こんにちは、ひかりです。
今回は複素関数論から複素関数の連続性について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 複素数列の収束について
- 複素平面の位相について
- 複素関数の連続性について
複素数列の収束
\( z,w\in\mathbb{C} \) に対して \( d(z,w)=|z-w| \) とおくと、 \( d \) は \( \mathbb{C} \) 上の距離となります。
つまり、次のことが成り立ちます。
$$ d(z,w)≧0 \quad (z,w\in\mathbb{C}) $$
$$ d(z,w)=0 \ \iff \ z=w \quad (z,w\in\mathbb{C}) $$
$$ d(z,w)=d(w,z) \quad (z,w\in\mathbb{C}) $$
$$ d(z,w)≦d(z,\eta)+d(\eta,w) \quad (z,w,\eta\in\mathbb{C}) $$
これをもとに、複素数列の収束を次のように定義します。
複素数列 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty}\subset \mathbb{C} \) に対して、ある複素数 \( z\in\mathbb{C} \) が存在して、
$$ \lim_{n\to\infty}d(z_n,z)=0 $$
となるとき、 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty} \) は \( z \) に収束するといい、
$$ \lim_{n\to\infty}z_n=z \ または \ z_n\to z \ (n\to\infty) $$
と表す。また、複素数列 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty}\subset \mathbb{C} \) が収束しないとき、 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty} \) は発散するという。
複素数列の収束を実部と虚部の収束に分けることを考えます。
まず、準備として次を示します。
\( z\in\mathbb{C} \) に対して、次が成り立つ。
(1) \( |\text{Re}z|≦|z|, \ |\text{Im}z|≦|z| \)
(2) \( |z|≦|\text{Re}z|+|\text{Im}z| \)
定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)
(1) \( z=a+ib\in\mathbb{C} \) とすると、
\[ |z|=\sqrt{a^2+b^2}≧\sqrt{a^2}=|a|=|\text{Re}z| \]
\( \text{Im}z \) も同様に示せます。
(2) \( z=a+ib\in\mathbb{C} \) とすると、
\[ |z|^2=a^2+b^2≦(|a|+|b|)^2=(|\text{Re}z|+|\text{Im}z|)^2 \]
よって、 \( |z|,|\text{Re}z|,|\text{Im}z|≧0 \) より(2)が成り立ちます。
これを用いて次を示すことができます。
複素数列 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty}\subset \mathbb{C} \) に対して、
$$ z_n=x_n+iy_n, \quad z=x+iy $$
とおくと、次が成り立つ。
$$ \lim_{n\to\infty}z_n=z \ \iff \ \lim_{n\to\infty}x_n=x \ かつ \ \lim_{n\to\infty}y_n=y $$
定理2の証明(気になる方だけクリックしてください)
(\(\Rightarrow\)) 定理1の(1)より、
\[ 0≦|x_n-x|≦|z_n-z|\to 0 \quad (n\to\infty) \]
\[ 0≦|y_n-y|≦|z_n-z|\to 0 \quad (n\to\infty) \]
したがって、
\[ \lim_{n\to\infty}x_n=x \ かつ \ \lim_{n\to\infty}y_n=y \]
(\(\Leftarrow\)) 定理1の(2)より、
\[ 0≦|z_n-z|≦|x_n-x|+|y_n-y|\to 0 \qquad (n\to\infty) \]
したがって、
\[ \lim_{n\to\infty}z_n=z \]
最後に実数列の収束と同様に成り立つ性質について紹介しておきます。
複素数列 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty},\{w_n\}_{n=1}^{\infty}\subset \mathbb{C} \) に対して、
$$ z=\lim_{n\to\infty}z_n, \quad w=\lim_{n\to\infty}w_n $$
