曲線・曲面論04:空間曲線の曲率と捩率の定義

こんにちは、ひかりです。

今回は曲線・曲面論から空間曲線の曲率と捩率の定義について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 空間曲線の曲率の定義について
  • 空間曲線の捩率の定義について
目次

空間曲線の曲率の定義

今までは平面曲線について見てきましたが、ここからは空間曲線について見ていきましょう。

空間曲線の位置ベクトルを

$$ \mathbf{p}(s)=(x(s),y(s),z(s)) $$

とおきます。ここで、 \( s \) は弧長パラメータとします。

つまり、 \( \|\mathbf{p}'(s)\|\equiv 1 \) をみたします。

よって、 \( \mathbf{p}'(s) \) は単位接線ベクトルであり、ここでは \( \mathbf{e}_1 \) とおきます。

つまり、 \( \mathbf{p}'(s)=\mathbf{e}_1 \) とおきます。

ここで、 \( \|\mathbf{p}'(s)\|\equiv 1 \) を \( s \) について微分をすると、

$$ 2\mathbf{p}'(s)\cdot \mathbf{p}^{\prime\prime}(s)=2\mathbf{e}_1(s)\cdot \mathbf{p}^{\prime\prime}(s)=0 $$

であるので、 \( \mathbf{p}^{\prime\prime}(s) \) と \( \mathbf{e}_1 \) は直交します。

そこで、 \( \boldsymbol{\kappa}(s)=\mathbf{p}^{\prime\prime}(s) \) とおいて曲率ベクトルといいます。

また、 \( \kappa(s)=\|\boldsymbol{\kappa}(s)\| \) とおいて曲率といいます。

(つまり、 \( \kappa(s)≧0 \) となります)

ここで、 \( \kappa(s)>0 \) とします。このとき、

$$ \mathbf{e}_2(s)=\frac{\boldsymbol{\kappa}(s)}{\kappa(s)}, \quad \mathbf{e}_3(s)=\mathbf{e}_1(s)\times \mathbf{e}_2(s) $$

とおくと、

$$ \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)=\delta_{ij}=\begin{cases} 1 & (i=j) \\ 0 & (i\not=j) \end{cases} $$

となります。まとめると、

定義1 (空間曲線の曲率)

空間曲線が位置ベクトル \( \mathbf{p}(s)=(x(s),y(s),z(s)) \) で表されているとする。

ただし、 \( s \) は弧長パラメータとする。このとき、

$$ \boldsymbol{\kappa}(s)=\mathbf{p}^{\prime\prime}(s), \quad \kappa(s)=\|\boldsymbol{\kappa}(s)\| $$

をそれぞれ曲率ベクトル曲率という。

また、 \( \mathbf{e}_1(s)=\mathbf{p}'(s), \ \kappa(s)>0 \) となる \( s \) に対して、 \( \mathbf{e}_2(s)=\frac{\boldsymbol{\kappa}(s)}{\kappa(s)} \) を主法線ベクトル、 \( \mathbf{e}_3(s)=\mathbf{e}_1(s)\times \mathbf{e}_2(s) \) を従法線ベクトルといいます。

そして、 \( \{\mathbf{e}_1(s),\mathbf{e}_2(s),\mathbf{e}_3(s)\} \) のことをフレネの標構という。

例1

次の位置ベクトルをもつ空間曲線を考える。(この曲線は螺旋という)

$$ \mathbf{p}(t)=(a\cos t,a\sin t,bt) \quad (a,b)\not=(0,0) $$

この空間曲線の曲率 \( \kappa(s) \) を求める。

$$ \mathbf{p}'(t)=(-a\sin t,a\cos t,b) $$

より、 \( \|\mathbf{p}'(t)\|=\sqrt{a^2+b^2} \) より、弧長パラメーターは \( s=t\sqrt{a^2+b^2} \) となる。つまり、

$$ \mathbf{p}(s)=\left( a\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},a\sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},\frac{bs}{\sqrt{a^2+b^2}} \right) $$

したがって、

$$ \mathbf{p}'(s)=\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}\left( -a\sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},a\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},b \right) $$

$$ \boldsymbol{\kappa}(s)=\mathbf{p}^{\prime\prime}(s)=\frac{1}{a^2+b^2}\left( -a\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},-a\sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},0 \right) $$

