こんにちは、ひかりです。
今回は曲線・曲面論から超曲面論の基本定理について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 超曲面のクリストフェルの式とガウスの式について
- 超曲面のワインガルデンの式とマイナルディ・ゴダッチの式について
- 超曲面論の基本定理について
超曲面のクリストフェルの式とガウスの式
曲線・曲面論14の記事にて、超曲面
\[ S=\{ \mathbf{p}=\mathbf{p}(u_1,u_2,\cdots,u_n)\in \mathbb{R}^{n+1} : (u_1,u_2,\cdots,u_n)\in D\} \]
に対して \( D \) 上の関数として第一基本量 \( g_{ij} \) と第二基本量 \( h_{ij} \) を定義しました。
今回はその逆問題を考えてみましょう。
つまり、 \( D \) 上の関数 \( g_{ij}, \ h_{ij} \) を先に与えたときに、それらを第一基本量、第二基本量にもつ超曲面 \( S \) が存在するかどうかについて考えます。
まず、 \( \{\mathbf{p}_1,\mathbf{p}_2,\cdots,\mathbf{p}_n,\mathbf{n}\} \) は \( \mathbb{R}^{n+1} \) の基底となっているので、 \( \mathbf{p}_{ij} \) をこの基底を用いて表現しておきましょう。
ここで、 \( \mathbf{p}_i=\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u_i}, \ \mathbf{p}_{ij}=\frac{\partial^2\mathbf{p}}{\partial u_i\partial u_j} \)
\( \mathbf{p}_{ij} \) の \( \mathbf{n} \) 成分は、 \( \mathbf{p}_{ij}\cdot \mathbf{n}=h_{ij} \) となります。
そして、 \( \mathbf{p}_{ij} \) の \( \mathbf{p}_k \) 成分を \( \Gamma_{ij}^k \) と書いて、これをクリストフェルの記号とよびます。
さらに、それらの一次結合
\[ \mathbf{p}_{ij}=\Gamma_{ij}^k\mathbf{p}_k+h_{ij}\mathbf{n} \]
をガウスの式とよびます。(アインシュタインの規約に注意してください。)
このとき、次が成り立ちます。
クリストフェルの記号は第一基本量を用いて次のように表される。
\[ \Gamma_{ij}^k=\frac{g^{k\ell}}{2}\left( \frac{\partial g_{i\ell}}{\partial u_j}+\frac{\partial g_{\ell j}}{\partial u_i}+\frac{\partial g_{ij}}{\partial u_{\ell}} \right) \]
ここで、 \( (g^{ij}) \) は \( (g_{ij}) \) の逆行列である。
定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)
もう少しお待ちください。
超曲面のワインガルデンの式とマイナルディ・ゴダッチの式
\( \|\mathbf{n}\|\equiv 1 \) の両辺を \( u_i \) で偏微分すると、 \( 2\mathbf{n}\cdot \mathbf{n}_i=0\)
したがって、 \( \mathbf{n}_i \perp \mathbf{n} \) であるので、 \( \mathbf{n}_i \) は \( \mathbf{p}_1,\cdots,\mathbf{p}_n \) の一次結合で表せます。
つまり、 \( \mathbf{n}_i=\alpha_i^j\mathbf{p}_j \) とおきます。すると、
\[ \mathbf{n}_i\cdot \mathbf{p}_k=\alpha_i^j\mathbf{p}_j\cdot\mathbf{p}_k=\alpha_i^jg_{jk} \]
一方で、
\[ \mathbf{n}_i\cdot \mathbf{p}_k=-\mathbf{n}\cdot \mathbf{p}_{ik}=-h_{ik} \]
したがって、 \( -h_{ik}=\alpha_i^jg_{jk} \)
\( g^{k\ell} \) をかけて \( k \) について和をとると、前回定義した \( h_{ik}g^{k\ell}=h_i^{\ell} \) に注意すると、
