複素関数論11:複素積分の定積分への応用

こんにちは、ひかりです。

今回は複素関数論から複素積分の定積分への応用について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 複素積分の定積分への応用について
目次

複素積分の定積分への応用

今回は複素積分の定積分への応用として、4つの定積分を複素積分を用いて解いてみましょう。

例1

\( \displaystyle \int_0^{\infty}\frac{dx}{1+x^4}=\frac{\sqrt{2}}{4}\pi \) を示す。

\( z\in\mathbb{C} \) に対して、 \( \frac{1}{1+z^4} \) を考えて \( R>0 \) に対して、下図の積分路 \( C_1:t \ (t:-R\to R) \) と \( C_2:Re^{i\theta} \ (\theta:0\to \pi) \) を考える。

\( R>2 \) に対して、複素関数論09の例1コーシーの積分定理より、

\[ \int_{C_1+C_2}\frac{dz}{1+z^4}=\frac{\sqrt{2}}{2}\pi \tag{1} \]

まず \( C_1 \) の積分を考えると、

\[ \begin{align} \int_{C_1}\frac{dz}{1+z^4}&=\int_{-R}^R\frac{dt}{1+t^4}=2\int_0^R\frac{dt}{1+t^4} \quad (偶関数より) \\ &\to 2\int_0^{\infty}\frac{dt}{1+t^4} \quad (R\to \infty) \end{align} \]

次に \( C_2 \) の積分を評価する。

\[ \begin{align} \left| \int_{C_2}\frac{dz}{1+z^4}\right|&=\left|\int_0^{\pi}\frac{1}{1+R^4e^{4i\theta}}(Re^{i\theta})’d\theta\right|≦\int_0^{\pi}\left|\frac{iRe^{i\theta}}{1+R^4e^{4i\theta}}\right|d\theta \\ &≦\int_0^{\pi}\frac{R}{|R^4e^{4i\theta}|-1}d\theta=\int_0^{\pi}\frac{R}{R^4-1}d\theta=\frac{\pi R}{R^4-1}\to 0 \ (R\to \infty) \end{align} \]

したがって、式(1)で \( R\to \infty \) とすると、

\[ 2\int_0^{\infty}\frac{dt}{1+t^4}=\frac{\sqrt{2}}{2}\pi \]

なので、

\[ \int_0^{\infty}\frac{dx}{1+x^4}=\frac{\sqrt{2}}{4}\pi \]

例2

\( \displaystyle \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{a+b\cos \theta}=\frac{2\pi}{\sqrt{a^2-b^2}} \ (a>b>0) \) を示す。

\( z=i\theta \) とおくと、

\[ \cos \theta=\frac{1}{2}(e^{i\theta}+e^{-i\theta})=\frac{1}{2}\left(z+\frac{1}{z}\right), \quad dz=ie^{i\theta}d\theta=izd\theta \]

より、

\[ \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{a+b\cos \theta}=\int_{\{|z|=1\}}\frac{1}{a+b\left( \frac{1}{2}\left( z+\frac{1}{z}\right)\right)}\frac{1}{iz}dz=\frac{2}{i}\int_{\{|z|=1\}}\frac{dz}{bz^2+2az+b} \]

となる。ここで、 \( bz^2+2az+b=0 \) となる \( z \) は

\[ \alpha_1=\frac{-a+\sqrt{a^2-b^2}}{b}, \quad \alpha_2=\frac{-a-\sqrt{a^2-b^2}}{b} \]

となるが、 \( \alpha_2<-1<\alpha_1<0 \) より、 \( \{|z|=1\} \) の内側で正則でない点は \( \alpha_1 \) のみである。

よって、コーシーの積分定理コーシーの積分公式より、

\[ \frac{2}{i}\int_{\{|z|=1\}}\frac{dz}{bz^2+2az+b}=\frac{2}{ib}\int_{\{|z|=1\}}\frac{\frac{1}{(z-\alpha_2)}}{z-\alpha_1}dz=\frac{2}{ib}\frac{2\pi i}{\alpha_1-\alpha_2}=\frac{2\pi}{\sqrt{a^2-b^2}} \]

したがって、

\[ \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{a+b\cos \theta}=\frac{2\pi}{\sqrt{a^2-b^2}} \]

例3

\( m\in\mathbb{N} \) に対して、 \( \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos(mx)}{1+x^2}dx=\pi e^{-m} \) を示す。

\( f(z)=\frac{e^{imz}}{1+z^2} \) を考えると、正則でない点は \( z=\pm i \) となる。

また、 \( R>1 \) に対して、下図の積分路 \( C_1:t \ (t:-R\to R) \) と \( C_2: Re^{i\theta} \ (\theta:0\to \pi) \) を考える。

すると、コーシーの積分公式より、

\[ \begin{align} \int_{C_1+C_2}\frac{e^{imz}}{1+z^2}dz&=\int_{C_1+C_2}\frac{\frac{e^{imz}}{z+i}}{z-i}dz=\frac{2\pi ie^{imi}}{i+i}=\pi e^{-m} \end{align} \tag{2} \]

まず \( C_1 \) の積分を考えると、

\[ \begin{align} \int_{C_1}\frac{e^{imz}}{1+z^2}dz&=\int_{-R}^R\frac{e^{imt}}{1+t^2}dt \\ &\to \int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{imt}}{1+t^2}dt=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos (mt)}{1+t^2}dt+i\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin (mt)}{1+t^2}dt \end{align} \]