より、

$$ \kappa(s)=\|\boldsymbol{\kappa}(s)\|=\frac{|a|}{a^2+b^2} $$

となり、曲率は \( s \) に依らず一定である。

空間曲線の捩率の定義

空間の曲線の場合は曲がり具合だけでなく、ねじれ具合についても知る必要が出てきます。

その空間曲線のねじれ具合を表す量のことを捩率(れいりつ)といいます。

捩率を定義するために、 \( \kappa(s)>0 \) として \( \mathbf{e}’_2(s) \) を計算してみましょう。

フレネの標構 \( \{\mathbf{e}_1(s),\mathbf{e}_2(s),\mathbf{e}_3(s)\} \) は \( \mathbb{R}^3 \) の正規直交基底となるので、

$$ \begin{align} \mathbf{e}’_2(s)&=a^1(s)\mathbf{e}_1(s)+a^2(s)\mathbf{e}_2(s)+a^3(s)\mathbf{e}_3(s) \\ &=\sum_{i=1}^3a^i(s)\mathbf{e}_i(s) \ (=a^i(s)\mathbf{e}_i(s)と表す) \end{align} $$

この両辺と \( \mathbf{e}_i(s) \) との内積を計算すると、 \( \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)=\delta_{ij} \) より、

$$ \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}’_2(s)=a^i(s) $$

また、 \( \mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)=\delta_{ij} \) を \( s \) で微分すると、

$$ \mathbf{e}’_i(s)\cdot \mathbf{e}_j(s)+\mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}’_j(s)=0 $$

となるので、

$$ a^i(s)=\mathbf{e}_i(s)\cdot \mathbf{e}’_2(s)=-\mathbf{e}’_i(s)\cdot \mathbf{e}_2(s) $$

したがって、

$$ \mathbf{e}’_1(s)=\mathbf{p}^{\prime\prime}(s)=\boldsymbol{\kappa}(s) \tag{1} $$

から

$$ a^1(s)=-\mathbf{e}’_1(s)\cdot \mathbf{e}_2(s)=-\boldsymbol{\kappa}(s)\cdot \frac{\boldsymbol{\kappa}(s)}{\kappa(s)}=-\frac{\|\boldsymbol{\kappa}(s)\|^2}{\kappa(s)}=-\kappa(s) $$

$$ a^2(s)=\mathbf{e}_2(s)\cdot \mathbf{e}’_2(s)=\frac{1}{2}(\|\mathbf{e}_2(s)\|^2)’=0 $$

となるので、

$$ \mathbf{e}’_2(s)=-\kappa(s)\mathbf{e}_1(s)+a^3(s)\mathbf{e}_3(s) $$

となります。この \( a^3(s) \) のことを捩率と定義します。つまり、

定義2 (空間曲線の捩率)

$$ a^3(s)=\mathbf{e}_3(s)\cdot \mathbf{e}’_2(s)=-\mathbf{e}’_3(s)\cdot \mathbf{e}_2(s) $$

のことを捩率といい、 \( \tau(s) \) と表す。

これにより、

$$ \mathbf{e}’_2(s)=-\kappa(s)\mathbf{e}_1(s)+\tau(s)\mathbf{e}_3(s) \tag{2} $$

となります。

例2

例1と同じ螺旋の位置ベクトルを考える。

$$ \mathbf{p}(t)=(a\cos t,a\sin t,bt) \quad (a,b)\not=(0,0) $$

この空間曲線の捩率 \( \tau(s) \) を求める。

例1の計算より、

$$ \mathbf{e}_1(s)=\mathbf{p}'(s)=\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}\left( -a\sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},a\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},b \right) $$

$$ \mathbf{e}_2(s)=\frac{\boldsymbol{\kappa}(s)}{\kappa(s)}=\text{sgn}(a)\left( -\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},-\sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},0 \right) $$

であるので、

$$ \mathbf{e}_3(s)=\mathbf{e}_1(s)\times \mathbf{e}_2(s)=\frac{\text{sgn}(a)}{\sqrt{a^2+b^2}}\left( b\sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},-b\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},a \right) $$

$$ \mathbf{e}’_2(s)=\frac{\text{sgn}(a)}{\sqrt{a^2+b^2}}\left( \sin \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},-\cos \frac{s}{\sqrt{a^2+b^2}},0 \right) $$

より、

$$ \tau(s)=\mathbf{e}_3(s)\cdot \mathbf{e}’_2(s)=\frac{b}{a^2+b^2} $$

となり、捩率は \( s \) に依らず一定である。

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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