微分方程式05:求積法5(クレローの微分方程式・特殊な2階常微分方程式)

こんにちは、ひかりです。

今回は微分方程式から求積法5(クレローの微分方程式・特殊な2階常微分方程式)について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • クレローの微分方程式について
  • 特殊な2階常微分方程式の解法について
目次

クレローの微分方程式

まずクレローの微分方程式の求積法について紹介していきます。

定義1 (クレローの微分方程式)

微分方程式が

$$ y=xy’+f(y’) \tag{1} $$

という形で表されるとき、クレローの微分方程式という。

これは次のように解くことができます。

\( p=y’ \) とおくと、クレローの微分方程式は

$$ y=xp+f(p) \tag{2} $$

となります。したがって、両辺 \( x \) に関して微分をすると、

$$ p=p+xp’+f'(p)p’ $$

よって、

$$ (x+f'(p))p’=0 $$

であるので、

$$ p’=0 \ または \ x+f'(p)=0 $$

まず、前者の \( p’=0 \) から \( p=C, \ (C:任意定数) \) となるので、 式(2)より方程式(1)の一般解が次のように得られます。

$$ y=Cx+f(C), \quad (C:任意定数) $$

次に後者の \( x+f'(p)=0 \) と式(2)との連立方程式

$$ \begin{cases} x+f'(p)=0 \\ y=xp+f(p) \end{cases} $$

を解くことによって、任意定数を含まない1つの解が得られます。

この解は一般解で表現することができない解であり、特異解とよばれています。

例1

次の微分方程式を考える。

$$ y=xy’+\frac{1}{y’} $$

\( p=y’ \) とおくと、

$$ y=xp+\frac{1}{p} \tag{3} $$

となるので、両辺 \( x \) で微分すると、

$$ \left(x-\frac{1}{p^2} \right)p’=0 $$

したがって、

$$ p’=0 \ または \ x-\frac{1}{p^2}=0 $$

まず、前者の \( p’=0 \) から \( p=C, \ (C:任意定数) \) となるので、 式(3)よりこの方程式の一般解が次のようになる。

$$ y=Cx+\frac{1}{C}, \quad (C:任意定数) $$

次に後者の \( x-\frac{1}{p^2}=0 \) と式(3)との連立方程式

$$ \begin{cases} x-\frac{1}{p^2}=0 \\ y=xp+\frac{1}{p} \end{cases} $$

を解いて、 \( p \) を消去すると、

$$ y^2=4x $$

これは一般解で表現することができないので、この方程式の特異解である。

特殊な2階常微分方程式の解法

最高階の微分が2階である微分方程式のことを2階常微分方程式といいました。

ここでは、次の7つの2階常微分方程式を見ていきましょう。

(1) \( y^{\prime\prime}=f(x) \)

(2) \( y^{\prime\prime}=f(y) \)

(3) \( f(y^{\prime\prime},y’)=0 \)

(4) \( f(y^{\prime\prime},y’,x)=0 \)

(5) \( f(y^{\prime\prime},y’,y)=0 \)

(6) \( x=f(y’,y) \)

(7) \( y=f(y’,x) \)

これらは次のようにして解くことができます。

(1) \( y^{\prime\prime}=f(x) \)

右辺は \( y \) を含まないので、両辺 \( x \) で積分すると、

$$ y’=\int f(x)dx+C_1, \quad (C_1:任意定数) $$

もう一回、両辺 \( x \) で積分すると、

$$ y=\int\left\{ \int f(x)dx \right\} dx+C_1x+C_2, \quad (C_1,C_2:任意定数) $$

(2) \( y^{\prime\prime}=f(y) \)

両辺に \( 2y’ \) をかけると、

$$ 2y’y^{\prime\prime}=2y’f(y) $$

この両辺を \( x \) で積分すると、

$$ \begin{align} (y’)^2&=\int 2y’f(y) dx+C \quad (C:任意定数) \\ &=\int 2\frac{dy}{dx}f(y) dx+C \\ &=\int 2f(y) dy+C \end{align} $$

したがって、

$$ y’=\pm \sqrt{\int 2f(y) dy+C} $$

より、

$$ \frac{dy}{\sqrt{\displaystyle \int 2f(y) dy+C}}=\pm dx $$

となり、これは変数分離形の微分方程式になります。

(3) \( f(y^{\prime\prime},y’)=0 \)

\( y’=p \) とおくと、

$$ f(p’,p)=0 $$

となり、これは1階の常微分方程式になるので、これが解けるかどうかを見ていくことになります。

(4) \( f(y^{\prime\prime},y’,x)=0 \)

\( y’=p \) とおくと、

$$ f(p’,p,x)=0 $$

これを \( p \) について解いたものを \( p=F(x,C_1) \) とおくと、

$$ y=\int F(x,C_1)dx+C_2, \quad (C_1,C_2:任意定数) $$

(5) \( f(y^{\prime\prime},y’,y)=0 \)

