こんにちは、ひかりです。
今回はベクトル解析からスカラー場とベクトル場の線積分について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- スカラー場の線積分について
- ベクトル場の接線線積分について
スカラー場の線積分
ベクトル解析03において、2次元平面や3次元空間上の曲線 \( C \) を位置ベクトル \( \mathbf{p}(t) \) で表現できることを紹介しました。
これはつまり曲線 \( C \) を1つのパラメータ \( t \) を用いて表していることに他なりません。
したがって、これを用いることによりスカラー値関数をある曲線 \( C \) 上に沿って積分をすることができます。
その積分のことを線積分といい、次のように定義することができます。
(1) 平面スカラー場 \( f(x,y) \) と2次元平面上の曲線 \( C \) が与えられているとする。
このとき、曲線 \( C \) がパラメータ \( t \) の位置ベクトル
$$ \mathbf{p}(t)=(x(t),y(t)) \quad (a≦t≦b) $$
で表現されているとする。
このとき、2変数スカラー値関数 \( f(x,y) \) の曲線 \( C \) に沿った線積分を次のように定める。
$$ \int_Cf(x,y)dx=\int_a^bf(x(t),y(t))x'(t)dt $$
$$ \int_Cf(x,y)dy=\int_a^bf(x(t),y(t))y'(t)dt $$
まとめると、
$$ \int_Cf(x,y)d\mathbf{p}=\left( \int_Cf(x,y)dx,\int_Cf(x,y)dy \right) $$
(2) 空間スカラー場 \( f(x,y,z) \) と3次元空間上の曲線 \( C \) が与えられているとする。
このとき、曲線 \( C \) がパラメータ \( t \) の位置ベクトル
$$ \mathbf{p}(t)=(x(t),y(t),z(t)) \quad (a≦t≦b) $$
で表現されているとする。
このとき、3変数スカラー値関数 \( f(x,y,z) \) の曲線 \( C \) に沿った線積分を次のように定める。
$$ \int_Cf(x,y,z)dx=\int_a^bf(x(t),y(t),z(t))x'(t)dt $$
$$ \int_Cf(x,y,z)dy=\int_a^bf(x(t),y(t),z(t))y'(t)dt $$
$$ \int_Cf(x,y,z)dz=\int_a^bf(x(t),y(t),z(t))z'(t)dt $$
まとめると、
$$ \int_Cf(x,y,z)d\mathbf{p}=\left( \int_Cf(x,y,z)dx,\int_Cf(x,y,z)dy,\int_Cf(x,y,z)dz \right) $$
また、ベクトル解析03の定理1より、曲線 \( C \) の長さを \( s \) とおくと、
$$ \frac{ds}{dt}=\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2+z'(t)^2} $$
であるので、 パラメータ \( t,s \) に関する線積分を次のように定義します。
(普通、線積分といったらパラメータ \( s \) に関する線積分を指すことが多いです)
空間スカラー場 \( f(x,y,z) \) と3次元空間上の曲線 \( C \) が与えられているとする。
このとき、曲線 \( C \) がパラメータ \( t \) の位置ベクトル
$$ \mathbf{p}(t)=(x(t),y(t),z(t)) \quad (a≦t≦b) $$
で表現されているとする。
このとき、3変数スカラー値関数 \( f(x,y,z) \) のパラメータ \( t \) の線積分を次のように定める。
$$ \int_Cf(x,y,z)dt=\int_a^bf(x(t),y(t),z(t))dt $$
同様に、パラメータ \( s \) の線積分を次のように定める。
$$ \begin{align} &\int_Cf(x,y,z)ds=\int_Cf(x,y,z)\frac{ds}{dt}dt \\ &=\int_a^bf(x(t),y(t),z(t))\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2+z'(t)^2}dt \end{align} $$
(1) 次の2変数スカラー値関数と曲線 \( C \) を考える。
$$ f(x,y)=2x-x^2+y $$
$$ C : \mathbf{p}(t)=(t,t^2) \quad (0≦t≦1) $$
関数 \( f \) の曲線 \( C \) に沿ったパラメータ \( s \) の線積分を求める。
$$ \frac{ds}{dt}=\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}=\sqrt{1+4t^2} $$
より、
$$ \begin{align} \int_Cf(x,y,z)ds&=\int_0^1(2t-t^2+t^2)\sqrt{1+4t^2}dt \\ &=\int_0^12t\sqrt{1+4t^2}dt=\left[\frac{1}{6}(1+4t^2)^{\frac{3}{2}}\right]^1_0=\frac{5\sqrt{5}-1}{6} \end{align} $$
(2) 次の3変数スカラー値関数と曲線 \( C \) を考える。
$$ f(x,y,z)=yz+zx+xy $$
$$ C : \ 原点から点 \ (1,2,3) \ への線分 $$
関数 \( f \) の曲線 \( C \) に沿ったパラメータ \( s \) の線積分を求める。
まず、曲線 \( C \) の位置ベクトルは次のようになる。
$$ C : \mathbf{p}(t)=(t,2t,3t) \quad (0≦t≦1) $$
よって、
$$ \frac{ds}{dt}=\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2+z'(t)^2}=\sqrt{14} $$
より、
