ベクトル解析11:スカラー場とベクトル場の面積分

こんにちは、ひかりです。

今回はベクトル解析からスカラー場とベクトル場の面積分について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • スカラー場の面積分について
  • ベクトル場の面積分について
目次

スカラー場の面積分

ベクトル解析05において、3次元空間上の曲面 \( S \) を位置ベクトル \( \mathbf{p}(u,v) \) で表現できることを紹介しました。

これはつまり曲面 \( S \) を2つのパラメータ \( u,v \) を用いて表していることに他なりません。

また、ベクトル解析05の定理3より、曲面 \( S \) の面積要素は

$$ dS=\left\|\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}\right\|dudv $$

となります。したがって、これらを用いることにより3変数スカラー値関数をある曲面 \( S \) 上で積分をすることができます。

その積分のことを面積分といい、次のように定義することができます。

定義1 (スカラー場の面積分)

空間スカラー場 \( f(x,y,z) \) と3次元空間内のある領域 \( D \) 上の曲面 \( S \) が与えられているとする。

このとき、曲面 \( S \) がパラメータ \( u,v \) の位置ベクトル

$$ \mathbf{p}(u,v)=(x(u,v),y(u,v),z(u,v)) \quad ((u,v)\in D) $$

で表現されているとする。

このとき、3変数スカラー値関数 \( f(x,y,z) \) の曲面\( S \) 上の面積分を次のように定める。

$$ \iint_SfdS=\iint_Df(x(u,v),y(u,v),z(u,v))\left\|\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}\right\|dudv $$

例1

次の3変数スカラー値関数と曲面 \( S \) を考える。

$$ f(x,y,z)=x^2+4y+2z-1 $$

$$ S=\{ (x,y,z) \ | \ x+y+z=1, \ x,y,z≧0 \} $$

このとき、関数 \( f \) の曲面 \( S \) 上の面積分を求める。

曲面 \( S \) の位置ベクトルは次のようになる。

$$ \mathbf{p}(u,v)=(u,v,1-u-v) \quad ((u,v)\in D) $$

$$ D=\{ (u,v) \ | \ 0≦u,v≦1, \ 0≦u+v≦1 \} $$

よって、

$$ \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}=(1,0,-1), \quad \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}=(0,1,-1) $$

より、

$$ \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}=(1,1,1) $$

したがって、

$$ \begin{align} \iint_SfdS&=\iint_Df(x(u,v),y(u,v),z(u,v))\left\|\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}\right\|dudv \\ &=\iint_D(u^2+4v+2(1-u-v)-1)\sqrt{3}dudv \\ &=\sqrt{3}\int_0^1\int_0^{1-u}((u-1)^2+2v)dvdu \\ &=\sqrt{3}\int_0^1[(u-1)^2v+v^2]^{1-u}_0du \\ &=\sqrt{3}\int_0^1(-(u-1)^3+(u-1)^2)du=\frac{7\sqrt{3}}{12} \end{align} $$

ベクトル場の面積分

次にベクトル場の面積分について、スカラー場の面積分を用いて次のように定義します。

定義2 (ベクトル場の面積分)

空間ベクトル場

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z)) $$

と3次元空間内のある領域 \( D \) 上の曲面 \( S \) が与えられているとする。

このとき、曲面 \( S \) がパラメータ \( u,v \) の位置ベクトル

$$ \mathbf{p}(u,v)=(x(u,v),y(u,v),z(u,v)) \quad ((u,v)\in D) $$

で表現されているとする。

このとき、3変数ベクトル値関数 \( \mathbf{f}(x,y,z) \) の曲面 \( S \) 上の面積分を次のように定める。

$$ \iint_S\mathbf{f}\cdot d\mathbf{S}=\iint_S\mathbf{f}\cdot \mathbf{n}dS $$

ここで、 \( \mathbf{n} \) は曲面 \( S \) の各点に定まっている単位法線ベクトルとする。

(2方向のとり方があるが、すべての点で同じ向きとして選んでおく)

とくに、単位法線ベクトルが

$$ \mathbf{n}=\frac{\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}}{\left\|\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}\right\|} $$

となるとき、

$$ \begin{align} \iint_S\mathbf{f}\cdot d\mathbf{S}=\iint_D(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z))\cdot \left(\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial u}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial v}\right)dudv \end{align} $$

すべての曲面が単位法線ベクトルを同じ向きにとれるわけではないことに注意してください。(例えばメビウスの帯のように裏表のない曲面) つまり、すべての点で同じ向きに単位法線ベクトルが取れる曲面のことを向き付け可能な曲面といい、ベクトル場の面積分は向き付け可能な曲面にのみ定義されます。

例2

次の3変数ベクトル値関数と曲面 \( S \) を考える。

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(x,y,1) $$

$$ S : 半径 \ a \ の球面 $$

このとき、ベクトル値関数 \( \mathbf{f} \) の曲面 \( S \) 上の面積分を求める。

ただし、単位法線ベクトル \( \mathbf{n} \) は外向き(球の中から外への向き)で考える。

曲面 \( S \) の位置ベクトルは次のようになる。

$$ \mathbf{p}(\theta,\varphi)=(a\sin \theta \cos \varphi,a\sin \theta \sin\varphi, a\cos \theta) \quad ((\theta,\varphi)\in D) $$

$$ D=\{ (\theta,\varphi) \ | \ 0≦\theta≦\pi, \ 0≦\varphi≦2\pi \} $$

よって、

$$ \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial \theta}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial \varphi}=(a^2\sin^2\theta\cos \varphi,a^2\sin^2\theta\sin\varphi,a^2\cos \theta\sin \theta) $$

より、

$$ \begin{align} \iint_S\mathbf{f}\cdot d\mathbf{S}&=\iint_D(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z))\cdot \left(\frac{\partial \mathbf{p}}{\partial \theta}\times \frac{\partial \mathbf{p}}{\partial \varphi}\right)d\theta d\varphi \\ &=\int_0^{\pi}\int_0^{2\pi}(a^3\sin^3\theta(\cos^2\varphi+\sin^2\varphi)+a^2\cos \theta\sin \theta)d\theta d\varphi \\ &=\int_0^{\pi}\int_0^{2\pi}(a^3\sin^3\theta+a^2\cos \theta\sin \theta)d\theta d\varphi \\ &=2\pi a^3\int_0^{\pi}\sin^3\theta d\theta+2\pi a^2\int_0^{\pi}\cos \theta \sin \theta d\theta \\ &=\frac{\pi a^3}{2}\int_0^{\pi}(3\sin \theta-\sin 3\theta)d\theta+\pi a^2\int_0^{\pi}\sin 2\theta d\theta=\frac{8\pi a^3}{3} \end{align} $$

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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