線形代数学続論08:線形写像の表現行列

こんにちは、ひかりです。

今回は線形代数学続論から線形写像の表現行列について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 線形写像の表現行列について
  • 基底の取り換えと表現行列について
  • 線形写像の合成と表現行列の積について
目次

線形写像の表現行列

線形代数学続論02の記事で数ベクトル空間の間の線形写像に対して、行列との関係性を見ました。

それにより、線形写像 \( f:\mathbb{R}^n\to \mathbb{R}^m \) と \( m\times n \) 行列 \( A \) は1対1に対応することがわかりました。

ここでは、一般のベクトル空間の間の線形写像に対して、同様の結果が得られるのかを見ていきましょう。

線形写像の行列表示

\( V,W \) をベクトル空間として、 \( V \) の基底を \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) 、 \( W \) の基底を \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) とします。

このとき、線形写像 \( f:V\to W \) を考えると、基底の定義より、

$$ V=S[\mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n], \quad W=S[\mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m] $$

であるので、各 \( \mathbf{v}_j \) を \( f \) で移すと、

$$ f(\mathbf{v}_j)=a_{1j}\mathbf{w}_1+\cdots+a_{mj}\mathbf{w}_m \quad (a_{ij}\in K, \ 1≦j≦n) $$

よって、このスカラー

$$ a_{ij}\in K \quad (1≦i≦m, \ 1≦j≦n) $$

を並べた \( m\times n \) 行列

$$ A=\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \cdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} \end{pmatrix} $$

を考えると、

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & \cdots & f(\mathbf{v}_n) \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \displaystyle \sum_{i=1}^ma_{i1}\mathbf{w}_i & \cdots & \displaystyle \sum_{i=1}^ma_{in}\mathbf{w}_i \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} A \end{align} \tag{1} $$

したがって、任意の \( \mathbf{v}\in V \) をとると、

$$ \mathbf{v}=x_1\mathbf{v}_1+\cdots+x_n\mathbf{v}_n $$

と表されるので、

$$ \begin{align} f(\mathbf{v})&=f(x_1\mathbf{v}_1+\cdots+x_n\mathbf{v}_n) \\ &=x_1f(\mathbf{v}_1)+\cdots+x_nf(\mathbf{v}_n) \quad (fの線形性) \\ &=\begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & \cdots & f(\mathbf{v}_n) \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} \quad (式(1)より) \end{align} $$

一方で、

$$ \begin{align} f(\mathbf{v})&=y_1\mathbf{w}_1+\cdots+y_m\mathbf{w}_m \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} \begin{pmatrix} y_1 \\ \vdots \\ y_m \end{pmatrix} \end{align} $$

となるので、

$$ \begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} \begin{pmatrix} y_1 \\ \vdots \\ y_m \end{pmatrix} $$

したがって、 \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) は \( W \) の基底より、 \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) の1次結合の表し方は1通りであるので、

$$ A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} y_1 \\ \vdots \\ y_m \end{pmatrix} $$

ここまでをまとめると、

定理1 (線形写像の行列表示)

\( V,W \) をベクトル空間とし、線形写像 \( f:V\to W \) を考える。

また、 \( V \) の基底を \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) 、 \( W \) の基底を \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) とする。

このとき、

$$ f(\mathbf{v}_j)=a_{1j}\mathbf{w}_1+\cdots+a_{mj}\mathbf{w}_m \quad (a_{ij}\in K, \ 1≦j≦n) $$

によって、定まる \( m\times n \) 行列

$$ A=\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \cdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} \end{pmatrix} $$

を用いることにより、任意の \( V \) の元

$$ \mathbf{v}=x_1\mathbf{v}_1+\cdots+x_n\mathbf{v}_n $$

を \( f \) で移したものは

$$ f(\mathbf{v})=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} $$

と表される。

行列の線形写像での表示

今度は、 \( m\times n \) 行列 \( A \) を与えます。

また、 \( V,W \) をベクトル空間として、 \( V \) の基底を \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) 、 \( W \) の基底を \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) とします。

このとき、任意の \( V \) の元

$$ \mathbf{v}=x_1\mathbf{v}_1+\cdots+x_n\mathbf{v}_n=\begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \cdots & \mathbf{v}_n \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} $$

に対して、 \( f(\mathbf{v})\in W \) を次で定めます。

$$ f(\mathbf{v})=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix}A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} $$

すると、この写像 \( f:V\to W \) は線形写像となります。

なぜなら、任意の

$$ \mathbf{u}=x_1\mathbf{v}_1+\cdots+x_n\mathbf{v}_n\in V $$

$$ \mathbf{v}=y_1\mathbf{v}_1+\cdots+y_n\mathbf{v}_n\in V $$

とスカラー \( \alpha,\beta\in K \) に対して、

$$ \alpha\mathbf{u}+\beta\mathbf{v}=(\alpha x_1+\beta y_1)\mathbf{v}_1+\cdots+(\alpha x_n+\beta y_n)\mathbf{v}_n $$

