微分方程式01:求積法1(変数分離形・同次形)

こんにちは、ひかりです。

今回は微分方程式から求積法1(変数分離形・同次形)について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 微分方程式について
  • 変数分離形の微分方程式について
  • 同次形の微分方程式について
目次

微分方程式とは

微分方程式の例

未知関数の導関数を含む方程式のことを微分方程式といいます。

とくに、独立変数が1つの微分方程式を常微分方程式といい、2つ以上の微分方程式を偏微分方程式といいます。

また、微分方程式中に現れた最高階の導関数をこの微分方程式の階数といいます。

例1

(1) 常微分方程式の例を挙げる。

$$ 1階の常微分方程式: \ y'(x)=3x $$

$$ 2階の常微分方程式: \ y^{\prime\prime}(x)+y(x)=0 $$


(2) 偏微分方程式の例を挙げる。

$$ 1階の偏微分方程式: \ \frac{\partial}{\partial x}u(t,x)-xt=0 $$

$$ 2階の偏微分方程式: \ \frac{\partial^2}{\partial t^2}u(t,x)+\frac{\partial}{\partial x}u(t,x)=0 $$

これ以降このシリーズでは常微分方程式について解説していきます。

微分方程式は物理学をはじめ、さまざまな場所で利用されています。

例2

物体の質量を \( m \) 、時刻 \( t \) での位置を \( x(t) \) 、時刻 \( t \) の速度を \( v(t) \) とする。

このとき、 \( \frac{dx}{dt}(t) \) は速度 \( v \) であり、 \( \frac{dv}{dt}(t) \) は加速度 \( a \) である。

\( m \) が一定であるとき、次の運動方程式が成り立つ。

$$ ma=F \quad または \quad m\frac{d^2}{dt^2}x=F $$

ここで、重力のみの作用で物体を落下させることを考える。

重力の加速度を \( g \) とすると、運動方程式より次が成り立つ。

$$ m\frac{d^2}{dt^2}x=-mg \tag{1} $$

これは2階の微分方程式であり、式(1)の解は

$$ x(t)=-\frac{1}{2}gt^2+v_0t+x_0, \quad (x_0:初期位置, \ v_0:初速度) $$

例2のように、一般に1つの微分方程式に対して解は1つとは限りません。

( \( -\frac{1}{2}gt^2 \) , \( -\frac{1}{2}gt^2+2t \) , \( -\frac{1}{2}gt^2+3 \) はすべて式(1)の解になります)

これら1つ1つの解のことを微分方程式の特殊解といい、特殊解をまとめたものを一般解といいます。

(式(1)の一般解は \( -\frac{1}{2}gt^2+C_1t+C_2 \) になります。ただし、 \( C_1,C_2 \) は任意定数)

微分方程式の初期値問題

\( n \) 階微分方程式

$$ F(x,y(x),y'(x),\cdots,y^{(n)}(x))=0 $$

に対して、 \( x=a \) における \( n \) 個の条件

$$ y(a)=b_1, \ y'(a)=b_2, \ \cdots, \ y^{(n)}(a)=b_n, \quad (b_1,\cdots,b_n:定数) $$

をこの微分方程式の初期条件といい、初期条件をみたす解を求める問題を初期値問題といいます。

また、 \( b_1,\cdots,b_n \) をこの微分方程式の初期値といいます。

例3

(1) 次の初期値問題を考える。

$$ \begin{cases} y'(x)=2y(x) \\ y(0)=3 \end{cases} $$

一般解は \( y(x)=Ce^{2x} \) となる。

( \( y'(x)=2Ce^{2x}=2y(x) \) より)

この一般解に初期条件を代入すると、 \( Ce^0=3 \)

したがって、 \( C=3 \) より、 \( y(x)=3e^{2x} \) となる。


(2) 次の初期値問題を考える。

$$ \begin{cases} y^{\prime\prime}(x)-2y'(x)-3y(x)=0 \\ y(0)=3, \ y'(0)=5 \end{cases} $$

一般解は \( y(x)=C_1e^{-x}+C_2e^{3x} \) となる。

なぜなら、

$$ y'(x)=-C_1e^{-x}+3C_2e^{3x}, \quad y^{\prime\prime}(x)=C_1e^{-x}+9C_2e^{3x} $$

より、

$$ \begin{align} &y^{\prime\prime}(x)-2y'(x)-3y(x) \\ &=C_1e^{-x}+9C_2e^{3x}+2C_1e^{-x}-6C_2e^{3x}-3C_1e^{-x}-3C_2e^{3x}=0 \end{align} $$

