こんにちは、ひかりです。
今回は曲線・曲面論から空間曲線のフレネ・セレーの公式と曲率の表示について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 空間曲線のフレネ・セレーの公式について
- 空間曲線の曲率と捩率の具体的な表示について
空間曲線のフレネ・セレーの公式
曲線・曲面論04の記事において、空間曲線の曲率 \( \kappa(s) \) と捩率 \( \tau(s) \) を定義しました。
これにより、曲線・曲面論04の式(1)と式(2)より次が成り立ちました。
$$ \mathbf{e}’_1(s)=\boldsymbol{\kappa}(s)=\kappa(s)\mathbf{e}_2(s) \tag{1} $$
$$ \mathbf{e}’_2(s)=-\kappa(s)\mathbf{e}_1(s)+\tau(s)\mathbf{e}_3(s) \tag{2} $$
ここで、 \( \mathbf{e}_1(s) \) は単位接線ベクトル、 \( \mathbf{e}_2(s)=\frac{\boldsymbol{\kappa}(s)}{\kappa(s)} \) は主法線ベクトルです。
最後に、従法線ベクトル \( \mathbf{e}’_3(s) \) の導関数を求めてみましょう。
フレネの標構 \( \{\mathbf{e}_1(s),\mathbf{e}_2(s),\mathbf{e}_3(s)\} \) は \( \mathbb{R}^3 \) の正規直交基底となるので、
$$ \mathbf{e}’_3(s)=a^1(s)\mathbf{e}_1(s)+a^2(s)\mathbf{e}_2(s)+a^3(s)\mathbf{e}_3(s) $$
この両辺と \( \mathbf{e}_i(s) \) との内積を計算すると、 \( \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)=\delta_{ij} \) より、
$$ \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}’_3(s)=a^i(s) $$
したがって、
$$ \mathbf{e}’_3(s)=\sum_{i=1}^3(\mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}’_3(s))\mathbf{e}_i(s) \tag{3} $$
ここで、 \( \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)=\delta_{ij} \) を \( s \) で微分すると、
$$ \mathbf{e}’_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)+\mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}’_j(s)=0 $$
となることに注意すると、式(1)と(2)より、
$$ \mathbf{e}_1(s)\cdot \mathbf{e}’_3(s)=-\mathbf{e}’_1(s)\cdot \mathbf{e}_3(s)=-\boldsymbol{\kappa}(s)\cdot \mathbf{e}_3(s)=-\kappa(s)\mathbf{e}_2(s)\cdot \mathbf{e}_3(s)=0 $$
$$ \mathbf{e}_2(s)\cdot \mathbf{e}’_3(s)=-\mathbf{e}’_2(s)\cdot\mathbf{e}_3(s)=-(-\kappa(s)\mathbf{e}_1(s)+\tau(s)\mathbf{e}_3(s))\cdot \mathbf{e}_3(s)=-\tau(s) $$
$$ \mathbf{e}_3(s)\cdot \mathbf{e}’_3(s)=\frac{1}{2}(\|\mathbf{e}_3(s)\|)’=0 $$
となるので、式(3)と合わせると、
$$ \mathbf{e}’_3(s)=-\tau(s)\mathbf{e}_2(s) \tag{4} $$
となります。
この式(1),(2),(4)をまとめたものが空間曲線のフレネ・セレーの公式となります。つまり、
空間曲線の位置ベクトルを \( \mathbf{p}(s) \) とする。ただし、 \( s \) は弧長パラメータとする。
また、曲率 \( \kappa(s) \) は正であるとする。このとき、次が成り立つ。
$$ \mathbf{e}’_1(s)=\kappa(s)\mathbf{e}_2(s), \quad \mathbf{e}’_2(s)=-\kappa(s)\mathbf{e}_1(s)+\tau(s)\mathbf{e}_3(s) $$
$$ \mathbf{e}’_3(s)=-\tau(s)\mathbf{e}_2(s) $$
これは次のように表せる。
$$ \frac{d}{ds}\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 \\ \mathbf{e}_2 \\ \mathbf{e}_3 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 0 & \kappa & 0 \\ -\kappa & 0 & \tau \\ 0 & -\tau & 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 \\ \mathbf{e}_2 \\ \mathbf{e}_3 \end{pmatrix} $$
フレネ・セレーの公式を用いることにより、位置ベクトル \( \mathbf{p}(s) \) のテイラー展開は次のようになります。
\( \mathbf{p}(s) \) が \( C^2\)-級であるとき、次が成り立つ。