$$ \begin{align} \int_Cf(x,y,z)ds&=\int_0^1(6t^2+3t^2+2t^2)\sqrt{14}dt \\ &=\int_0^111t^2\sqrt{14}dt=11\sqrt{14}\left[\frac{1}{3}t^3\right]^1_0=\frac{11\sqrt{14}}{3} \end{align} $$
ベクトル場の接線線積分
次にベクトル場の(接線)線積分について、スカラー場の線積分を用いて次のように定義します。
(1) 平面ベクトル場
$$ \mathbf{f}(x,y)=(f(x,y),g(x,y)) $$
と2次元平面上の曲線 \( C \) が与えられているとする。
このとき、曲線 \( C \) がパラメータ \( t \) の位置ベクトル
$$ \mathbf{p}(t)=(x(t),y(t)) \quad (a≦t≦b) $$
で表現されているとする。
このとき、2変数ベクトル値関数 \( \mathbf{f}(x,y) \) の曲線 \( C \) に沿った接線線積分を次のように定める。
$$ \begin{align} \int_C\mathbf{f}(x,y)\cdot d\mathbf{p}&=\int_C(f(x,y),g(x,y))\cdot (dx,dy) \\ &=\int_Cf(x,y)dx+\int_Cg(x,y)dy \\ &=\int_a^bf(x(t),y(t))x'(t)dt+\int_a^bg(x(t),y(t))y'(t)dt \end{align} $$
つまり、
$$ \int_C\mathbf{f}(x,y)\cdot d\mathbf{p}=\int_C\mathbf{f}(\mathbf{p}(t))\mathbf{p}'(t)dt $$
(2) 空間ベクトル場
$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z)) $$
と3次元空間上の曲線 \( C \) が与えられているとする。
このとき、曲線 \( C \) がパラメータ \( t \) の位置ベクトル
$$ \mathbf{p}(t)=(x(t),y(t),z(t)) \quad (a≦t≦b) $$
で表現されているとする。
このとき、3変数ベクトル値関数 \( \mathbf{f}(x,y,z) \) の曲線 \( C \) に沿った接線線積分を次のように定める。
$$ \begin{align} \int_C\mathbf{f}(x,y,z)\cdot d\mathbf{p}&=\int_C(f(x,y,z),g(x,y,z))\cdot (dx,dy,dz) \\ &=\int_Cf(x,y,z)dx+\int_Cg(x,y,z)dy+\int_Ch(x,y,z)dz \\ &=\int_a^bf(x(t),y(t),z(t))x'(t)dt+\int_a^bg(x(t),y(t),z(t))y'(t)dt \\ &\quad +\int_a^bh(x(t),y(t),z(t))z'(t)dt \end{align} $$
つまり、
$$ \int_C\mathbf{f}(x,y,z)\cdot d\mathbf{p}=\int_C\mathbf{f}(\mathbf{p}(t))\mathbf{p}'(t)dt $$
次の3変数ベクトル値関数と曲線 \( C \) を考える。
$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(y,-z,x) $$
$$ C : \mathbf{p}(t)=(a\cos t,a\sin t,ct) \quad (0≦t≦\pi) $$
関数 \( \mathbf{f} \) の曲線 \( C \) に沿った接線線積分を求める。
$$ \begin{align} \int_C\mathbf{f}(x,y,z)\cdot d\mathbf{p}&=\int_Cydx-\int_Czdy+\int_Cxdz \\ &=\int_0^{\pi}a\sin t\cdot (-a\sin t)dt+\int_0^{\pi}ct\cdot a\cos t dt+\int_0^{\pi}a\cos t\cdot cdt \\ &=-a^2\int_0^{\pi}\frac{1-\cos 2t}{2}dt-ac\int_0^{\pi}t\cos tdt+ac\int_0^{\pi}\cos tdt \\ &=-\frac{\pi}{2}a^2+2ac \end{align} $$
特に、勾配ベクトル \( \nabla f \) を接線線積分すると次のようになります。
(3変数で述べますが2変数でも同様です)
3変数スカラー値関数 \( f(x,y,z) \) と3次元空間上の曲線 \( C \) が与えられているとする。
このとき、曲線 \( C \) がパラメータ \( t \) の位置ベクトル
$$ \mathbf{p}(t)=(x(t),y(t),z(t)) \quad (a≦t≦b) $$
で表現されているとする。
このとき、3変数ベクトル値関数の勾配ベクトル \( \nabla f(x,y,z) \) の曲線 \( C \) に沿った接線線積分は次のようになる。
$$ \int_C\nabla f(x,y,z)\cdot d\mathbf{p}=f(x(b),y(b),z(b))-f(x(a),y(a),z(a)) $$
定理1の証明(気になる方だけクリックしてください)
\( f \) の全微分を \( df \) とおくと、
$$ \begin{align} \int_C\nabla f(x,y,z)\cdot d\mathbf{p}&=\int_C(\frac{\partial f}{\partial x},\frac{\partial f}{\partial y},\frac{\partial f}{\partial z})\cdot (dx,dy,dz) \\ &=\int_C\left( \frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy+\frac{\partial f}{\partial z}dz\right) \\ &=\int_Cdf=\int_a^b\frac{df}{dt}dt=[f(x(t),y(t),z(t))]^b_a \\ &=f(x(b),y(b),z(b))-f(x(a),y(a),z(a)) \end{align} $$
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。