こんにちは、ひかりです。
今回は微分方程式から求積法4(リッカチの微分方程式・完全微分方程式)について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- リッカチの微分方程式について
- 完全微分方程式について
リッカチの微分方程式
まずリッカチの微分方程式の求積法について紹介していきます。
微分方程式が
$$ y’+p(x)+q(x)y+r(x)y^2=0 \tag{1} $$
という形で表されるとき、リッカチの微分方程式という。
これは次のように場合分けして解くことになります。
- \( r(x)\equiv 0 \) のとき
-
このときは、
$$ y’+p(x)+q(x)y=0 $$
となり、これは非同次1階線形微分方程式となります。
- \( p(x)\equiv 0 \) のとき
-
このときは、
$$ y’+q(x)y+r(x)y^2=0 $$
となり、これはベルヌーイの微分方程式となります。
- それ以外のとき
-
このときは、一般には簡単に解けません。
しかし、1つの解 \( y_0 \) がわかっているときに他の解を求めることはできます。
$$ y_0’+p(x)+q(x)y_0+r(x)y_0^2=0 \tag{2} $$
より、式(1)-式(2)をすると、
$$ (y-y_0)’+q(x)(y-y_0)+r(x)(y^2-y_0^2)=0 \tag{3} $$
ここで、 \( z=y-y_0 \) とおくと、
$$ z^2=(y-y_0)^2=y^2-2y_0(z+y_0)+y_0^2=y^2-y_0^2-2y_0z $$
であるので、式(3)は
$$ z’+(q(x)+2r(x)y_0)z+r(x)z^2=0 $$
と表すことができ、これはベルヌーイの微分方程式となります。
次の微分方程式を考える。
$$ y’-(2x-1)y+(x-1)y^2=-x $$
この方程式の1つの特殊解は \( y_0\equiv 1 \) である。実際、
$$ y’_0-(2x-1)y_0+(x-1)y_0^2=0-(2x-1)+(x-1)=-x $$
よって、この特殊解から他の解を求める。
\( z=y-1 \) とおくと、 \( y=z+1 \) であるのでこの方程式に代入すると、
$$ (z+1)’-(2x-1)(z+1)+(x-1)(z+1)^2=-x $$
まとめると、
$$ z’-z=(1-x)z^2 $$
これはベルヌーイの微分方程式であるのでこれを解く。
まず、 \( z\equiv 0 \) は解であることに注意する。
(これは、はじめに与えた解 \( y_0\equiv 1 \) である)
よって、 \( z\not=0 \) として、方程式の両辺を \( z^2 \) で割ると、
$$ z^{-2}z’-z^{-1}=(1-x) $$
\( u=z^{-1} \) とおくと、
$$ u’=(z^{-1})’=-z^{-2}z’ $$
であるので、
$$ u’+u=x-1 $$
これは非同次1階線形微分方程式であるのでこれを解く。両辺に
$$ e^{\int^x p(\xi)d\xi}=e^{\int^x 1d\xi}=e^{x} $$
をかけると、
$$ \{ e^{x}u \}’=(x-1)e^{x} $$
となるので、両辺 \( x \) で積分すると、
$$ e^{x}u=\int (x-1)e^{x}dx=xe^x-2e^x+C \quad (C:任意定数) $$
よって、
$$ u=Ce^{-x}+x-2 \quad (C:任意定数) $$
であるので、 \( u=z^{-1} \) でもどすと、
$$ z=\frac{1}{Ce^{-x}+x-2}, \ z\equiv 0 \quad (C:任意定数) $$
したがって、この方程式の一般解は
$$ y=1+\frac{1}{Ce^{-x}+x-2}, \ y\equiv 1 \quad (C:任意定数) $$
完全微分方程式
まずは、全微分方程式を定義します。
微分方程式が
$$ P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0 \tag{4} $$
という形で表されるものを全微分方程式という。
特に、次をみたすとき完全微分方程式といいます。
全微分方程式(4)の左辺がある関数 \( \Phi(x,y) \) の全微分となっているとき、式(4)のことを完全微分方程式という。
つまり、 \( \Phi(x,y) \) の全微分は
$$ d\Phi(x,y)=\frac{\partial \Phi}{\partial x}dx+\frac{\partial \Phi}{\partial y}dy $$
であるので、
$$ \frac{\partial \Phi}{\partial x}=P(x,y), \quad \frac{\partial \Phi}{\partial y}=Q(x,y) \tag{5} $$
となるとき、式(4)は完全微分方程式という。
初めに、与えられた全微分方程式が完全微分方程式であるための必要十分条件を見ていきましょう。
\( P(x,y),Q(x,y) \) を \( C^1 \) 級とする。
このとき、全微分方程式
$$ P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0 $$
が完全微分方程式であるための必要十分条件は次が成り立つことである。
$$ \frac{\partial P(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial Q(x,y)}{\partial x} \tag{6} $$
定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)
まず、完全微分方程式であるとします。
このとき、式(5)と定理の仮定より、 \( \Phi(x,y) \) は \( C^2 \) 級となります。
よって、シュワルツの定理より、
$$ \frac{\partial^2 \Phi(x,y)}{\partial y\partial x}=\frac{\partial^2 \Phi(x,y)}{\partial x\partial y} $$
となり、式(5)よりこれは式(6)になります。
逆に、式(6)を仮定する。
このとき、1点 \( (a,b) \) を固定して
$$ \Phi(x,y)=\int_a^xP(s,b)ds+\int_b^yQ(x,t)dt $$
とすると、式(6)より、
$$ \begin{align} \frac{\partial \Phi(x,y)}{\partial x}&=P(x,b)+\int_b^y\frac{\partial Q(x,t)}{\partial x} dt \\ &=P(x,b)+\int_b^y\frac{\partial P(x,t)}{\partial t}dt \\ &=P(x,b)+(P(x,y)-P(x,b))=P(x,y) \end{align} $$
$$ \frac{\partial \Phi(x,y)}{\partial y}=Q(x,y) $$
したがって、式(5)をみたすので、完全微分方程式となります。
それでは、完全微分方程式を解くことを考えてみましょう。
完全微分方程式
$$ P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0 $$
に対して、
$$ \Phi(x,y)=\int_{x_0}^xP(s,y_0)ds+\int_{y_0}^yQ(x,t)dt, \quad (x_0,y_0:任意) $$
とおくと、定理1の証明より、
$$ d\Phi(x,y)=\frac{\partial \Phi(x,y)}{\partial x}dx+\frac{\partial \Phi(x,y)}{\partial y}dy=P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0 $$
となるので、
$$ \Phi(x,y)=C, \quad (C:任意定数) $$
したがって、完全微分方程式の一般解は
$$ \int_{x_0}^xP(s,y_0)ds+\int_{y_0}^yQ(x,t)dt=C, \quad (C:任意定数) $$
次の微分方程式を考える。
$$ (2xy-\cos x)dx+(x^2-1)dy=0 $$
まず、
$$ P(x,y)=2xy-\cos x, \quad Q(x,y)=x^2-1 $$
とおくと、
$$ \frac{\partial P(x,y)}{\partial y}=2x=\frac{\partial Q(x,y)}{\partial x} $$
なので、定理1よりこの方程式は完全微分方程式である。
よって、 \( (x_0,y_0)=(0,0) \) として
$$ \int_0^x (-\cos s)ds+\int_0^y(x^2-1)dt=-\sin x+(x^2-1)y $$
であるので、この方程式の一般解は
$$ (x^2-1)y-\sin x=C, \quad (C:任意定数) $$
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。