とする。このとき、次が成り立つ。
(1) \( \displaystyle \lim_{n\to\infty}(z_n+w_n)=z+w \)
(2) \( \displaystyle \lim_{n\to\infty}(z_nw_n)=zw \)
(3) \( \displaystyle \lim_{n\to\infty}\left(\frac{z_n}{w_n}\right)=\frac{z}{w} \ (w\not=0) \)
定理3の証明(気になる方だけクリックしてください)
(2)のみ示します。他も同様です。
\[ z_nw_n-zw=(z_n-z)(w_n-w)+z(w_n-w)+w(z_n-z) \]
であるので、仮定より
$$ \begin{align} |z_nw_n-zw|&=|(z_n-z)(w_n-w)+z(w_n-w)+w(z_n-z)| \\ &≦|z_n-z||w_n-w|+|z||w_n-w|+|w||z_n-z|\to 0 \quad (n\to\infty) \end{align} $$
したがって、
\[ \lim_{n\to\infty}(z_nw_n)=zw \]
複素平面の位相
$$ d(z,w)=|z-w| \ (z,w\in\mathbb{C}) $$
とおくと、 \( (\mathbb{C},d) \) は距離空間となります。
したがって、開集合と閉集合を次のように定めます。(詳しくは別のシリーズにて解説予定です)
(1) \( U\subset \mathbb{C} \) が開集合であるとは、任意の \( \eta\in U \) に対して、 \( \varepsilon>0 \) が存在して、
$$ D_{\varepsilon}(\eta)=\{z\in\mathbb{C} | \ |z-\eta|<\varepsilon\}\subset U $$
をみたすことをいう。
(2) \( F\subset \mathbb{C} \) が閉集合であるとは、 \( \mathbb{C}\backslash F=F^c \) が開集合であることをいう。
閉集合に関しては次の同値条件があることが知られています。
\( F\subset \mathbb{C} \) が閉集合であることの必要十分条件は、任意の複素数列 \( \{z_n\}_{n=1}^{\infty}\subset F \) と \( z\in\mathbb{C} \) に対して、
$$ z_n\to z \ (n\to\infty) \ \Rightarrow \ z\in F $$
が成り立つことである。
複素関数の連続性
まず、複素関数を定義します。
複素平面の集合 \( D\subset \mathbb{C} \) の複素数 \( z \) に対して複素数 \( w \) が対応する規則
$$ w=f(z) $$
のことを複素関数という。
このとき、とくに変数も関数も実数値だけをとる関数を実関数という。
複素関数に対しても次のようにして極限を定義します。
複素関数 \( w=f(z) \) に対して、 \( z \) が \( z_0 \) とは異なる値をとりながら \( z_0 \) に限りなく近づくとき、どのような近づき方をしても \( w=f(z) \) の値が1つの定まった複素数 \( \alpha \) に限りなく近づくとき、
$$ \lim_{z\to z_0}f(z)=\alpha \ または \ f(z)\to \alpha \ (z\to z_0) $$
と表し、 \( z\to z_0 \) のとき \( f(z) \) は \( \alpha \) に収束するといい、 \( \alpha \) を \( z\to z_0 \) のときの \( f(z) \) の極限値という。
\( \varepsilon \text{-} \delta \) 論法を用いると次のようになります。(知っている方のみご覧ください。)
開集合 \( D\subset \mathbb{C} \) と、
$$ z_0\in D, \quad f:D\backslash \{z_0\}\to \mathbb{C}, \quad \alpha\in\mathbb{C} $$
に対して、
$$ \begin{align} & \lim_{z\to z_0}f(z)=\alpha \ または \ f(z)\to \alpha \ (z\to z_0) \\ \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} & \forall \varepsilon>0, \exists \delta>0 \ \text{s.t.} \ \forall z\in D\backslash\{z_0\}, \ 0<|z-z_0|<\delta \ \Rightarrow \ |f(z)-\alpha|<\varepsilon \end{align} $$
定理3と同じように次が成り立ちます。
複素関数 \( f(z),g(z) \) に対して、