となるからである。

この一般解に初期条件を代入すると、

$$ \begin{cases} C_1+C_2=3 \\ -C_1+3C_2=5 \end{cases} $$

したがって、 \( C_1=1, \ C_2=2 \) より、 \( y(x)=e^{-x}+2e^{3x} \) となる。

変数分離形の微分方程式

それではいよいよ具体的に微分方程式を解くことを考えてみましょう。

まずは変数分離形の微分方程式について考えてみましょう。

定義1 (変数分離形)

微分方程式が

$$ y’=f(x)g(y) $$

という形で表されるとき、変数分離形という。

ここで、 \( f(x) \) は既知の関数、 \( g(y) \) は既知関数 \( g \) に未知関数 \( y(x) \) を合成した関数である。

変数分離形の微分方程式を解いてみましょう。

まず、 \( g(y_0)=0 \) となる定数 \( y_0 \) が存在すれば、 \( y(x)\equiv y_0 \) (つまり \( y_0 \) の定数関数)が解となります。

(\( f(x)g(y_0)=f(x)\cdot 0=0=y’_0 \) より)

次に \( y\not=y_0 \) とすると、 \( \frac{dy}{dx}=f(x)g(y) \) より \( g(y)=0 \) でない限り、

$$ \frac{1}{g(y)}\frac{dy}{dx}=f(x) $$

となります。

したがって、両辺 \( x \) で積分すると、

$$ \int \frac{1}{g(y)}\frac{dy}{dx}dx=\int f(x)dx $$

つまり、

$$ \int \frac{1}{g(y)}dy=\int f(x)dx $$

これを \( y \) について解いたものが解となります。

定数関数でない解 \( y(x) \) に対して、ある \( x_0 \) で \( g(y(x_0))=0 \) となる可能性はあります。しかし、今後扱うことになる初期条件に対する解の一意性からこの可能性は起きないことがわかります。(上の定数関数が解となるので、解の一意性から定数関数でない解は存在しません)

解の中には一般解で表すことができない解があります。これを特異解といいます。特異解はこの解法では求められないため、変数分離形のすべての解がこの解法で求められるわけではありません。

例4

(1) 次の微分方程式を考える。

$$ y’=x(1+y^2) $$

まず、 \( g(y)=1+y^2 \) とおくと、 \( g(y_0)=0 \) となる定数 \( y_0 \) は存在しないことに注意する。

よって、

$$ \frac{1}{1+y^2}\frac{dy}{dx}=x $$

と変形でき、両辺 \( x \) で積分をすると、

$$ \int\frac{1}{1+y^2}dy=\int x dx $$

となる。

$$ \int\frac{1}{1+y^2}dy=\tan^{-1}y+C_1, \quad \int x dx=\frac{1}{2}x^2+C_2 $$

より、

$$ \tan^{-1}y=\frac{1}{2}x^2+C \quad (C:任意定数) $$

であるので、この微分方程式の一般解は

$$ y=\tan \left( \frac{1}{2}x^2+C \right) \quad (C:任意定数) $$


(2) 次の微分方程式を考える。

$$ y’=2xy(y-1) $$

まず、 \( g(y)=y(y-1) \) とおくと、定数 \( y_0=0,1 \) は \( g(y_0)=0 \) をみたすので、定数関数

$$ y\equiv 0, \quad y\equiv 1 $$

はこの微分方程式の解となる。

よって、 \( y\not=0,1 \) とすると、

$$ \frac{1}{y(y-1)}\frac{dy}{dx}=2x $$

と変形でき、両辺 \( x \) で積分をすると、

$$ \int\frac{1}{y(y-1)}dy=\int 2x dx $$

となる。

$$ \int\frac{1}{y(y-1)}dy=\int \left( \frac{1}{y-1}-\frac{1}{y}\right)dy=\log\left| \frac{y-1}{y} \right|+C_1 $$

$$ \int 2x dx=x^2+C_2 $$

より、

$$ \begin{align} &\log\left| \frac{y-1}{y} \right|=x^2+C_3 \quad (C_3:任意定数) \\ &\iff \left|\frac{y-1}{y}\right|=e^{x^2+C_3} \\ & \iff \frac{y-1}{y}=\pm e^{x^2+C_3}=Ce^{x^2} \quad (C=\pm e^{C_3}\not=0) \end{align} $$

