微分方程式14:実係数の2階線形微分方程式

こんにちは、ひかりです。

今回は微分方程式から実係数の2階線形微分方程式について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • 実係数の2階同次線形微分方程式の基本解と一般解について
  • 実係数の2階非同次線形微分方程式の基本解と一般解について
目次

実係数の2階同次線形微分方程式の基本解と一般解

微分方程式13では、定数係数単独線形微分方程式の基本解と一般解について紹介しました。

ここでは、その中でも特に応用上よく考えられる実係数の2階線形微分方程式について考えていきます。

まず、実係数の2階同次線形微分方程式

$$ y^{\prime\prime}(x)+a_1y'(x)+a_2y(x)=0, \quad (a_1,a_2\in \mathbb{R}) \tag{1} $$

の基本解と一般解を求めてみましょう。

方程式(1)の特性多項式は

$$ L(\lambda)=\lambda^2+a_1\lambda+a_2 $$

であるので、 \( L(\lambda)=0 \) の解は

$$ \lambda_1=\frac{1}{2}\left( -a_1+\sqrt{a_1^2-4a_2} \right), \quad \lambda_2=\frac{1}{2}\left( -a_1-\sqrt{a_1^2-4a_2} \right) $$

したがって、次の3つの場合分けで基本解と一般解が求められます。

(1) 2つの異なる実数解をもつ

2つの異なる実数解 \( \lambda_1,\lambda_2 \) をもつ場合は、微分方程式13の定理1より基本解は

$$ y_1(x)=e^{\lambda_1x}, \quad y_2(x)=e^{\lambda_2x} $$

となるので、一般解は

$$ y(x)=c_1e^{\lambda_1x}+c_2e^{\lambda_2x} \quad (c_1,c_2:任意定数) $$

(2) 2つの異なる虚数解をもつ

2つの異なる虚数解

$$ \lambda_1=\alpha+i\beta, \quad \lambda_2=\alpha-i\beta $$

をもつとします。ここで、

$$ \alpha=-\frac{a_2}{2}, \quad \beta=\sqrt{a_2-\frac{a_1^2}{4}} $$

この場合も微分方程式13の定理1より基本解は

$$ y_1(x)=e^{\lambda_1x}, \quad y_2(x)=e^{\lambda_2x} $$

であるが、この場合はオイラーの公式より

$$ e^{\lambda_1x}=e^{(\alpha+i\beta)x}=e^{\alpha x}(\cos \beta x+i\sin \beta x), \quad e^{\lambda_2x}=e^{(\alpha-i\beta)x}=e^{\alpha x}(\cos \beta x-i\sin \beta x) $$

となるので、

$$ \frac{e^{\lambda_1x}+e^{\lambda_2}}{2}=e^{\alpha x}\cos \beta x, \quad \frac{e^{\lambda_1x}-e^{\lambda_2}}{2i}=e^{\alpha x}\sin \beta x $$

したがって、

$$ e^{\alpha x}\cos \beta x,e^{\alpha x}\sin \beta x $$

も一次独立なので基本解となります。よって、一般解は

$$ y(x)=e^{\alpha x}(c_1\cos \beta x+c_2\sin \beta x) \quad (c_1,c_2:任意定数) $$

(3) 重解をもつ

重解 \( \lambda_1=\lambda_2=-\frac{a_1}{2} \) をもつ場合は、微分方程式13の定理1より基本解は

$$ y_1(x)=e^{\lambda_1x}, \quad y_2(x)=xe^{\lambda_1x} $$

となるので、一般解は

$$ y(x)=c_1e^{\lambda_1x}+c_2xe^{\lambda_2x} \quad (c_1,c_2:任意定数) $$

例1

(1) 次の2階同次線形微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}(x)-y'(x)-2y(x)=0 $$

この方程式の一般解を求める。

$$ L(\lambda)=\lambda^2-\lambda-2=(\lambda-2)(\lambda+1) $$

であるので、 \( L(\lambda)=0 \) の解は2つの異なる実数解 \( 2,-1 \) をもつ。

したがって、微分方程式13の定理1より基本解は

$$ y_1(x)=e^{2x}, \quad y_2(x)=e^{-x} $$

となるので、一般解は

$$ y(x)=c_1e^{2x}+c_2e^{-x} \quad (c_1,c_2:任意定数) $$


(2) 次の2階同次線形微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}(x)+4y'(x)+5y(x)=0 $$

