曲線・曲面論08:第二基本量と第二基本形式

こんにちは、ひかりです。

今回は曲線・曲面論から第二基本量と第二基本形式について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 第二基本量と第二基本形式について
  • クリストフェルの記号とガウスの式について
  • ワインガルテンの式について
目次

第二基本量と第二基本形式

位置ベクトル \( \mathbf{p}(u,v) \) の曲面 \( S \) の単位法ベクトルを

$$ \mathbf{n}=\frac{\mathbf{p}_u\times\mathbf{p}_v}{\|\mathbf{p}_u\times\mathbf{p}_v\|} $$

とおきます。このとき、

$$ \mathbf{p}_u\cdot \mathbf{n}\equiv 0, \quad \mathbf{p}_v\cdot \mathbf{n}\equiv 0 $$

をそれぞれ \( u,v \) について偏微分をすると、

$$ \mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{n}+\mathbf{p}_u\cdot\mathbf{n}_u=0, \quad \mathbf{p}_{uv}\cdot \mathbf{n}+\mathbf{p}_u\cdot\mathbf{n}_v=0, $$

$$ \mathbf{p}_{vu}\cdot \mathbf{n}+\mathbf{p}_v\cdot\mathbf{n}_u=0, \quad \mathbf{p}_{vv}\cdot \mathbf{n}+\mathbf{p}_v\cdot\mathbf{n}_v=0, $$

そこで次を定義します。

定義1 (第二基本量・第二基本形式)

$$ \begin{align} L(u,v)&=\mathbf{p}_{uu}(u,v)\cdot \mathbf{n}(u,v)(=-\mathbf{p}_u(u,v)\cdot \mathbf{n}_u(u,v)) \\ M(u,v)&=\mathbf{p}_{uv}(u,v)\cdot \mathbf{n}(u,v)(=-\mathbf{p}_u(u,v)\cdot \mathbf{n}_v(u,v)=-\mathbf{p}_v(u,v)\cdot \mathbf{n}_u(u,v)) \\ N(u,v)&=\mathbf{p}_{vv}(u,v)\cdot \mathbf{n}(u,v)(=-\mathbf{p}_v(u,v)\cdot \mathbf{n}_v(u,v)) \end{align} $$

を曲面 \( S \) の第二基本量という。また、

$$ II(u,v)=L(u,v)du^2+2M(u,v)dudv+N(u,v)dv^2 $$

を曲面 \( S \) の第二基本形式という。

クリストフェルの記号とガウスの式

以降、 \( \{\mathbf{p}_u,\mathbf{p}_v\} \) は一次独立であるとします。

(詳しくは曲線・曲面論07の最後の注意をご覧ください。)

すると、 \( \{\mathbf{p}_u,\mathbf{p}_v,\mathbf{n}\} \) は \( \mathbb{R}^3 \) の基底となります。

よって、 \( \mathbf{p}_{uu} \) の \( \mathbf{p}_u,\mathbf{p}_v \) 成分をそれぞれ \( \Gamma_{uu}^u,\Gamma_{uu}^v \) とおきます。つまり、

\[ \mathbf{p}_{uu}=\Gamma^u_{uu}\mathbf{p}_u+\Gamma_{uu}^v\mathbf{p}_v+X\mathbf{n} \]

ここで、 \( \mathbf{n} \) 成分を求めるために両辺 \( \mathbf{n} \) と内積をとると、

\[ \mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{n}=\Gamma^u_{uu}\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{n}+\Gamma_{uu}^v\mathbf{p}_v\cdot \mathbf{n}+X\mathbf{n}\cdot \mathbf{n} \]

となり、

\[ \mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{n}=L, \quad \mathbf{p}_u\cdot \mathbf{n}=\mathbf{p}_v\cdot \mathbf{n}=0, \quad \mathbf{n}\cdot \mathbf{n}=1 \]

より、 \( X=L \) となる。つまり、

\[ \mathbf{p}_{uu}=\Gamma^u_{uu}\mathbf{p}_u+\Gamma_{uu}^v\mathbf{p}_v+L\mathbf{n} \tag{1} \]

同様に \( \Gamma_{uv}^u,\Gamma_{uv}^v,\Gamma_{vv}^u,\Gamma_{vv}^v \) を次で定義します。

\[ \mathbf{p}_{uv}=\Gamma^u_{uv}\mathbf{p}_u+\Gamma_{uv}^v\mathbf{p}_v+M\mathbf{n} \]

\[ \mathbf{p}_{vv}=\Gamma^u_{vv}\mathbf{p}_u+\Gamma_{vv}^v\mathbf{p}_v+N\mathbf{n} \]

まとめると、

定義2 (クリストフェルの記号・ガウスの式)

\( \Gamma_{uu}^u,\Gamma_{uu}^v,\Gamma_{uv}^u,\Gamma_{uv}^v,\Gamma_{vv}^u,\Gamma_{vv}^v \) を次で定義する。

$$ \begin{align*} \mathbf{p}_{uu}&=\Gamma^u_{uu}\mathbf{p}_u+\Gamma_{uu}^v\mathbf{p}_v+L\mathbf{n} \\ \mathbf{p}_{uv}&=\Gamma^u_{uv}\mathbf{p}_u+\Gamma_{uv}^v\mathbf{p}_v+M\mathbf{n} \\ \mathbf{p}_{vv}&=\Gamma^u_{vv}\mathbf{p}_u+\Gamma_{vv}^v\mathbf{p}_v+N\mathbf{n} \end{align*} $$