であるので、これを \( y \) について解くと、

$$ y=\frac{1}{1-Ce^{x^2}} \quad (C\not=0:任意定数) $$

\( y\equiv 1 \) は解であったが、これは \( C=0 \) の場合に相当する。

よって、この微分方程式の一般解は

$$ y=\frac{1}{1-Ce^{x^2}} \ または \ y\equiv 0 \quad (C:任意定数) $$

同次形の微分方程式

次に、同次形の微分方程式について考えてみましょう。

定義2 (同次形)

微分方程式が

$$ y’=f\left( \frac{y}{x} \right) $$

という形で表されるとき、同次形という。

同次形の微分方程式を解いてみましょう。

\( z(t)=\frac{y(x)}{x} \) とおきます。

すると、 \( y(x)=xz(x) \) より、 \( y'(x)=z(x)+xz'(x) \) となります。

ここで、 \( y’=f(z) \) より、 \( z+xz’=f(z) \) となります。したがって、

$$ \frac{dz}{dx}=\frac{f(z)-z}{x} $$

これは変数分離形の微分方程式となるので、解くことができます。

例5

(1) 次の微分方程式を考える。

$$ y’=\frac{y}{x}+\frac{x}{y} $$

まず、 \( z=\frac{y}{x} \) とおくと、

$$ z+xz’=y’=z+\frac{1}{z} $$

よって、

$$ xz’=\frac{1}{z} $$

となり、これは変数分離形の微分方程式となる。

まず、 \( g(z)=\frac{1}{z} \) とおくと、 \( g(z_0)=0 \) となる定数 \( z_0 \) は存在しないことに注意する。

よって、

$$ z\frac{dz}{dx}=\frac{1}{x} $$

と変形でき、両辺 \( x \) で積分をすると、

$$ \int z dz=\int \frac{1}{x} dx $$

となる。

$$ \int z dz=\frac{1}{2}z^2+C_1, \quad \int \frac{1}{x} dx=\log |x|+C_2 $$

より、

$$ \begin{align} &\frac{1}{2}z^2=\log |x|+C_3 \quad (C_3:任意定数) \\ &\iff z^2=\log (x^2)+C \quad (C:任意定数) \end{align} $$

であるので、 \( z=\frac{y}{x} \) を戻すと、この微分方程式の一般解は

$$ y^2=x^2\{\log (x^2)+C\} \quad (C:任意定数) $$


(2) 次の微分方程式を考える。

$$ y’=\frac{2xy}{y^2-x^2} $$

これは

$$ y’=\frac{2\left(\frac{y}{x}\right)}{\left(\frac{y}{x}\right)^2-1} $$

と変形できるので、同次形の微分方程式である。

まず、 \( z=\frac{y}{x} \) とおくと、

$$ z+xz’=y’=\frac{2z}{z^2-1} $$

よって、

$$ xz’=\frac{2z}{z^2-1}-z=\frac{3z-z^3}{z^2-1} $$

となり、これは変数分離形の微分方程式となる。

まず、 \( g(z)=\frac{3z-z^3}{z^2-1} \) とおくと、定数 \( z_0=0,\pm\sqrt{3} \) は \( g(z_0)=0 \) をみたすので、定数関数

$$ z\equiv 0, \quad z\equiv \pm\sqrt{3} $$

すなわち

$$ y\equiv 0, \quad y=\pm \sqrt{3}x $$

はこの微分方程式の解となる。

よって、 \( z\not=0,\sqrt{3} \) とすると、

$$ \frac{z^2-1}{3z-z^3}\frac{dz}{dx}=\frac{1}{x} $$

と変形でき、両辺 \( x \) で積分をすると、

$$ \int\frac{z^2-1}{3z-z^3}dz=\int \frac{1}{x} dx $$

となる。

$$ \int\frac{z^2-1}{3z-z^3}dz=-\frac{1}{3}\int \frac{(3z-z^3)’}{3z-z^3}dz=-\frac{1}{3}\log|3z-z^3|+C_1 $$

$$ \int \frac{1}{x} dx=\log |x|+C_2 $$

より、

$$ \begin{align} &-\frac{1}{3}\log|3z-z^3|=\log|x|+C_3 \quad (C_3:任意定数) \\ &\iff \log|x^3(3z-z^3)|=-3C_3 \\ & \iff x^3(3z-z^3)=\pm e^{-3C_3} \end{align} $$

であるので、 \( z=\frac{y}{x} \) を戻すと、

$$ y(3x^2-y^2)=C \quad (C=\pm e^{-3C_3}\not=0) $$

\( y\equiv 0, \quad y=\pm \sqrt{3}x \) は解であったが、これは \( C=0 \) の場合に相当する。

よって、この微分方程式の一般解は

$$ y(3x^2-y^2)=C \quad (C:任意定数) $$

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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