この方程式の一般解を求める。

$$ L(\lambda)=\lambda^2+4\lambda+5=(\lambda+2-i)(\lambda+2+i) $$

であるので、 \( L(\lambda)=0 \) の解は2つの異なる虚数解 \( -2+i,-2-i \) をもつ。

したがって、微分方程式13の定理1より基本解は

$$ y_1(x)=e^{(-2+i)x}=e^{-2x}(\cos x+i\sin x) $$

$$ y_2(x)=e^{(-2-i)x}=e^{-2x}(\cos x-i\sin x) $$

となるので、一般解は

$$ y(x)=e^{-2x}(c_1\cos x+c_2\sin x) \quad (c_1,c_2:任意定数) $$


(3) 次の2階同次線形微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}(x)+6y'(x)+9y(x)=0 $$

この方程式の一般解を求める。

$$ L(\lambda)=\lambda^2+6\lambda+9=(\lambda+3)^2 $$

であるので、 \( L(\lambda)=0 \) の解は重解 \( -3 \) をもつ。

したがって、微分方程式13の定理1より基本解は

$$ y_1(x)=e^{-3x}, \quad y_2(x)=xe^{-3x} $$

となるので、一般解は

$$ y(x)=c_1e^{-3x}+c_2xe^{-3x} \quad (c_1,c_2:任意定数) $$

実係数の2階非同次線形微分方程式の特殊解と一般解

次に実係数の2階非同次線形微分方程式

$$ y^{\prime\prime}(x)+a_1y'(x)+a_2y(x)=b(x), \quad (a_1,a_2\in \mathbb{R}) \tag{2} $$

の特殊解を求めてみましょう。

(一般解は上で求めた基本解とこの特殊解の和で求められます)

(1) \( b(x) \) が多項式の場合

まず、非同次項が多項式

$$ b(x)=d_0+d_1x+\cdots+d_nx^n \quad (d_0,\cdots,d_n:定数) $$

である場合を考えます。

(i) \( L(0)\not=0 \) の場合

未定乗数を \( p_0,p_1,\cdots,p_n \) として、特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=p_0+p_1x+\cdots+p_nx^n $$

とおきます。これは、

$$ \widetilde{y}'(x)=p_1+2p_2x+\cdots+np_nx^{n-1} $$

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)=2p_2+6p_3x+\cdots+n(n-1)p_nx^{n-2} $$

であるので、

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)+a_1\widetilde{y}'(x)+a_2\widetilde{y}(x)=d_0+d_1x+\cdots+d_nx^n $$

を考えて係数比較をすることにより求めることができます。

(ii) \( L(0)=0 \) の場合

この場合は特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=p_0x+p_1x^2+\cdots+p_nx^{n+1} $$

とおくと係数比較で求めることができます。

(2) \( b(x) \) が指数関数の場合

次に、非同次項が指数関数

$$ b(x)=de^{\alpha x} \quad (d:定数) $$

である場合を考えます。

(i) \( L(\alpha)\not=0 \) の場合

未定乗数を \( p \) として、特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=pe^{\alpha x} $$

とおきます。これは、

$$ \widetilde{y}'(x)=\alpha pe^{\alpha x}, \quad \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)=\alpha^2 pe^{\alpha x} $$

であるので、

$$ \begin{align} de^{\alpha x}&=\widetilde{y}^{\prime\prime}(x)+a_1\widetilde{y}'(x)+a_2\widetilde{y}(x) \\ &=p(\alpha^2+a_1\alpha+a_2)e^{\alpha x} \\ &=pL(\alpha)e^{\alpha x} \end{align} $$

を係数比較すると、 \( L(\alpha)\not=0 \) より特殊解は

$$ \widetilde{y}(x)=\frac{d}{L(\alpha)}e^{\alpha x} $$

(ii) \( L(\alpha)=0 \) の場合

この場合は特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=pc(x)e^{\alpha x} $$

とおくと係数比較で求めることができます。

ただし、 \( L'(\alpha)\not=0 \) か \( L'(\alpha)=0 \) により少し状況は変わります。

(3) \( b(x) \) が三角関数の場合

最後に、非同次項が三角関数

$$ b(x)=d\cos \beta x \ もしくは \ d\sin \beta x \quad (d,\beta:実定数) $$

である場合を考えます。

(i) \( L(\pm i\beta)\not=0 \) の場合

未定乗数を \( p,q \) として、特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=p\cos \beta x+q\sin \beta x $$