であり、

$$ \begin{align} f(\alpha\mathbf{u}+\beta\mathbf{v})&=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix}A\begin{pmatrix} \alpha x_1+\beta y_1 \\ \vdots \\ \alpha x_n+\beta y_n \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix}A \left\{ \alpha\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix}+\beta\begin{pmatrix} y_1 \\ \vdots \\ y_n \end{pmatrix} \right\} \\ &=\alpha\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix}A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix}+\beta\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix}A\begin{pmatrix} y_1 \\ \vdots \\ y_n \end{pmatrix} \\ &=\alpha f(\mathbf{u})+\beta f(\mathbf{v}) \end{align} $$

となるからです。ここまでをまとめると、

定理2 (行列の線形写像での表示)

\( V,W \) をベクトル空間とし、 \( m\times n \) 行列 \( A \) を考える。

また、 \( V \) の基底を \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) 、 \( W \) の基底を \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) とする。

このとき、任意の \( V \) の元

$$ \mathbf{v}=x_1\mathbf{v}_1+\cdots+x_n\mathbf{v}_n=\begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \cdots & \mathbf{v}_n \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} $$

に対して、 \( f(\mathbf{v})\in W \) を

$$ f(\mathbf{v})=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix}A\begin{pmatrix} x_1 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} $$

で定めると、 \( f:V\to W \) は線形写像となる。

定理1と定理2より、次が成り立ちます。

定理3 (線形写像の表現行列)

\( V,W \) をベクトル空間とし、 \( V \) の基底 \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) と \( W \) の基底を \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) を固定する。

このとき、次の2つの集合の間に全単射が存在する。

$$ \{ f \ | \ f:V\to W は線形写像\} \to \{ A \ | \ Aはm\times n行列 \} $$

よって、1つ与えた \( f:V\to W \) に対して \( m\times n \) 行列 \( A \) が1つ定まるので、この行列 \( A \) のことを \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) と \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) に関する表現行列という。

例1

線形写像 \( f:\mathbb{R}^3\to \mathbb{R}^3 \) を次で定める。

$$ \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} \mapsto \begin{pmatrix} 2x+y-3z \\ x-y+z \\ -x+2y+5z \end{pmatrix} $$

このとき、基底

$$ \mathbf{v}_1=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_2=\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_3=\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix} $$

に関する表現行列 \( A \) を求める。

まず、各 \( \mathbf{v}_j \) を \( f \) で移したものは

$$ f(\mathbf{v}_j)=a_{1j}\mathbf{v}_1+a_{2j}\mathbf{v}_2+a_{3j}\mathbf{v}_3 $$

となるので、行列 \( A \) を

$$ A=\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} $$

とおくと、

$$ \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & f(\mathbf{v}_2) & f(\mathbf{v}_3) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \mathbf{v}_2 & \mathbf{v}_3 \end{pmatrix} A $$

ここで、 \( \mathbb{R}^3 \) の標準基底を

$$ \mathbf{e}_1=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{e}_2=\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{e}_3=\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} $$

とおくと、各 \( \mathbf{v}_i \) は

$$ \mathbf{v}_1=\mathbf{e}_1, \quad \mathbf{v}_2=\mathbf{e}_1+\mathbf{e}_2, \quad \mathbf{v}_3=\mathbf{e}_1+\mathbf{e}_2+\mathbf{e}_3 $$

となるので、

$$ \begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \mathbf{v}_2 & \mathbf{v}_3 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix}P $$

ここで、

$$ P=\begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} $$

さらに、各 \( \mathbf{e}_i \) を \( f \) で移したものは

$$ f(\mathbf{e}_1)=\begin{pmatrix} 2 \\ 1 \\ -1 \end{pmatrix}=2\mathbf{e}_1+\mathbf{e}_2-\mathbf{e}_3 $$

$$ f(\mathbf{e}_2)=\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \\ 2 \end{pmatrix}=\mathbf{e}_1-\mathbf{e}_2+2\mathbf{e}_3 $$

$$ f(\mathbf{e}_3)=\begin{pmatrix} -3 \\ 1 \\ 5 \end{pmatrix}=-3\mathbf{e}_1+\mathbf{e}_2+5\mathbf{e}_3 $$

であるので、

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} f(\mathbf{e}_1) & f(\mathbf{e}_2) & f(\mathbf{e}_3) \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & 1 & -3 \\ 1 & -1 & 1 \\ -1 & 2 & 5 \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix}B \end{align} $$

