曲線・曲面論14:超曲面の曲率の定義

こんにちは、ひかりです。

今回は曲線・曲面論から超曲面の曲率の定義について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 超曲面の曲率の定義について
  • 超曲面の第一基本量と第二基本量の定義について
  • 超曲面の曲率の求め方について
目次

超曲面の曲率の定義

ここでは、曲線や曲面の一般化である超曲面について考えていきましょう。つまり、

\( \mathbb{R}^2 \) 内の曲線:局所的には、 \( y=f(x) \) のグラフ

\( \mathbb{R}^3 \) 内の曲面:局所的には、 \( z=f(x,y) \) のグラフ

\( \mathbb{R}^{n+1} \) 内の(\( n \) 次元)超曲面:局所的には、 \( x_{n+1}=f(x_1,\cdots,x_n) \) のグラフ

まず、はじめに \( f \) が

\[ f(0,\cdots,0)=f_{x_1}(0,\cdots,0)=\cdots=f_{x_n}(0,\cdots,0)=0 \]

をみたす場合を考えます。ただし、 \( f_{x_i}=\frac{\partial f}{\partial x_i} \)

また、ヘッセ行列は次のようになります。

\[ \text{Hess} \ f(0,\cdots,0)=\begin{pmatrix} f_{x_1x_1}(0,\cdots,0) & f_{x_1x_2}(0,\cdots,0) & \cdots & f_{x_1x_n}(0,\cdots,0) \\ f_{x_2x_1}(0,\cdots,0) & f_{x_2x_2}(0,\cdots,0) & \cdots & f_{x_2x_n}(0,\cdots,0) \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ f_{x_nx_1}(0,\cdots,0) & f_{x_nx_2}(0,\cdots,0) & \cdots & f_{x_nx_n}(0,\cdots,0) \end{pmatrix} \]

これをもとに次のように曲率を定義します。

定義1 (超曲面の曲率)

\( x_{n+1}=f(x_1,\cdots,x_n) \) のグラフで表される超曲面に対して、そのヘッセ行列 \( \text{Hess} \ f(0,\cdots,0) \) の固有値 \( \kappa_1,\kappa_2,\cdots,\kappa_n \) (これは \( f \) が \( C^2\)-級であればすべて実数となる)を主曲率という。

また、平均曲率 \( H \) とガウス曲率 \( K \) を次で定める。

\[ H=\frac{\kappa_1+\kappa_2+\cdots+\kappa_n}{n}, \quad K=\kappa_1\kappa_2\cdots\kappa_n \]

\( H=\kappa_1+\kappa_2+\cdots+\kappa_n \) を平均曲率とする本もあります。

固有値の定義より主曲率は \( \det(\lambda E-\text{Hess} \ f(0,\cdots,0))=0 \) の解となります。このとき、

\[ \det(\lambda E-\text{Hess} \ f(0,\cdots,0))=\lambda^n+(-1)\sigma_1\lambda^{n-1}+\cdots+(-1)^n\sigma_n \]

と表したときの \( \sigma_k \) を \( k \) 次の平均曲率といいます。

ケーリー・ハミルトンの定理より、 \( \sigma_1=nH, \ \sigma_n=K \) となります。

超曲面の第一基本量と第二基本量の定義

次に超曲面に対して第一基本量と第二基本量を定義していきます。そのため、超曲面が

\[ S=\{ \mathbf{p}=\mathbf{p}(u_1,u_2,\cdots,u_n) : (u_1,u_2,\cdots,u_n)\in D\subset \mathbb{R}^n \} \]

で表されるとします。

\( \mathbf{p}_i=\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u_i}, \ \mathbf{p}_{ij}=\frac{\partial^2\mathbf{p}}{\partial u_i\partial u_j} \) とおいて、第一基本量 \( g_{ij} \) を次で定めます。

\[ g_{ij}=\mathbf{p}_i\cdot \mathbf{p}_j \quad (内積は\mathbf{R}^{n+1}の内積) \]

また、

\[ (g_{ij})=\begin{pmatrix} g_{11} & \cdots & g_{1n} \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ g_{n1} & \cdots & g_{nn} \end{pmatrix} \]

とおくと、

\[ g_{ij}=\mathbf{p}_i\cdot\mathbf{p}_j=\mathbf{p}_j\cdot\mathbf{p}_i=g_{ji} \]

であるので、 \( (g_{ij}) \) は \( n \) 次対称行列となります。

\( n=2 \) のときは \( E=g_{11}, \ F=g_{12}=g_{21}, \ G=g_{22} \) となります。

\( \mathbf{P}=\begin{pmatrix} \mathbf{p}_1 & \mathbf{p}_2 & \cdots & \mathbf{p}_n \end{pmatrix} \) とおくと、 \( (g_{ij})={}^t\mathbf{P}\mathbf{P} \) となります。

