{\prime\prime}(x)+y(x)=q(x) $$
このとき、 \( y'(x)=z(x) \) とおくと、次の連立1階線形微分方程式に帰着される。
$$ \begin{cases} y'(x)=z(x) \\ z'(x)=-y(x)+q(x) \end{cases} $$
したがって、上の非同次連立1階線形微分方程式の議論が適用できるので、それを用いて方程式(6)の一般解を求めてみましょう。
方程式(6)に対応する同次方程式の基本解
$$ \begin{align} Y(x)&=\begin{pmatrix} \mathbf{y}_{f,1}(x) & \mathbf{y}_{f,2}(x) & \cdots & \mathbf{y}_{f,n}(x) \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} y_{f,1}(x) & y_{f,2}(x) & \cdots & y_{f,n}(x) \\ y’_{f,1}(x) & y’_{f,2}(x) & \cdots & y’_{f,n}(x) \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ y^{(n-1)}_{f,1}(x) & y^{(n-1)}_{f,2}(x) & \cdots & y^{(n-1)}_{f,n}(x) \end{pmatrix} \end{align} $$
を対応する連立1階線形微分方程式(8)に対応する同次方程式の基本解とします。
(方程式(8)の解の添え字とこの基本解の添え字は対応しているわけではない(あくまで方程式(6)の解(7)が \( n \) 組あるだけです)ため、こちらの添え字は \( f,i \) と書くことにします。)
$$ W(x)=\det Y(x)=\begin{vmatrix} y_{f,1}(x) & y_{f,2}(x) & \cdots & y_{f,n}(x) \\ y’_{f,1}(x) & y’_{f,2}(x) & \cdots & y’_{f,n}(x) \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ y^{(n-1)}_{f,1}(x) & y^{(n-1)}_{f,2}(x) & \cdots & y^{(n-1)}_{f,n}(x) \end{vmatrix} $$
となります。したがって、定理2より \( n \) 階単独線形微分方程式(6)の一般解は
$$ y(x)=\sum_{j=1}^ny_{f,j}(x)\left( a_j+\int^x\frac{W_{j,\mathbf{b}}(\xi)}{W(\xi)}d\xi \right) \quad (a_1,\cdots,a_n:任意定数) $$
( \( i≧2 \) 以降は \( y \) の導関数であるので、定理2の \( i=1 \) の場合のみ考えればよいことになります)
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。