こんにちは、ひかりです。
今回は複素関数論から複素関数の微分可能性と正則関数について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 複素関数の微分可能性と正則関数について
複素関数の微分可能性と正則関数
複素関数論02の記事では複素関数の連続性について紹介しました。
今回は、複素関数の微分可能性について見ていきましょう。
まず、実関数と同様にして微分可能性について次のように定義します。
開集合 \( D\subset \mathbb{C} \) 上の複素関数 \( f:D\to \mathbb{C} \) と \( z_0\in D \) に対して、極限値
$$ \lim_{z\to z_0}\frac{f(z)-f(z_0)}{z-z_0} $$
が定めるとき、 \( w=f(z) \) は点 \( z=z_0 \) で微分可能であるといい、この極限値を
$$ f'(z_0) \ または \ \frac{df}{dz}(z_0) $$
と表して、 \( z=z_0 \) における \( w=f(z) \) の微分係数という。
これをもとに正則関数を定義します。
複素関数 \( w=f(z) \) が開集合 \( D \) 内のすべての点で微分可能であるとき、関数 \( w=f(z) \) は開集合 \( D \) 上で正則であるといい、 \( w=f(z) \) は正則関数であるという。
このとき、 \( D \) 内の \( f'(z) \) は \( z \) の関数とみなすことができる。
これを \( f(z) \) の導関数といい、 \( f'(z), \ \frac{df}{dx} \) などと表す。
特に、複素平面全体で正則な関数を整関数という。
正則関数には次のとても強い性質が成り立ちます。
\( D\subset \mathbb{C} \) を開集合として、 \( f:D\to \mathbb{C} \) とする。このとき、
$$ f \ が \ D \ 上正則 \ \Rightarrow \ f \ は \ D \ 上無限回微分可能 $$
(1) 次の複素関数を考える。
$$ f(z)=z^n \quad (n=1,2,\cdots) $$
これは任意の \( z_0\in \mathbb{C} \) に対して、
$$ z^n-z_0^n=(z-z_0)(z^{n-1}+z^{n-2}z_0+\cdots+zz_0^{n-2}+z_0^{n-1}) $$
であるので、
$$ \begin{align} f'(z_0)&=\lim_{z\to z_0}\frac{f(z)-f(z_0)}{z-z_0}=\lim_{z\to z_0}\frac{z^n-z_0^n}{z-z_0} \\ &=\lim_{z\to z_0}(z^{n-1}+z^{n-2}z_0+\cdots+zz_0^{n-2}+z_0^{n-1})=nz_0^{n-1} \end{align} $$
\( z_0 \) は任意の点なので \( f(z)=z^n \) は複素平面上のすべての点で微分可能であり、その導関数は \( f'(z)=nz^{n-1} \) である。
(2) 次の複素関数を考える。
$$ g(z)=\frac{1}{z^n} \quad (n=1,2,\cdots) $$
これは任意の \( z_0\in \mathbb{C}\backslash\{0\} \) に対して、
$$ z^n-z_0^n=(z-z_0)(z^{n-1}+z^{n-2}z_0+\cdots+zz_0^{n-2}+z_0^{n-1}) $$
であるので、
$$ \begin{align} g'(z_0)&=\lim_{z\to z_0}\frac{g(z)-g(z_0)}{z-z_0}=\lim_{z\to z_0}\frac{1}{z-z_0}\left( \frac{1}{z^n}-\frac{1}{z_0^n}\right)=\lim_{z\to z_0}\frac{1}{z-z_0}\frac{-(z^n-z_0^n)}{z^nz_0^n} \\ &=\lim_{z\to z_0}\frac{-(z^{n-1}+z^{n-2}z_0+\cdots+z_0^{n-1})}{z^nz_0^n}=\frac{-nz_0^{n-1}}{z_0^{2n}}=-\frac{n}{z_0^{n+1}} \end{align} $$
\( z_0 \) は0を除く任意の点なので \( g(z)=\frac{1}{z^n} \) は \( z=0 \) を除く複素平面上のすべての点で微分可能であり、その導関数は \( g'(z)=-\frac{n}{z^{n+1}} \) である。
