曲線・曲面論06:空間曲面の曲率の定義

こんにちは、ひかりです。

今回は曲線・曲面論から空間曲面の曲率の定義について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 空間曲面の曲率の定義について
  • 平均曲率とガウス曲率について
目次

空間曲面の曲率の定義

今までの記事にて平面及び空間の曲線について見ていきました。

ここからは、空間の曲面について考えていきましょう。

\( S\subset \mathbb{R}^3 \) を滑らかな曲面とします。

この曲面 \( S \) の表示方法としては以下の4つが考えられます。

  • 関数 \( z=f(x,y) \) のグラフ
  • ベクトル値関数 \( \mathbf{p}(u,v) \) の終点の集合(位置ベクトル)
  • 3つの2変数関数 \( x=x(u,v),y=y(u,v),z=z(u,v) \)
  • 陰関数表示 \( F(x,y,z)=0 \)

この曲面 \( S \) に対して曲線のときと同様に曲率を定義していきます。

では、平面曲線の曲率の定義と同じようにして、空間曲面を球面で2次近似することはできるのでしょうか。

これは一般にはできません!次の例をご覧ください。

例1

次の空間曲面を考える。

$$ z=x^2-y^2 $$

この曲面は原点において、 \( x \) 軸方向には下に凸、 \( y \) 軸方向には上に凸となる。

したがって、球面では2次近似できない。

そこで、曲面を2次曲面で近似することにより曲率を定義していきましょう。

ここでは、 \( S \) は \( z=f(x,y) \) のグラフで表されているとして \( f \) を \( C^2\)-級であるとします。

このグラフは座標系の回転と平行移動により、次をみたすとしても問題ありません。

$$ f(0,0)=f_x(0,0)=f_y(0,0)=0 $$

このとき、原点を中心とするテイラー展開は

$$ \begin{align} f(x,y)&=\frac{1}{2}(f_{xx}(0,0)x^2+2f_{xy}(0,0)xy+f_{yy}(0,0)y^2)+o(x^2+y^2) \\ &=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} x & y \end{pmatrix} \text{Hess} \ f(0,0)\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}+o(x^2+y^2) \end{align} $$

ここで、 \( o \) はスモール・オーダーであり、

$$ \text{Hess} \ f(0,0)=\begin{pmatrix} f_{xx}(0,0) & f_{xy}(0,0) \\ f_{yx}(0,0) & f_{yy}(0,0) \end{pmatrix} $$

はヘッセ行列といわれるものです。

\( f \) が \( C^2\)-級より、このヘッセ行列は実対称行列となるので、適当な \( 2\times 2 \) 直交行列 \( Q \) を用いて、

$$ Q^{-1}\text{Hess} \ f(0,0)Q=\begin{pmatrix} \kappa_1 & 0 \\ 0 & \kappa_2 \end{pmatrix} $$

と \( \text{Hess} \ f(0,0) \) の固有値 \( \kappa_1,\kappa_2 \) にて対角化することができます。

\( Q=\begin{pmatrix} \mathbf{q}_1 & \mathbf{q}_2 \end{pmatrix} \) とおくと、

$$ Q:直交行列 \ \iff \ Q{}^tQ=E \ \iff \ \mathbf{q}_i\cdot \mathbf{q}_j=\delta_{ij}=\begin{cases} 1 & (i=j) \\ 0 & (i\not=j) \end{cases} $$

したがって、 \( \|\mathbf{q}_1\|=1 \) であるので \( \mathbf{q}_1=\begin{pmatrix} \cos \theta \\ \sin \theta \end{pmatrix} \) と表すことができます。

同様にして \( \|\mathbf{q}_2\|=1 \) かつ \( \mathbf{q}_1\perp \mathbf{q}_2 \) であるので、

$$ \mathbf{q}_2=\begin{pmatrix} -\sin \theta \\ \cos \theta \end{pmatrix} \ または \ \begin{pmatrix} \sin \theta \\ -\cos \theta \end{pmatrix} $$

どちらを選んでも \( Q^{-1}\text{Hess} \ f(0,0)Q \) は変わらないので、 \( \mathbf{q}_2=\begin{pmatrix} -\sin \theta \\ \cos \theta \end{pmatrix} \) とします。つまり、

$$ Q=\begin{pmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{pmatrix} $$

となり、これは回転を表す行列となります。

ここで、 \( \begin{pmatrix} \xi \\ \eta \end{pmatrix}=Q^{-1}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \) とおくと、 \( \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=Q\begin{pmatrix} \xi \\ \eta \end{pmatrix} \) となります。このとき、

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} x & y \end{pmatrix}\text{Hess} \ f(0,0)\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \xi & \eta \end{pmatrix}{}^tQ\text{Hess} \ f(0,0)Q\begin{pmatrix} \xi \\ \eta \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \xi & \eta \end{pmatrix}Q^{-1}\text{Hess} \ f(0,0)Q\begin{pmatrix} \xi \\ \eta \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \xi & \eta \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \kappa_1 & 0 \\ 0 & \kappa_2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \xi \\ \eta \end{pmatrix}=\kappa_1\xi^2+\kappa_2\eta^2 \end{align} $$

したがって、

$$ f(x,y)=\frac{1}{2}(\kappa_1\xi^2+\kappa_2\eta^2)+o(x^2+y^2)=\frac{1}{2}(\kappa_1\xi^2+\kappa_2\eta^2)+o(\xi^2+\eta^2) $$

となり、 \( z=\frac{1}{2}(\kappa_1\xi^2+\kappa_2\eta^2) \) は点 \( (0,0,0) \) において \( S \) を2次近似しています。

したがって、次のように曲率を定義します。

定義1 (主曲率・主曲率方向)

\( \kappa_1,\kappa_2 \) を \( S \) の点 \( (0,0,0) \) における主曲率という。

また、 \( \xi \) 軸と \( \eta \) 軸の方向を主曲率方向という。

\( \kappa_1,\kappa_2 \) は座標系のとり方に依存します。しかし、順序を無視すれば絶対値は座標系のとり方に依存しないことが知られています。

平均曲率とガウス曲率

\( \kappa_1,\kappa_2 \) は \( \text{Hess} \ f(0,0) \) の固有値であるので、

$$ \text{det}(\text{Hess} \ f(0,0)-\lambda E)=0 $$

の解となります。よって、解と係数の関係より、

$$ \kappa_1+\kappa_2=\text{tr} \ \text{Hess} \ f(0,0)=f_{xx}(0,0)+f_{yy}(0,0)=\Delta f(0,0) $$

$$ \kappa_1\kappa_2=\text{det} \ \text{Hess} \ f(0,0)=f_{xx}(0,0)f_{yy}(0,0)-f_{xy}(0,0)^2 $$

となります。

この表示は \( f_x(0,0)=f_y(0,0)=0 \) の場合のものになります。一般の場合はもっと複雑になります。

ここで、次を定義します。

定義2 (平均曲率・ガウス曲率)

\( H=\frac{\kappa_1+\kappa_2}{2} \) を平均曲率、 \( K=\kappa_1\kappa_2 \) をガウス曲率という。

本によっては \( \kappa_1+\kappa_2 \) を平均曲率とするものもあります。

前述の注意より、\( H \) : 座標系のとり方に依る、\( |H| \) : 座標系のとり方に依らない、\( K \) : 座標系のとり方に依らない、となります。

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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