ここで、 \( L,M,N \) は第二基本量である。

この \( \Gamma_{uu}^u,\Gamma_{uu}^v,\Gamma_{uv}^u,\Gamma_{uv}^v,\Gamma_{vv}^u,\Gamma_{vv}^v \) をクリストフェルの記号といい、この3式のことをガウスの式という。

クリストフェルの記号は第一基本量 \( E,F,G \) を用いて次のように表すことができます。

定理1

クリストフェルの記号は第一基本量 \( E,F,G \) を用いて次のように表される。

$$ \Gamma_{uu}^u=\frac{GE_u-2FF_u+FE_v}{2(EG-F^2)}, \ \Gamma_{uu}^v=\frac{-FE_u+2EF_u-EE_v}{2(EG-F^2)}, \ \Gamma_{uv}^u=\frac{GE_v-FG_u}{2(EG-F^2)}, $$

$$ \Gamma_{uv}^v=\frac{EG_u-FE_v}{2(EG-F^2)}, \ \Gamma_{vv}^u=\frac{-FG_v+2GF_v-GG_u}{2(EG-F^2)}, \ \Gamma_{vv}^v=\frac{EG_v-2FF_v+FG_u}{2(EG-F^2)}. $$

定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)

\( \Gamma_{uu}^u=\frac{GE_u-2FF_u+FE_v}{2(EG-F^2)} \) のみ示します。残りも同様に示せます。

式(1)の両辺を \( \mathbf{p}_u \) と内積をとると、

\[ \mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_u=\Gamma^u_{uu}\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{p}_u+\Gamma_{uu}^v\mathbf{p}_v\cdot \mathbf{p}_u+L\mathbf{n}\cdot \mathbf{p}_u=\Gamma_{uu}^uE+\Gamma_{uu}^vF \]

同様に、

\[ \mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_v=\Gamma^u_{uu}\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{p}_v+\Gamma_{uu}^v\mathbf{p}_v\cdot \mathbf{p}_v+L\mathbf{n}\cdot \mathbf{p}_v=\Gamma_{uu}^uF+\Gamma_{uu}^vG \]

これらより、 \( \Gamma_{uu}^v \) を消去すると、

\[ \mathbf{p}_{uu}\cdot (G\mathbf{p}_u-F\mathbf{p}_v)=(EG-F^2)\Gamma_{uu}^u \tag{2} \]

\( E=\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{p}_u \) を \( u,v \) で偏微分すると、

\[ E_u=2\mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_u, \quad E_v=2\mathbf{p}_{uv}\cdot \mathbf{p}_u \]

また、 \( F=\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{p}_v \) を \( u \) で偏微分すると、

\[ F_u=\mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_v+\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{p}_{vu}=\mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_v+\frac{1}{2}E_v \]

したがって、式(2)とあわせると、

$$ \begin{align} (EG-F^2)\Gamma_{uu}^u&=\mathbf{p}_{uu}\cdot (G\mathbf{p}_u-F\mathbf{p}_v) \\ &=G\mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_u-F\mathbf{p}_{uu}\cdot \mathbf{p}_v=G\times \frac{1}{2}E_u-F\left(F_u-\frac{1}{2}E_v\right) \\ &=\frac{1}{2}(GE_u-2FF_u+FE_v) \end{align} $$

よって、

\[ \Gamma_{uu}^u=\frac{GE_u-2FF_u+FE_v}{2(EG-F^2)} \]

ワインガルテンの式について

\( \|\mathbf{n}\|^2\equiv 1 \) を \( u,v \) で偏微分すると、

\[ 2\mathbf{n}\cdot \mathbf{n}_u=0, \quad 2\mathbf{n}\cdot \mathbf{n}_v=0 \]

よって、 \( \mathbf{n}_u\perp \mathbf{n}, \ \mathbf{n}_v\perp \mathbf{n} \) となります。

したがって、 \( \mathbf{n}_u,\mathbf{n}_v \) は \( \mathbf{p}_u,\mathbf{p}_v \) の一次結合で表すことができます。

実際、次のことが成り立ちます。

定理2 (ワインガルテンの式)

\( \mathbf{n}_u,\mathbf{n}_v \) は次のように \( \mathbf{p}_u,\mathbf{p}_v \) の一次結合で表すことができる。

$$ \mathbf{n}_u=\frac{FM-GL}{EG-F^2}\mathbf{p}_u+\frac{FL-EM}{EG-F^2}\mathbf{p}_v $$

$$ \mathbf{n}_v=\frac{FN-GM}{EG-F^2}\mathbf{p}_u+\frac{FM-EN}{EG-F^2}\mathbf{p}_v $$

この2式のことをワインガルテンの式という。

定理2の証明(気になる方だけクリックしてください)

\( \mathbf{n}_u=A\mathbf{p}_u+B\mathbf{p}_v \) とおき、両辺を \( \mathbf{p}_u \) と内積をとると、

\[ \mathbf{n}_u\cdot \mathbf{p}_u=A\mathbf{p}_u\cdot \mathbf{p}_u+B\mathbf{p}_v\cdot \mathbf{p}_u \]

したがって、

\[ -L=AE+BF \]

同様に、 \( \mathbf{p}_v \) と内積をとると、

\[ -M=AF+BG \]

この2式から \( A,B \) についてとくと、

\[ A=\frac{FM-GL}{EG-F^2}, \quad B=\frac{FL-EM}{EG-F^2} \]

よって、

\[ \mathbf{n}_u=\frac{FM-GL}{EG-F^2}\mathbf{p}_u+\frac{FL-EM}{EG-F^2}\mathbf{p}_v \]

同様にして、次も示せます。

$$ \mathbf{n}_v=\frac{FN-GM}{EG-F^2}\mathbf{p}_u+\frac{FM-EN}{EG-F^2}\mathbf{p}_v $$

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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