複素関数論14:孤立特異点の3つの分類

こんにちは、ひかりです。

今回は複素関数論から孤立特異点の3つの分類について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 孤立特異点の3つの分類について
  • 孤立特異点とその周囲での関数の挙動について
目次

孤立特異点の3つの分類

複素関数論13の記事にてローラン展開について紹介しました。

このローラン展開をもとに、 \( k \) 位の極というものを次で定めます。

定義1 ( \( k \) 位の極)

\( D\subset \mathbb{C} \) を領域、 \( a\in D \) として、 \( f:D\backslash\{a\}\to \mathbb{C} \) を \( D\backslash\{a\} \) 上正則とする。

また、 \( f \) のローラン展開を \( \displaystyle \sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n(z-a)^n \) とする。

このとき、 \( k\in\mathbb{N} \) に対して、 \( a \) が \( f \) の \( k \) 位の極であるとは次をみたすことをいう。

\[ c_{-k}\not=0, \quad c_{-(k+1)}=c_{-(k+2)}=\cdots=0 \]

また、除去可能特異点と真性特異点を次で定めます。

定義2 (除去可能特異点と真性特異点)

\( D\subset \mathbb{C} \) を領域、 \( a\in D \) として、 \( f:D\backslash\{a\}\to \mathbb{C} \) を \( D\backslash\{a\} \) 上正則とする。

また、 \( f \) のローラン展開を \( \displaystyle \sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n(z-a)^n \) とする。

このとき、 \( \displaystyle P(z,a)=\sum_{n=-\infty}^{-1}c_n(z-a)^n \) を \( f \) の主要部または特異部という。

(1) \( P(z,a)\equiv 0 \) となるとき、 \( z=a \) を \( f \) の除去可能特異点という。

(2) \( P(z,a) \) が真に無限項であるとき、 \( z=a \) を \( f \) の真性特異点という。

\( P(z,a)\not\equiv 0 \) が有限項のとき、 \( z=a \) は \( f \) の極となることに注意してください。

定義1と定義2と上の注意より、孤立特異点 \( z=a \) は極・除去可能特異点・真性特異点の3つに分類することができます。

例1

\( z=0 \) は \( f(z)=\frac{\tan z}{z} \) の除去可能特異点であることをみる。

\( f(z) \) の特異点 \( z=0 \) を中心とするローラン展開を求めると、

\[ f(z)=\frac{1}{z}\left( z+\frac{1}{3}z^3+\frac{2}{15}z^5+\cdots\right)=1+\frac{1}{3}z^2+\frac{2}{15}z^4+\cdots \]

となり、主要部がないので除去可能特異点となる。

孤立特異点とその周囲での関数の挙動

孤立特異点の3つの分類に応じて、関数がどのような挙動をしているのかを表した次のことが示せます。

定理1

\( z_0 \) を \( f \) の孤立特異点とする。

(1) (リーマンの除去可能特異点定理)

\[ z_0:f \ の除去可能特異点 \iff f \ が \ z_0 \ の近傍で有界 \]

(2) \( \displaystyle z_0:f \ の極 \iff \lim_{z\to z_0}f(z)=\infty \)

(3) (カゾラーティ・ワイエルシュトラスの定理)

\( z_0 \) が \( f \) の真性特異点である必要十分条件は任意の \( \alpha\in \mathbb{C}\cup\{\infty\} \) に対して、 \( \{z_n\}\subset \mathbb{C} \) が存在して、 \( \displaystyle \lim_{n\to \infty}z_n=z_0 \) ならば \( \displaystyle \lim_{n\to \infty}f(z_n)=\alpha \) が成り立つことである。

定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)

もう少しお待ちください。

例2

\( z=0 \) は以下の3つの例の孤立特異点である。

それらが除去可能特異点か極か真性特異点かを判定する。

(1) \( f(z)=e^{\frac{1}{z}} \) は \( \displaystyle \lim_{x\to +0}e^{\frac{1}{x}}=+\infty \) より除去可能特異点ではない。

また、 \( \displaystyle \lim_{x\to -0}e^{\frac{1}{x}}=0 \) より極でもない。

したがって、真性特異点である。

(2) \( f(z)=\frac{\sin z}{z} \) は \( \displaystyle \lim_{z\to 0}\frac{\sin z}{z}=1 \) であるので定理1(1)より除去可能特異点である。

(3) \( f(z)=\frac{1-z}{z^2} \) は

\[ \lim_{z\to 0}\left| \frac{1-z}{z^2}\right|=\lim_{z\to 0}\frac{1}{|z|^2}=\infty \]

よって、定理1(2)より極となる。

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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