こんにちは、ひかりです。
今回はベクトル解析からストークスの定理とグリーンの定理について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- グリーンの定理について
- ストークスの定理について
グリーンの定理
微分積分学12の記事で2重積分について、ベクトル解析10の記事でスカラー場の線積分について紹介しました。
グリーンの定理とは閉曲線(始点と終点が同じ曲線)上でのそれらの間の関係について述べたものであり、ガウスの発散定理と同じく物理学においてとても重要な定理となります。
\( D \) を2次元平面上の互いに交わらない有限個の単純閉曲線(自己交差をしない連続な閉曲線)で囲まれた閉領域として、 \( f(x,y),g(x,y) \) を \( D \) 上の滑らかな関数とする。
このとき、次が成り立つ。
$$ \int_{\partial D}(fdx+gdy)=\iint_D\left( -\frac{\partial f}{\partial y}+\frac{\partial g}{\partial x} \right) dxdy \tag{1} $$
ここで、 \( \partial D \) は \( D \) の境界であり、その向きは \( D \) の内部を左手に見て進む向きにとる。
定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)
まず、 \( D \) が長方形領域
$$ D=\{ (x,y) | a≦x≦b, \ c≦y ≦d\} $$
のとき、式(1)が成り立つことを示します。
境界 \( \partial D \) は4つの線分
$$ C_1=\{ (t,c) | a≦t≦b \}, \quad C_2=\{ (b,t) | c≦t≦d\}, $$
$$ C_3=\{ (a+b-t,d) | a≦t≦b \}, \quad C_4=\{ (a,c+d-t) | c≦t≦d\}, $$
をつないだものであるので、
$$ \int_{\partial D}fdx=\int_{C_1}fdx+\int_{C_2}fdx+\int_{C_3}fdx+\int_{C_4}fdx $$
ここで、 \( C_2,C_4 \) 上では \( \frac{dx}{dt}=0 \) であるので、
$$ \int_{C_2}fdx=\int_{C_4}fdx=0 $$
したがって、
$$ \begin{align} \int_{\partial D}fdx&=\int_{C_1}fdx+\int_{C_3}fdx \\ &=\int_a^bf(t,c)dt+\int_a^bf(a+b-t,d)\cdot (-1) dt \end{align} $$
となるので、 \( s=a+b-t \) と変数変換して \( s \) をあらためて \( t \) とおくと、
$$ \begin{align} \int_a^bf(a+b-t,d)dt&=\int_b^af(s,d)\cdot (-1)ds=\int_a^bf(t,d)dt \end{align} $$
したがって、
$$ \begin{align} \int_{\partial D}fdx&=\int_a^b(f(t,c)-f(t,d))dt=-\int_a^b(f(x,d)-f(x,c))dx \\ &=-\int_a^b dx\int_c^d \frac{\partial f}{\partial y}(x,y)dy=-\iint_D\frac{\partial f}{\partial y}dxdy \end{align} $$
同様にして、
$$ \int_{\partial D}gdy=\iint_D\frac{\partial g}{\partial x}dxdy $$
がいえるので、式(1)が成り立ちます。
\( D \) が一般の領域の場合は \( D \) を微小な長方形領域に分割することにより、同様のことが成り立ちます。
ストークスの定理
ベクトル解析10の記事でベクトル場の線積分について、ベクトル解析11の記事でベクトル場の面積分について紹介しました。
ストークスの定理とは閉曲線(始点と終点が同じ曲線)上でのそれらの間の関係について述べたものであり、ガウスの発散定理・グリーンの定理と同じく物理学においてとても重要な定理となります。
\( S \) を3次元空間内の向き付け可能な曲面であり、有限個の単純閉曲線(自己交差をしない連続な閉曲線)を境界にもつとする。
また、 \( \mathbf{f} \) を \( S \) 上のベクトル場とする。このとき、次が成り立つ。
$$ \iint_S\text{rot} \ \mathbf{f}\cdot \mathbf{n}dS=\int_{\partial S}\mathbf{f}\cdot d\mathbf{p} $$
ここで、 \( \partial S \) は \( S \) の境界であり、その向きは \( S \) の内部を左手に見て進む向きにとる。
また、 \( \mathbf{n} \) は \( \partial S \) の向きを基準にした右ねじが進む向きの単位法線ベクトルである。
定理2の証明(気になる方だけクリックしてください)
まず、曲面 \( S \) が \( xy \) 平面に平行な平面 \( z=c \) 上にある場合を考えます。つまり、
$$ S=\{ (x,y,z) | (x,y)\in D, \ z=c \} $$
ただし、 \( D \) は \( xy \) 平面上の単純閉曲線で囲まれた閉領域とします。また、
$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z)), \quad \mathbf{n}=(0,0,1) $$
とします。 \( S \) の面積要素は \( dS=dxdy \) であるので、グリーンの定理より、
$$ \begin{align} \iint_S\text{rot} \ \mathbf{f}\cdot \mathbf{n}dS&=\iint_D\left( \frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y} \right) dxdy \\ &=\int_{\partial D}(fdx+gdy)=\int_{\partial S}\mathbf{f}\cdot d\mathbf{p} \end{align} $$
が成り立ちます。
同様に、曲面 \( S \) が \( yz \) 平面、 \( xz \) 平面に平行な平面上にある場合も上の式は成り立ちます。
一般の曲面 \( S \) に対しては、 \( xy \) 平面、 \( yz \) 平面、 \( xz \) 平面に平行な微小長方形面に分割することにより、同様のことが成り立ちます。
(1) 次の空間ベクトル場を考える。
$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z))=(2xy^3z,3x^2y^2z,x^2y^3) $$
このとき、任意の閉曲線 \( C \) に沿った線積分 \( \displaystyle \int_C\mathbf{f}\cdot d\mathbf{p} \) を求める。
$$ \begin{align} \text{rot} \ \mathbf{f}&=\left( \frac{\partial h}{\partial y}-\frac{\partial g}{\partial z},\frac{\partial f}{\partial z}-\frac{\partial h}{\partial x},\frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y} \right) \\ &=(3x^2y^2-3x^2y^2,2xy^3-2xy^3,6xy^2z-6xy^2z)=\mathbf{0} \end{align} $$
であるので、ストークスの定理より、
$$ \int_C\mathbf{f}\cdot d\mathbf{p}=\iint_S\text{rot} \ \mathbf{f}\cdot \mathbf{n}dS=0 $$
(2) スカラー値関数 \( \phi \) に対して、次の空間ベクトル場を考える。
$$ \mathbf{f}(x,y,z)=\nabla \phi(x,y,z)=\left(\frac{\partial \phi}{\partial x},\frac{\partial \phi}{\partial y},\frac{\partial \phi}{\partial z}\right) $$
このとき、任意の閉曲線 \( C \) に沿った線積分は \( \displaystyle \int_C\mathbf{f}\cdot d\mathbf{p}=0 \) となることを示す。
ただし、すべての領域内で \( \mathbf{f} \) の偏微分値が存在するとする。
ベクトル解析08の定理4より、
$$ \text{rot} \ \mathbf{f}=\text{rot} \ \text{grad} \ \phi=0 $$
であるので、ストークスの定理より、
$$ \int_C\mathbf{f}\cdot d\mathbf{p}=\iint_S\text{rot} \ \mathbf{f}\cdot \mathbf{n}dS=0 $$
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。