次に \( C_2 \) の積分を評価する。

\[ \left|\int_{C_2}\frac{e^{imz}}{1+z^2}dz\right|=\left|\int_0^{\pi}\frac{e^{imRe^{i\theta}}}{1+R^2e^{2i\theta}}(Re^{i\theta})’d\theta\right|≦\int_0^{\pi}\frac{R|e^{imRe^{i\theta}}|}{R^2-1}d\theta \]

であり、

\[ |e^{imRe^{i\theta}}|=|e^{imR(\cos\theta+i\sin \theta)}|=|e^{-mR\sin \theta}|≦1 \]

より、

\[ \left|\int_{C_2}\frac{e^{imz}}{1+z^2}dz\right|≦\int_0^{\pi}\frac{R}{R^2-1}d\theta=\frac{\pi R}{R^2-1}\to 0 \quad (R\to \infty) \]

したがって、式(2)で \( R\to \infty \) とすると、

\[ \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos (mt)}{1+t^2}dt+i\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin (mt)}{1+t^2}dt=\pi e^{-m} \]

となるので、実部を比較すると、

\[ \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos(mx)}{1+x^2}dx=\pi e^{-m} \]

例4

\( \displaystyle \int_0^{\infty}\frac{\sin x}{x}dx=\frac{\pi}{2} \) を示す。

\( f(z)=\frac{e^{iz}}{z} \) を考えると、正則でない点は \( z=0 \) となる。

また、 \( R,\varepsilon>0 \) に対して、下図の積分路

\[ \begin{align} C_1& : Re^{i\theta} \ (\theta : 0\to \pi) \quad C_2 : t \ (t : -R\to -\varepsilon) \\ C_3& : \varepsilon e^{i\theta} \ (t : \pi \to 0) \quad C_4 : t \ (t : \varepsilon \to R) \end{align} \]

を考える。

\( \frac{e^{iz}}{z} \) は \( C_1+C_2+C_3+C_4 \) 内で正則であるので、コーシーの積分定理より、

\[ \int_{C_1+C_2+C_3+C_4}\frac{e^{iz}}{z}dz=0 \tag{3} \]

まず \( C_1 \) の積分を評価する。

$$ \begin{align*} \left|\int_{C_1}\frac{e^{iz}}{z}dz\right|&=\left| \int_0^{\pi}\frac{e^{-iRe^{i\theta}}}{Re^{i\theta}}iRe^{i\theta}d\theta\right|≦\int_0^{\pi}|e^{-iRe^{i\theta}}|d\theta \\ &=\int_0^{\pi}e^{-R\sin \theta}d\theta=2\int_0^{\frac{\pi}{2}}e^{-R\sin \theta}d\theta \quad (\sin \thetaの周期性) \\ &≦2\int_0^{\frac{\pi}{2}}e^{-R\left( \frac{2}{\pi}\theta\right)}d\theta \quad (0≦\theta≦2\piのとき\sin\theta≧\frac{2}{\pi}\theta) \\ &=\frac{\pi}{R}(1-e^{-R})\to 0 \quad (R\to \infty) \end{align*} $$

次に \( C_2+C_4 \) の積分を考えると、

$$ \begin{align*} \int_{C_2+C_4}\frac{e^{iz}}{z}dz&=\int_{-R}^{-\varepsilon}\frac{\cos x+i\sin x}{x}dx+\int_{\varepsilon}^R\frac{\cos x+i\sin x}{x}dx \\ &=2i\int_{\varepsilon}^R\frac{\sin x}{x}dx \quad (\frac{\cos x}{x}:奇関数、\frac{\sin x}{x}:偶関数) \end{align*} $$

最後に \( C_3 \) の積分を考えます。

\[ \int_{C_3}\frac{e^{iz}}{z}dz=\int_{C_3}\frac{1}{z}dz+\int_{C_3}\frac{e^{iz}-1}{z}dz \]

に分ける。すると、

\[ \int_{C_3}\frac{1}{z}dz=\int_{\pi}^0\frac{1}{\varepsilon e^{i\theta}}(\varepsilon e^{i\theta})’d\theta=-\pi i \]

となる。一方で、

$$ \begin{align*} |e^{iz}-1|&=\left|\left( 1+\frac{1}{1!}z+\frac{1}{2!}z^2+\cdots+\frac{1}{n!}z^n+\cdots\right)-1\right| \\ &=\left| \frac{1}{1!}z+\frac{1}{2!}z^2+\cdots+\frac{1}{n!}z^n+\cdots\right| \\ &=|z|\left| \frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}z+\cdots+\frac{1}{n!}z^{n-1}+\cdots\right| \\ &≦|z|\left( 1+\frac{1}{1!}|z|+\frac{1}{2!}|z|^2+\cdots+\frac{1}{n!}|z|^n+\cdots \right)≦|z|e^{|z|} \end{align*} $$

より、

\[ \left|\int_{C_3}\frac{e^{iz}-1}{z}dz\right|≦\left| \int_{\pi}^0\frac{|\varepsilon e^{i\theta}|e^{|\varepsilon e^{i\theta}|}}{|\varepsilon e^{i\theta}|}|i\varepsilon e^{i\theta}|d\theta\right|=\varepsilon e^{\varepsilon}\pi \to 0 \quad (\varepsilon \to 0) \]

以上により、式(3)で \( R\to \infty, \ \varepsilon \to 0 \) とすると、

\[ 2i\int_0^{\infty}\frac{\sin x}{x}dx-\pi i=0 \]

であるので、

\[ \int_0^{\infty}\frac{\sin x}{x}dx=\frac{\pi}{2} \]

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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