\( y'(x) \) を \( y \) の関数 \( y'(x)=p(y) \) とおいて、 \( x \) で微分すると、

$$ \frac{dy'(x)}{dx}=\frac{dp(y)}{dx}=\frac{dp(y)}{dy}\frac{dy}{dx}=\frac{dp(y)}{dy}p(y) $$

より、 \( y^{\prime\prime}(x)=\frac{dp(y)}{dy}p(y) \) であるので、

$$ f(y^{\prime\prime},y’,y)=f\left(\frac{dp(y)}{dy}p(y),p(y),y\right)=0 $$

これは \( y \) を独立変数とする微分方程式とみることにより、(4)の場合とみなせます。

(6) \( x=f(y’,y) \)

両辺を \( x \) で微分すると、連鎖公式より、

$$ 1=\frac{\partial f}{\partial y’}y^{\prime\prime}+\frac{\partial f}{\partial y}y’ $$

したがって、この式は

$$ \phi(y^{\prime\prime},y’,y)=0 \ または \ \phi(y^{\prime\prime},y’)=0 $$

となるので、(3)または(5)の場合になります。

(7) \( y=f(y’,x) \)

両辺を \( x \) で微分すると、連鎖公式より、

$$ y’=\frac{\partial f}{\partial y’}y^{\prime\prime}+\frac{\partial f}{\partial x} $$

したがって、この式は

$$ \phi(y^{\prime\prime},y’,x)=0 \ または \ \phi(y^{\prime\prime},y’)=0 $$

となるので、(3)または(4)の場合になります。

例2

(1) 次の微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}+y=0 $$

これは(2)の形の常微分方程式であるので、両辺に \( 2y’ \) をかけると、

$$ 2y’y^{\prime\prime}+2yy’=0 $$

この両辺を \( x \) で積分すると、

$$ (y’)^2+y^2=C, \quad (C:任意定数) $$

したがって、

$$ \frac{dy}{\sqrt{C-y^2}}=\pm dx, \quad (C:任意定数) $$

これは変数分離形の微分方程式であるので、両辺 \( x \) で積分すると、

$$ \int \frac{dy}{\sqrt{C-y^2}}=\pm \int dx $$

となる。

$$ \int \frac{dy}{\sqrt{C-y^2}}=\sin^{-1}\frac{y}{\sqrt{C}}+C_1, \quad \pm \int dx=\pm x+C_2 $$

より、

$$ \sin^{-1}\frac{y}{\sqrt{C}}=\pm x+C_3 \quad (C,C_3:任意定数) $$

であるので、この微分方程式の一般解は

$$ y=\sqrt{C}\sin (\pm x+C_3) \quad (C,C_3:任意定数) $$


(2) 次の微分方程式を考える。

$$ y^2y^{\prime\prime}=(y’)^3 $$

これは(5)の形の常微分方程式であるので、 \( y'(x)=p(y) \) とおくと、

$$ y^2(x)p(y)\frac{dp(y)}{dy}=p^3(y) $$

よって、

$$ p(y)\left( y^2\frac{dp(y)}{dy}-p^2(y) \right)=0 $$

したがって、

$$ p(y)=0 \ または \ y^2\frac{dp(y)}{dy}-p^2(y)=0 $$

まず、前者の \( p(y)=0 \) から \( y=C, \ (C:任意定数) \) はこの方程式の解となる。

次に後者の \( y^2\frac{dp(y)}{dy}-p^2(y)=0 \) より、

$$ \frac{dp(y)}{p^2(y)}=\frac{dy}{y^2} $$

これは変数分離形の微分方程式であるので、両辺 \( y \) で積分すると、

$$ \int \frac{dp(y)}{p^2(y)}=\int \frac{dy}{y^2}dy $$

となる。

$$ \int \frac{dp(y)}{p^2(y)}=-\frac{1}{p(y)}+C_1, \quad \int \frac{dy}{y^2}dy=-\frac{1}{y}+C_2 $$

より、

$$ -\frac{1}{p(y)}=-\frac{1}{y}+C_3 \quad (C_3:任意定数) $$

であるので、 \( p(y)=\frac{dy}{dx} \) より、

$$ \frac{dx}{dy}=\frac{1}{y}-C_3 \quad (C_3:任意定数) $$

これは変数分離形の微分方程式であるので、両辺 \( x \) で積分すると、

$$ \int dx=\int \left(\frac{1}{y}-C_3\right)dy $$

となる。

$$ \int dx=x+C_4, \quad \int \left(\frac{1}{y}-C_3\right)dy=\log |y|-C_3y+C_5 $$

より、

$$ x=\log |y|-C_3y+C_6 \quad (C_6:任意定数) $$

よって、この微分方程式の一般解は

$$ y=L(\log |y|-x)+M \quad (L,M:任意定数) $$

\( y=C \) は解であったが、これは \( L=0 \) の場合に相当する。

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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