微分可能性について実関数と同様の性質が成り立ちます。
開集合 \( D\subset \mathbb{C} \)、複素関数 \( f:D\to\mathbb{C} \)、 \( z_0\in D \) に対して次が成り立つ。
$$ f \ は \ z_0 \ で微分可能 \ \Rightarrow \ f \ は \ z_0 \ で連続 $$
特に、関数 \( f \) が \( D \) 上で正則ならば、 \( f \) は \( D \) 上で連続である。
複素関数 \( f(z),g(z) \) が開集合 \( D\subset \mathbb{C} \) 上で正則であるとき、次が成り立つ。
(1) \( c_1,c_2 \) を任意の複素数とすると、 \( c_1f(z)\pm c_2g(z) \) も \( D \) 上で正則であり、
$$ (c_1f(z)\pm c_2g(z))’=c_1f'(z)\pm c_2g'(z) \quad (複号同順) $$
(2) \( f(z)g(z) \) も \( D \) 上で正則であり、
$$ (f(z)g(z))’=f'(z)g(z)+f(z)g'(z) $$
(3) \( D \) 上で \( g(z)\not=0 \) ならば、 \( \frac{f(z)}{g(z)} \) も正則であり、
$$ \left( \frac{f(z)}{g(z)} \right)’=\frac{f'(z)g(z)-f(z)g'(z)}{\{g(z)\}^2} $$
複素関数 \( f(z)\) は開集合 \( D \) 上で正則であり、複素関数 \( g(w) \) は開集合 \( E \) 上で正則であるとする。
このとき、 \( f(D)\subset E \) ならば、合成関数 \( h(z)=g(f(z)) \) は \( D \) 上で正則であり、
$$ \frac{dh}{dz}(z)=\frac{dg}{dw}(f(z))\frac{df}{dz}(z) \quad (z\in D) $$
が成り立つ。
(1) 次の複素関数の導関数を求める。
$$ f(z)=(z^2+iz+3)^2 $$
定理3(1)、定理4、例1(1)より、
$$ f'(z)=2(z^2+iz+3)(z^2+iz+3)’=2(z^2+iz+3)(2z+i) $$
(2) \( z=x+iy \) とするとき、次の複素関数の微分可能性を調べる。
$$ f(z)=x^2+iy^2 \quad (x\not=y) $$
まず、
$$ \Delta z=\Delta x+i\Delta y, \quad \Delta w=f(z+\Delta z)-f(z) $$
とすると、
$$ \begin{align} \frac{\Delta w}{\Delta z}&=\frac{(x+\Delta x)^2+i(y+\Delta y)^2-(x^2+iy^2)}{\Delta x+i\Delta y} \\ &=\frac{2x\Delta x+\Delta x^2+i(2y\Delta y+\Delta y^2)}{\Delta x+i\Delta y} \end{align} $$
\( z+\Delta z \) が実軸に平行な直線に沿って点 \( z \) に近づくとき、 \( \Delta y=0 \) なので、
$$ \frac{\Delta w}{\Delta z}=\frac{2x\Delta x+\Delta x^2}{\Delta x}=2x+\Delta x \to 2x \quad (\Delta x\to0, \Delta y=0) $$
また、 \( z+\Delta z \) が虚軸に平行な直線に沿って点 \( z \) に近づくとき、 \( \Delta x=0 \) なので、
$$ \frac{\Delta w}{\Delta z}=\frac{i(2y\Delta y+\Delta y^2)}{i\Delta y}=2y+\Delta y \to 2y \quad (\Delta y\to0, \Delta x=0) $$
したがって、 \( x\not=y \) に注意すると、 \( \displaystyle \lim_{\Delta z\to0}\frac{\Delta w}{\Delta z} \) はただ一つに定まらないことがわかる。
よって、この関数は微分可能ではない。
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。