\[ -h_i^{\ell}=\alpha_i^jg_{jk}g^{k\ell}=\alpha_i^j\delta_j^{\ell}=\alpha_i^{\ell} \]
したがって、 \( \mathbf{n}_i=-h_i^j\mathbf{p}_j \) が得られます。この式をワインガルデンの式といいます。
次に \( \mathbf{p}_{ijk} \) を計算すると、ガウスの式とワインガルデンの式より、
\[ \begin{align} \mathbf{p}_{ijk}&=(\mathbf{p}_{ij})_k=(\Gamma_{ij}^{\ell}\mathbf{p}_{\ell}+h_{ij}\mathbf{n})_k=(\Gamma_{ij}^{\ell})_k\mathbf{p}_{\ell}+\Gamma_{ij}^{\ell}\mathbf{p}_{\ell k}+(h_{ij})_k\mathbf{n}+h_{ij}\mathbf{n}_k \\ &=\{ (\Gamma_{ij}^m)_k+\Gamma_{ij}^{\ell}\Gamma_{\ell k}^m-h_{ij}h_k^m\}\mathbf{p}_m+\{h_{\ell k}\Gamma_{ij}^{\ell}+(h_{ij})_k\}\mathbf{n} \end{align} \]
同様に \( \mathbf{p}_{ikj} \) も計算して、 \( \mathbf{p}_{ijk}=\mathbf{p}_{ikj} \) の \( \mathbf{p}_m \) 成分を比べると、
\[ (\Gamma_{ij}^m)_k+\Gamma_{ij}^{\ell}\Gamma_{\ell k}^m-h_{ij}h_k^m=(\Gamma_{ik}^m)_j+\Gamma_{ik}^{\ell}\Gamma_{\ell j}^m-h_{ik}h_j^m \]
これを変形すると、
\[ (\Gamma_{ij}^m)_k-(\Gamma_{ik}^m)_j+\Gamma_{ij}^{\ell}\Gamma_{\ell k}^m-\Gamma_{ik}^{\ell}\Gamma_{\ell j}^m=h_{ij}h_k^m-h_{ik}h_j^m \tag{1} \]
両辺に \( g_{m\ell} \) をかけて \( m \) について和をとると、
\[ g_{m\ell}\{(\Gamma_{ij}^m)_k-(\Gamma_{ik}^m)_j+\Gamma_{ij}^{\ell}\Gamma_{\ell k}^m-\Gamma_{ik}^{\ell}\Gamma_{\ell j}^m\}=h_{\ell j}h_{k\ell}-h_{ik}h_{j\ell} \tag{2} \]
この式(1) (または式(2)) もガウスの式といいます。
また、 \( \mathbf{p}_{ijk}=\mathbf{p}_{ikj} \) の \( \mathbf{n} \) 成分を比べると、
\[ h_{\ell k}\Gamma_{ij}^{\ell}+(h_{ij})_k=h_{\ell j}\Gamma_{ik}^{\ell}+(h_{ik})_j \]
これを移項すると、
\[ (h_{ij})_k-(h_{ik})_j+h_{\ell k}\Gamma_{ij}^{\ell}-h_{\ell j}\Gamma_{ik}^{\ell}=0 \tag{3} \]
この式(3)をマイナルディ・ゴダッチの式といいます。
超曲面論の基本定理
これらを用いて、冒頭に述べた逆問題への1つの解答を与えることができます。
\( D \) 上の関数 \( g_{ij},h_{ij}, \ (i,j=1,2,\cdots,n) \) が次をみたしているとする。
\[ g_{ij}=g_{ji}, \quad \det(g_{ij})>0, \quad h_{ij}=h_{ji} \]
これらが、ガウスの式(1) (または式(2))とマイナルディ・ゴダッチの式(3)をみたすならば、 \( g_{ij} \) を第一基本量、 \( h_{ij} \) を第二基本量とする超曲面
\[ S=\{\mathbf{p}=\mathbf{p}(u_1,\cdots,u_n)\in\mathbb{R}^{n+1} : (u_1,\cdots,u_n)\in D\} \]
が存在して、さらに合同変換を除けば一意である。
今回までで曲線・曲面論の内容について標準的なところまで含めて一通り紹介しました。お疲れ様でした。
それでは、またどこかの記事でお会いしましょう。ひかりでした。