複素関数論15:留数定理

こんにちは、ひかりです。

今回は複素関数論から留数定理について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 留数と留数定理について
  • 留数の求め方と計算例について
目次

留数と留数定理

\( z=a \) を \( f(z) \) の孤立特異点とすると、 \( a \) を中心とするローラン展開は次のようになりました。

\[ f(z)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n(z-a)^n \]

このとき、点 \( a \) を内部に含む単純閉曲線を \( C \) とすれば、 \( \displaystyle \int_C f(z)dz \) は次のようになります。

\[ \int_Cf(z)dz=\int_C\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n(z-a)^ndz=\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n \int_C(z-a)^ndz=2\pi ic_{-1} \]

ここで、最後の等号は複素関数論07の定理2を用いています。

(無限級数と積分の交換が気になる方向けにいうと、ローラン展開は広義一様収束であるので交換可能です)

つまり、 \( \displaystyle \int_C f(z)dz \) を計算すると、ローラン展開の係数のうち \( c_{-1} \) の項のみ現れます。

これをもとに、留数を次で定めます。

定義1 (留数)

点 \( a \) を関数 \( f(z) \) の孤立特異点とする。

そして、点 \( a \) を内部に含む単純閉曲線 \( C \) を考えて、 \( C \) の内部では \( f(z) \) は点 \( a \) 以外で正則であるとする。

このとき、 \( \displaystyle \frac{1}{2\pi i}\int_Cf(z)dz \) を \( f(z) \) の点 \( a \) における留数といい、 \( \text{Res} \ (f,a) \) などと表す。

上の議論により、留数が複素積分と深い関わりがあることがわかります。つまり、

\[ \text{Res} \ (f,a)=\frac{1}{2\pi i}\int_Cf(z)dz=c_{-1} \]

もう少し一般的に次の留数定理という定理が成り立ちます。

定理1 (留数定理)

\( f(z) \) は単純閉曲線 \( C \) の内部に有限個の孤立特異点 \( a_1,\cdots,a_m \) をもつとする。

そして、 \( C \) の内部では \( f(z) \) が \( a_1,\cdots,a_m \) 以外で正則であるとする。

このとき、次が成り立つ。

\[ \int_Cf(z)dz=2\pi i\sum_{j=1}^m\text{Res} \ (f,a_j) \]

定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)

もう少しお待ちください。

留数の求め方と計算例

留数を用いることにより、複素積分を求めることができることを見ました。

では、その留数をどのように求めるのかを見ていきましょう。

定理2

点 \( a \) が関数 \( f(z) \) の1位の極であれば、次が成り立つ。

\[ \text{Res} \ (f,a)=\lim_{z\to a}(z-a)f(z) \]

また、点 \( a \) が関数 \( f(z) \) の \( k \) 位の極であれば、次が成り立つ。

\[ \text{Res} \ (f,a)=\frac{1}{(k-1)!}\lim_{z\to a}\frac{d^{k-1}}{dz^{k-1}}\{(z-a)^kf(z)\} \]

定理2の証明(気になる方だけクリックしてください)

もう少しお待ちください。

定理2はあくまで極に関する留数の求め方であり、極以外の孤立特異点には使えないことに注意してください。

例1

(1) \( f(z)=\frac{1}{(z-a)^5} \) の \( z=a \) における留数を求める。

\( z=a \) は5位の極であるので、定理2より、

\[ \text{Res} \ (f,a)=\frac{1}{4!}\lim_{z\to a}\frac{d^4}{dz^4}\left\{ (z-a)^5\frac{1}{(z-a)^5} \right\}=0 \]

(2) \( f(z)=\frac{z}{(z-2)(z-1)^3} \) の \( z=1,2 \) における留数を求める。

\( z=1 \) は3位の極、 \( z=2 \) は1位の極であるので、定理2より、

\[ \begin{align*} \text{Res} \ (f,1)&=\frac{1}{2!}\lim_{z\to1}\frac{d^2}{dz^2}\left\{ (z-1)^3\frac{z}{(z-2)(z-1)^3}\right\}=\frac{1}{2}\lim_{z\to 1}\frac{d^2}{dz^2}\left( \frac{z}{z-2}\right) \\ &=\frac{1}{2}\lim_{z\to1}\left( \frac{4}{(z-2)^3} \right)=-2 \end{align*} \]

\[ \text{Res} \ (f,2)=\lim_{z\to 2}\left\{ (z-2)\frac{z}{(z-2)(z-1)^3} \right\}=\lim_{z\to2}\frac{z}{(z-1)^3}=2 \]

(3) \( f(z)=ze^{\frac{i}{z}} \) の \( z=0 \) における留数を求める。

\( z=0 \) を中心とする \( f(z) \) のローラン展開は

\[ f(z)=z\left\{ 1+\frac{i}{z}+\frac{1}{2!}\left( \frac{i}{z}\right)^2+\frac{1}{3!}\left( \frac{i}{z} \right)^3+\cdots \right\}=z+i-\frac{1}{2!z}-\frac{i}{3!z^2}+\cdots \]

したがって、 \( z=0 \) は \( f(z) \) の真性特異点であって、 \( \frac{1}{z} \) の係数が求めるべき留数なので、

\[ \text{Res} \ (f,0)=-\frac{1}{2!}=-\frac{1}{2} \]

今回までで複素関数論の内容について標準的なところまで含めて一通り紹介しました。お疲れ様でした。

それでは、またどこかの記事でお会いしましょう。ひかりでした。

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