ここで、

$$ B=\begin{pmatrix} 2 & 1 & -3 \\ 1 & -1 & 1 \\ -1 & 2 & 5 \end{pmatrix} $$

したがって、これらをまとめると、

$$ \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & f(\mathbf{v}_2) & f(\mathbf{v}_3) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \mathbf{v}_2 & \mathbf{v}_3 \end{pmatrix} A=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix} PA $$

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & f(\mathbf{v}_2) & f(\mathbf{v}_3) \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} f(\mathbf{e}_1) & f(\mathbf{e}_1)+f(\mathbf{e}_2) & f(\mathbf{e}_1)+f(\mathbf{e}_2)+f(\mathbf{e}_3) \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} f(\mathbf{e}_1) & f(\mathbf{e}_2) & f(\mathbf{e}_3) \end{pmatrix}P \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix} BP \end{align} $$

となるので、

$$ \begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix} PA=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3 \end{pmatrix} BP $$

\( \mathbf{e}_1,\mathbf{e}_2,\mathbf{e}_3 \) は標準基底なので、 \( PA=BP \) である。

したがって、

$$ A=P^{-1}BP=\begin{pmatrix} 1 & 3 & -1 \\ 2 & -1 & -5 \\ -1 & 1 & 6 \end{pmatrix} $$

基底の取り換えと表現行列

ベクトル空間の基底はさまざまな取り方がありました。

そのため、基底のとり方によって表現行列がどのように変わっていくのかを見ていきましょう。

\( V,W \) をベクトル空間として、 \( V \) の2つの基底を \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) と \( \mathbf{v}’_1,\cdots,\mathbf{v}’_n \) 、 \( W \) の2つの基底を \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) と \( \mathbf{w}’_1,\cdots,\mathbf{w}’_m \) とします。

このとき、各 \( \mathbf{v}’_j,\mathbf{w}’_j \) は

$$ \mathbf{v}’_j=p_{1j}\mathbf{v}_1+\cdots+p_{nj}\mathbf{v}_n \quad (p_{ij}\in K, \ 1≦j≦n) $$

$$ \mathbf{w}’_j=q_{1j}\mathbf{w}_1+\cdots+q_{mj}\mathbf{w}_m \quad (q_{ij}\in K, \ 1≦j≦m) $$

となるので、

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} \mathbf{v}’_1 & \cdots & \mathbf{v}’_n\end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \displaystyle \sum_{i=1}^np_{i1}\mathbf{v}_i & \cdots & \displaystyle \sum_{i=1}^np_{in}\mathbf{v}_i \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \cdots & \mathbf{v}_n \end{pmatrix} P \end{align} $$

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} \mathbf{w}’_1 & \cdots & \mathbf{w}’_m \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \displaystyle \sum_{i=1}^mq_{i1}\mathbf{w}_i & \cdots & \displaystyle \sum_{i=1}^mq_{in}\mathbf{w}_i \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} Q \end{align} $$

ここで、

$$ P=\begin{pmatrix} p_{11} & p_{12} & \cdots & p_{1n} \\ p_{21} & p_{22} & \cdots & p_{2n} \\ \vdots & \cdots & \ddots & \vdots \\ p_{n1} & p_{n2} & \cdots & p_{nn} \end{pmatrix}, \quad Q=\begin{pmatrix} q_{11} & q_{12} & \cdots & q_{1m} \\ q_{21} & q_{22} & \cdots & q_{2m} \\ \vdots & \cdots & \ddots & \vdots \\ q_{m1} & q_{m2} & \cdots & q_{mm} \end{pmatrix} $$

すると、2つの基底の間の表現行列の間に次が成り立ちます。

定理4

\( V,W \) をベクトル空間として、線形写像 \( f:V\to W \) を考える。

\( f \) の \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) と \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) に関する表現行列を \( A \) 、 \( f \) の \( \mathbf{v}’_1,\cdots,\mathbf{v}’_n \) と \( \mathbf{w}’_1,\cdots,\mathbf{w}’_m \) に関する表現行列を \( B \) とするとき、次が成り立つ。

$$ B=Q^{-1}AP $$

定理4の証明(気になる方だけクリックしてください)

\( A \) は \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_n \) と \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) に関する表現行列であるので、

$$ \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & \cdots & f(\mathbf{v}_n) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} A $$

よって、これを定理の前の計算と合わせると、

$$ \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}’_1) & \cdots & f(\mathbf{v}’_n) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{w}’_1 & \cdots & \mathbf{w}’_m \end{pmatrix} B=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} QB $$

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} f(\mathbf{v}’_1) & \cdots & f(\mathbf{v}’_n) \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} \displaystyle \sum_{i=1}^np_{i1}f(\mathbf{v}_i) & \cdots & \displaystyle \sum_{i=1}^np_{in}f(\mathbf{v}_i) \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} f(\mathbf{v}_1) & \cdots & f(\mathbf{v}_n) \end{pmatrix} P \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} AP \end{align} $$