$$ \alpha=\lim_{z\to z_0}f(z), \quad \beta=\lim_{z\to z_0}g(z) $$
とする。このとき、次が成り立つ。
(1) \( \displaystyle \lim_{z\to z_0}(f(z)+g(z))=\alpha+\beta \)
(2) \( \displaystyle \lim_{z\to z_0}(f(z)g(z))=\alpha\beta \)
(3) \( \displaystyle \lim_{z\to z_0}\left(\frac{f(z)}{g(z)}\right)=\frac{\alpha}{\beta} \ (\beta\not=0) \)
また複素関数の連続性についても実関数と同様に定めます。
複素関数 \( w=f(z) \) の定義域 \( D \) の点 \( z_0 \) において \( \displaystyle \lim_{z\to z_0}f(z) \) が存在して、
$$ \lim_{z\to z_0}f(z)=f(z_0) $$
が成り立つとき、 \( w=f(z) \) は \( z=z_0 \) で連続であるという。
また、 \( D \) 内のすべての点で連続であるとき、 \( w=f(z) \) は \( D \) で連続であるという。
\( f:\mathbb{C}\to\mathbb{C} \) を \( f(z)=\overline{z} \) と定めと、 \( f \) は \( z=0 \) で連続である。
実際、 \( z\to 0 \) のとき、
$$ |f(z)-f(0)|=|\overline{z}-\overline{0}|=|\overline{z}|=|z|\to 0 \quad (z\to 0) $$
より、 \( f(z)\to f(0) \ (z\to 0) \)
したがって、 \( f \) は \( z=0 \) で連続である。
\( \varepsilon \text{-} \delta \) 論法を用いると次のようになります。(知っている方のみご覧ください。)
\( D\subset \mathbb{C} \) に対して、 \( f:D\to \mathbb{C} \) が \( z_0\in\mathbb{C} \) で連続であるとは次をみたすことをいう。
$$ \forall \varepsilon>0, \exists \delta>0 \ \text{s.t.} \ \forall z\in D, \ |z-z_0|<\delta \ \Rightarrow \ |f(z)-f(z_0)|<\varepsilon $$
定理5から次が成り立ちます。
複素関数 \( f(z),g(z) \) が定義域 \( D \) 上で連続であるならば、
$$ f(z)+g(z), \quad f(z)g(z) $$
は \( D \) 上で連続である。また、 \( \frac{f(z)}{g(z)} \) は \( g(z)=0 \) となる \( z \) を除いて \( D \) で連続である。
$$ D\subset \mathbb{C}, \quad f:D\to \mathbb{C}, \quad z=x+iy\in D \ (x,y\in\mathbb{R}) $$
に対して、
$$ u(x,y)=\text{Re} \ f(z), \quad v(x,y)=\text{Im} \ f(z) \tag{1} $$
とおきます。つまり、
$$ f(z)=u(x,y)+iv(x,y) $$
このとき、次のことが成り立ちます。
\( D\subset \mathbb{C} \) に対して、 \( f:D\to\mathbb{C} \) が \( z_0=x_0+iy_0\in D \) で連続であることの必要十分条件は、式(1)の \( u,v \) が \( (x_0,y_0) \) で連続であることである。
定理7の証明(気になる方だけクリックしてください)
(\(\Rightarrow\)) \( x_n\to x, \ y_n\to y \quad (n\to\infty) \) とすると、定理2より \( z_n\to z \quad (n\to\infty) \) であるので、定理1と仮定より
\[ |u(x_n,y_n)-u(x_0,y_0)|≦|f(z_n)-f(z_0)|\to 0 \quad (n\to\infty) \]
\( v \) についても同様に示せます。
(\(\Leftarrow\)) \( z_n\to z \quad (n\to\infty) \) とすると、定理2より \( x_n\to x, \ y_n\to y \quad (n\to\infty) \) であるので、定理1と仮定より
\[ |f(z_n)-f(z_0)|≦|u(x_n,y_n)-u(x_0,y_0)|+|v(x_n,y_n)-v(x_0,y_0)|\to 0 \quad (n\to\infty) \]
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。