したがって、

\[ \det (g_{ij})=\det ({}^t\mathbf{P}\mathbf{P})=(\det {}^t\mathbf{P})(\det \mathbf{P})=(\det \mathbf{P})^2≧0 \]

とくに、

\[ \det (g_{ij})>0 \iff \det \mathbf{P}\not=0 \iff \{\mathbf{p}_1,\mathbf{p}_2,\cdots,\mathbf{p}_n\}:一次独立 \]

以降、 \( \{\mathbf{p}_1,\mathbf{p}_2,\cdots,\mathbf{p}_n\} \) はいたるところ一次独立であると仮定します。

すると、 \( (g_{ij}) \) の逆行列が存在するので、それを \( (g^{ij}) \) とおきます。このとき、

\[ \sum_{k=1}^ng_{ik}g^{kj}=\delta_i^j=\begin{cases} 1 & (i=j) \\ 0 & (i\not=j) \end{cases} \]

ここで、数式を簡潔にするために次のような記法を導入します。(これをアインシュタインの規約といいます)

定義2 (アインシュタインの規約)

上下に同じ添え字が現れたら、和の記号が書かれていなくても1から \( n \) まで和をとるものとする。例えば、

\[ a_{ik}b^{kj}=\sum_{k=1}^na_{ik}b^{kj}, \quad a_{k}b^{k\ell}c_{\ell j}=\sum_{k=1}^n\sum_{\ell=1}^na_{ik}b^{k\ell}c_{\ell j} \]

アインシュタインの規約のもとでは、 \( \delta_i^i=n \) となります。

次に、 \( S \) 上の単位法線ベクトル \( \mathbf{n} \) を定義します。

\[ \mathbf{p}=(x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}), \ x_i=x_i(u_1,u_2,\cdots,u_n), \ \mathbf{e}_j:x_j軸方向の単位ベクトル \]

とするときに、

\[ \widetilde{\mathbf{n}}=\det \begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \cdots & \mathbf{e}_{n+1} \\ \frac{\partial x_1}{\partial u_1} & \frac{\partial x_2}{\partial u_1} & \cdots & \frac{\partial x_{n+1}}{\partial u_1} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ \frac{\partial x_1}{\partial u_n} & \frac{\partial x_2}{\partial u_n} & \cdots & \frac{\partial x_{n+1}}{\partial u_n} \end{pmatrix}, \quad \mathbf{n}=\frac{\widetilde{\mathbf{n}}}{\|\widetilde{\mathbf{n}}\|} \]

と定めます。このとき、 \( \|\mathbf{n}\|=1, \ \mathbf{n}\cdot \mathbf{p}_i=0 \ (i=1,2,\cdots n) \) となります。

また、第二基本量 \( h_{ij} \) を次で定めます。

\[ h_{ij}=\mathbf{p}_{ij}\cdot \mathbf{n}=-\mathbf{p}_i\cdot \mathbf{n}_j \]

\( n=2 \) のときは \( L=h_{11}, \ M=h_{12}=h_{21}, \ N=h_{22} \) となります。

超曲面の曲率の求め方

曲線・曲面論09の定理2の超曲面版を考えていきましょう。

まず、次を定めます。

\[ h_i^j=\sum_{k=1}^nh_{ik}g^{kj}, \quad h^{ij}=\sum_{k=1}^nh_k^ig^{kj}=\sum_{k=1}^n\sum_{\ell=1}^nh_{k\ell}g^{kj}g^{\ell i} \]

つまり、アインシュタインの規約を用いると、

\[ h_i^j=h_{ik}g^{kj}, \quad h^{ij}=h^i_kg^{kj}=h_{k\ell}g^{kj}g^{\ell i} \]

また、 \( (h_{ij}), \ (h_i^j), \ (h^{ij}) \) でそれらの行列を表します。

\( (h^{ij}) \) は \( (h_{ij}) \) の逆行列ではないことに注意してください。

\( n=2 \) のときは次のようになります。 \[ \begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} h_1^1 & h_2^1 \\ h_1^2 & h_2^2 \end{pmatrix}, \quad \begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}\begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix}^{-1}=\begin{pmatrix} h_1^1 & h_2^1 \\ h_1^2 & h_2^2 \end{pmatrix} \]

曲線・曲面論09の定理2と似たようにして、次のことが成り立ちます。

定理1

主曲率は \( \lambda \) に関する \( n \) 次方程式 \( \det\{(h_i^j)-\lambda E\}=0 \) の解で与えられる。

また、平均曲率 \( H \) とガウス曲率 \( K \) は次で与えられる。

\[ H=\frac{1}{n}\text{tr} \ (h_i^j), \quad K=\det(h_i^j)=\frac{\det (h_{ij})}{\det (g_{ij})} \]

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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