したがって、

$$ \begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} AP=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_m \end{pmatrix} QB $$

よって、 \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_m \) は \( W \) の基底なので、 \( AP=QB \)

したがって、 \( B=Q^{-1}AP \)

例2

線形写像 \( f:\mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2 \) を次で定める。

$$ \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \mapsto \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & -2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} $$

このとき、基底

$$ \mathbf{v}_1=\begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_2=\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix} $$

に関する表現行列 \( B \) を求める。

まず、標準基底

$$ \mathbf{e}_1=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{e}_2=\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} $$

に関する表現行列 \( A \) は

$$ \begin{align} \begin{pmatrix} f(\mathbf{e}_1) & f(\mathbf{e}_2) \end{pmatrix}&=\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & -2 \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & -2 \end{pmatrix} \end{align} $$

より、 \( A=\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & -2 \end{pmatrix} \) である。

また、 \( \mathbf{v}_1,\mathbf{v}_2 \) を \( \mathbf{e}_1,\mathbf{e}_2 \) で表すと、

$$ \begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \mathbf{v}_2 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1& -2 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 \end{pmatrix}P $$

ここで、

$$ P=\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1& -2 \end{pmatrix} $$

\( f \) の定義域 \( \mathbb{R}^2 \) と終域 \( \mathbb{R}^2 \) では同じ基底を考えているので、定理4における \( Q \) も \( P \) と同じである。

したがって、表現行列 \( B \) は定理4より、

$$ B=P^{-1}AP=\begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & -3 \end{pmatrix} $$

線形写像の合成と表現行列の積

2つの線形写像の表現行列からその合成写像の表現行列を与えることができることを見ていきましょう。

定理5 (線形写像の合成と表現行列の積)

\( U,V,W \) をベクトル空間として、それぞれの基底を \( \mathbf{u}_1,\cdots,\mathbf{u}_n \)、 \( \mathbf{v}_1,\cdots,\mathbf{v}_m \) 、 \( \mathbf{w}_1,\cdots,\mathbf{w}_{\ell} \) とする。

また、線形写像 \( f:U\to V, \ g:V\to W \) のこの基底に関する表現行列をそれぞれ \( A,B \) とする。

このとき、合成写像 \( g\circ f:U \to W \) のこの基底に関する表現行列は積 \( BA \) となる。

定理5の証明(気になる方だけクリックしてください)

まず、 \( f,g \) の表現行列が \( A,B \) であるので、

$$ \begin{pmatrix} f(\mathbf{u}_1) & \cdots & f(\mathbf{u}_n) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{v}_1 & \cdots & \mathbf{v}_m \end{pmatrix} A $$

$$ \begin{pmatrix} g(\mathbf{v}_1) & \cdots & g(\mathbf{v}_m) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_{\ell} \end{pmatrix} B $$

ここで、 \( g\circ f \) の表現行列を \( C \) とおくと、

$$ \begin{pmatrix} (g\circ f)(\mathbf{u}_1) & \cdots & (g\circ f)(\mathbf{u}_n) \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mathbf{w}_1 & \cdots & \mathbf{w}_{\ell} \end{pmatrix} C $$

よって、各 \( (g\circ f)(\mathbf{u}_j) \) を計算してみると、

$$ \begin{align} (g\circ f)(\mathbf{u}_j)&=g(f(\mathbf{u}_j))=g\left( \sum_{i=1}^ma_{ij}\mathbf{v}_i \right) \quad (fの表現行列はAであるので) \\ &=\sum_{i=1}^ma_{ij}g(\mathbf{v}_i) \quad (gの線形性より) \\ &=\sum_{i=1}^ma_{ij}\left( \sum_{k=1}^{\ell}b_{ki}\mathbf{w}_k \right) \quad (gの表現行列はBであるので) \\ &=\sum_{k=1}^{\ell}\left( \sum_{i=1}^mb_{ki}a_{ij} \right) \mathbf{w}_k \end{align} $$

一方で

$$ (g\circ f)(\mathbf{u}_j)=\sum_{k=1}^{\ell}c_{kj}\mathbf{w}_k $$

であるので、

$$ \sum_{k=1}^{\ell}c_{kj}\mathbf{w}_k=\sum_{k=1}^{\ell}\left( \sum_{i=1}^mb_{ki}a_{ij} \right) \mathbf{w}_k $$

ここで、 \( \mathbf{w}_1,\cdots\mathbf{w}_{\ell} \) は基底であるので、

$$ c_{kj}=\sum_{i=1}^mb_{ki}a_{ij} \quad (1≦k≦\ell, \ 1≦j≦n) $$

右辺は行列の積 \( BA \) の \( (k,j) \) 成分となるため、 \( C=BA \)

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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