$$ \mathbf{p}(s)=\mathbf{p}(s_0)+\mathbf{e}_1(s_0)(s-s_0)+\frac{1}{2}\boldsymbol{\kappa}(s_0)(s-s_0)^2+o((s-s_0)^2) \quad (s\to s_0) $$
とくに、 \( \mathbf{p}(s) \) が \( C^3\)-級で曲率 \( \kappa(s) \) が正であるとき、次が成り立つ。
$$ \begin{align} \mathbf{p}(s)&=\mathbf{p}(s_0)+\mathbf{e}_1(s_0)(s-s_0)+\frac{1}{2}\kappa(s_0)\mathbf{e}_2(s_0)(s-s_0)^2 \\ &\quad +\frac{1}{3!}(-\kappa(s_0)^2\mathbf{e}_1(s_0)+\kappa'(s_0)\mathbf{e}_2(s_0)+\kappa(s_0)\tau(s_0)\mathbf{e}_3(s_0))(s-s_0)^3 \\ & \quad +o((s-s_0)^3) \quad (s\to s_0) \end{align} $$
ここで、 \( o \) はスモール・オーダーである。
定理2の証明(気になる方だけクリックしてください)
テイラーの定理より、 \( C^k\)-級関数に対して、
$$ \mathbf{p}(s)=\sum_{j=0}^k\frac{1}{j!}\mathbf{p}^{(j)}(s_0)(s-s_0)^j+o((s-s_0)^k) \quad (s\to s_0) $$
よって、前半の主張は \( k=2 \) とした式に
$$ \mathbf{p}'(s_0)=\mathbf{e}_1(s_0), \quad \mathbf{p}^{\prime\prime}(s_0)=\boldsymbol{\kappa}(s_0) $$
を代入すれば得られます。
後半の主張は \( k=3 \) とした式に
$$ \mathbf{p}'(s_0)=\mathbf{e}_1(s_0), \quad \mathbf{p}^{\prime\prime}(s_0)=\boldsymbol{\kappa}(s_0)=\kappa(s_0)\mathbf{e}_2(s_0) \ (曲率が正より) $$
$$ \begin{align} \mathbf{p}^{\prime\prime\prime}(s_0)&=(\kappa(s_0)\mathbf{e}_2(s_0))’=\kappa'(s_0)\mathbf{e}_2(s_0)+\kappa(s_0)\mathbf{e}’_2(s_0) \\ &=\kappa'(s_0)\mathbf{e}_2(s_0)+\kappa(s_0)(-\kappa(s_0)\mathbf{e}_1(s_0)+\tau(s_0)\mathbf{e}_3(s_0)) \ (フレネ・セレーの公式) \\ &=-\kappa(s_0)^2\mathbf{e}_1(s_0)+\kappa'(s_0)\mathbf{e}_2(s_0)+\kappa(s_0)\tau(s_0)\mathbf{e}_3(s_0) \end{align} $$
を代入すれば得られます。
空間曲線の曲率と捩率の具体的な表示
最後に空間曲線が弧長パラメータとは限らない一般の位置ベクトル \( \mathbf{p}(t) \) で表されているときの曲率と捩率の表示について見てみましょう。
以下、 \( {}’=\frac{d}{ds}, \ \dot{}=\frac{d}{dt} \) とします。
空間曲線の位置ベクトルを \( \mathbf{p}(t) \) とする。ただし、 \( t \) は弧長パラメータとは限らない。
このとき、 \( \|\dot{\mathbf{p}}(t)\|>0 \) ならば、
\[ \kappa(t)=\frac{\|\dot{\mathbf{p}}(t)\times \ddot{\mathbf{p}}(t)\|}{\|\dot{\mathbf{p}}(t)\|^3} \]
また、 \( \kappa(t)>0 \) ならば、
\[ \tau(t)=\frac{\text{det}\begin{pmatrix} \dot{\mathbf{p}}(t) & \ddot{\mathbf{p}}(t) & \dddot{\mathbf{p}}(t) \end{pmatrix}}{\|\dot{\mathbf{p}}(t)\times \ddot{\mathbf{p}}(t)\|^2} \]
定理3の証明(気になる方だけクリックしてください)
$$ \dot{\mathbf{p}}=\frac{d\mathbf{p}}{dt}=\frac{ds}{dt}\frac{d\mathbf{p}}{ds}=\dot{s}\mathbf{p}’=\dot{s}\mathbf{e}_1, \quad \ddot{\mathbf{p}}=\ddot{s}\mathbf{e}_1+\kappa\dot{s}^2\mathbf{e}_2 $$
$$ \dddot{\mathbf{p}}=(\dddot{s}-\kappa^2\dot{s}^2)\mathbf{e}_1+3\kappa\dot{s}\ddot{s}\mathbf{e}_2+\kappa\tau\dot{s}^3\mathbf{e}_3 $$
であるので、
$$ \dot{\mathbf{p}}\times \ddot{\mathbf{p}}=\kappa \dot{s}^3\mathbf{e}_3=(\text{sgn} \dot{s})\kappa\|\dot{\mathbf{p}}\|^3\mathbf{e}_3 $$
したがって、最両辺の大きさをとると、
\[ \kappa(t)=\frac{\|\dot{\mathbf{p}}(t)\times \ddot{\mathbf{p}}(t)\|}{\|\dot{\mathbf{p}}(t)\|^3} \]
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。