とおきます。これは、

$$ \widetilde{y}'(x)=-\beta p\sin \beta x+\beta q \cos \beta x $$

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)=-\beta^2(p\cos \beta x+q\sin \beta x) $$

であるので、

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)+a_1\widetilde{y}'(x)+a_2\widetilde{y}(x)=d\cos \beta x \ もしくは \ d\sin \beta x $$

を考えて係数比較をすることにより求めることができます。

(ii) \( L(\pm i\beta)=0 \) の場合

この場合は特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=px\cos \beta x+qx\sin \beta x $$

とおくと係数比較で求めることができます。

例2

(1) 次の2階非同次線形微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}(x)-y'(x)-2y(x)=4x $$

この方程式の一般解を求める。

\( L(0)\not=0 \) より、未定乗数を \( p_0,p_1 \) として、特殊解を \( \widetilde{y}(x)=p_0+p_1x \) とおく。これは、

$$ \widetilde{y}'(x)=p_1, \quad \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)=0 $$

であるので、

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)-\widetilde{y}'(x)-2\widetilde{y}(x)=-p_1-2(p_0+p_1x)=-2p_1x+(-2p_0-p_1)=4x $$

より、係数比較をすると \( p_0=1,p_1=-2 \) であるので、特殊解は \( \widetilde{y}(x)=-2x+1 \) となる。

したがって、一般解は例1(1)で求めた基本解を用いて

$$ y(x)=c_1e^{2x}+c_2e^{-x}-2x+1 \quad (c_1,c_2:任意定数) $$


(2) 次の2階非同次線形微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}(x)+4y'(x)+5y(x)=2e^{-2x} $$

この方程式の一般解を求める。

\( L(-2)\not=0 \) より、未定乗数を \( p \) として、特殊解を \( \widetilde{y}(x)=pe^{-2x} \) とおく。これは、

$$ \widetilde{y}'(x)=-2pe^{-2x}, \quad \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)=4pe^{-2x} $$

であるので、

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)+4\widetilde{y}'(x)+5\widetilde{y}(x)=4pe^{-2x}-8pe^{-2x}+5pe^{-2x}=pe^{-2x}=2e^{-2x} $$

より、係数比較をすると \( p=2 \) であるので、特殊解は \( \widetilde{y}(x)=2e^{-2x} \) となる。

したがって、一般解は例1(2)で求めた基本解を用いて

$$ y(x)=e^{-2x}(c_1\cos x+c_2\sin x+2) \quad (c_1,c_2:任意定数) $$


(3) 次の2階非同次線形微分方程式を考える。

$$ y^{\prime\prime}(x)-y'(x)-2y(x)=4\sin x $$

この方程式の一般解を求める。

\( L(\pm i)\not=0 \) より、未定乗数を \( p,q \) として、特殊解を

$$ \widetilde{y}(x)=p\cos x+q\sin x $$

とおく。これは、

$$ \widetilde{y}'(x)=-p\sin x+q \cos x $$

$$ \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)=-p\cos x-q\sin x $$

であるので、

$$ \begin{align} & \widetilde{y}^{\prime\prime}(x)-\widetilde{y}'(x)-2\widetilde{y}(x) \\ &=(-p\cos x-q\sin x)-(-p\sin x+q \cos x)-2(p\cos x+q\sin x) \\ &=(-3p-q)\cos x+(p-3q)\sin x \\ &=4\sin x \end{align} $$

より、係数比較をすると \( p=\frac{2}{5},q=-\frac{6}{5} \) であるので、特殊解は

$$ \widetilde{y}(x)=\frac{2}{5}\cos x-\frac{6}{5}\sin x $$

となる。したがって、一般解は例1(1)で求めた基本解を用いて

$$ y(x)=c_1e^{2x}+c_2e^{-x}+\frac{2}{5}\cos x-\frac{6}{5}\sin x \quad (c_1,c_2:任意定数) $$

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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