こんにちは、ひかりです。
今回は微分方程式から確定特異点での級数解法とベッセルの方程式について解説していきます。
この記事では以下のことを紹介します。
- 確定特異点での級数解について
- ベッセルの方程式について
確定特異点での級数解
微分方程式11では同次形の2階変数係数線形微分方程式における正則点での級数解について考えました。
今回は、同次形の2階変数係数線形微分方程式
$$ y^{\prime\prime}(x)+p_1(x)y'(x)+p_2(x)y(x)=0 \tag{1} $$
において、変数係数 \( p_1(x),p_2(x) \) が \( x=x_0 \) のまわりではテイラー級数展開(べき級数展開)できないが、
$$ (x-x_0)p_1(x), \quad (x-x_0)^2p_2(x) $$
が \( x=x_0 \) のまわりでテイラー級数展開(べき級数展開)可能であるような場合を考えます。
このとき、点 \( x=x_0 \) のことを方程式(1)の確定特異点といいます。
確定特異点 \( x=x_0 \) のまわりで方程式(1)の解を
$$ y(x)=(x-x_0)^{\lambda}\sum_{n=0}^{\infty}c_n(x-x_0)^n \quad (c_0\not=0) $$
の形で求めることを考えてみましょう。
まず、変数変換 \( t=x-x_0 \) によって、 \( x_0=0 \) の場合に帰着させることができます。
よって、 \( x_0=0 \) と仮定します。このとき、解 \( y(x) \) を
$$ \begin{align} y(x)&=x^{\lambda}\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^n=c_0x^{\lambda}+c_1x^{\lambda+1}+c_2x^{\lambda+2}+\cdots \end{align} \tag{2} $$
とすると、
$$ y'(x)=\sum_{n=0}^{\infty}(\lambda+n)c_nx^{\lambda+n-1}, \quad y^{\prime\prime}(x)=\sum_{n=0}^{\infty}(\lambda+n)(\lambda+n-1)c_nx^{\lambda+n-2} $$
となります。一方で、
$$ A_1(x)=xp_1(x), \quad A_2(x)=x^2p_2(x) $$
とおくと、方程式(1)は次のように変形できます。
$$ x^2y^{\prime\prime}(x)+xA_1(x)y'(x)+A_2(x)y(x)=0 \tag{3} $$
また、仮定より \( A_1(x),A_2(x) \) は \( x=0 \) のまわりでテイラー級数展開できるので、
$$ A_1(x)=\sum_{n=0}^{\infty}d_nx^n, \quad A_2(x)=\sum_{n=0}^{\infty}e_nx^n $$
したがって、これらを方程式(3)に代入すると、
$$ \sum_{n=0}^{\infty}(\lambda+n)(\lambda+n-1)c_nx^{\lambda+n}+\sum_{k=0}^{\infty}d_kx^k\sum_{n=0}^{\infty}(\lambda+n)c_nx^{\lambda+n}+\sum_{k=0}^{\infty}e_kx^k\sum_{n=0}^{\infty}c_nx^{\lambda+n}=0 $$
となるので、 \( x \) に関して同じべき \( x^n \ (n=1,2,\cdots) \) についてまとめると、
$$ \sum_{n=0}^{\infty}\left\{ (\lambda+n)(\lambda+n-1)c_n+\sum_{k=0}^n(\lambda+k)d_{n-k}c_k+\sum_{k=0}^ne_{n-k}c_k \right\}x^{\lambda+n}=0 $$
となる。まず、 \( n=0 \) のとき、
$$ \{\lambda(\lambda-1)c_0+\lambda d_0c_0+e_0c_0\}x^{\lambda}=0 $$
であるので、
$$ \{ \lambda(\lambda-1)+\lambda d_0+e_0\}c_0=0 $$
となるので、 \( c_0\not=0 \) より、
$$ \lambda(\lambda-1)+d_0\lambda+e_0=0 \tag{4} $$
となります。次に、 \( n=1,2,\cdots \) のとき、
$$ \left\{ (\lambda+n)(\lambda+n-1)c_n+\sum_{k=0}^n(\lambda+k)d_{n-k}c_k+\sum_{k=0}^ne_{n-k}c_k \right\}x^{\lambda+n}=0 $$
であるので、
$$ (\lambda+n)(\lambda+n-1)c_n+\sum_{k=0}^n(\lambda+k)d_{n-k}c_k+\sum_{k=0}^ne_{n-k}c_k=0 $$
となるので、
$$ \begin{align} &\{(\lambda+n)(\lambda+n-1)+(\lambda+n)d_0+e_0\}c_n \\ &=-\sum_{k=0}^{n-1}\{(\lambda+k)d_{n-k}+e_{n-k}\}c_k, \ (n=1,2,\cdots) \end{align} \tag{5} $$
が得られます。
まず、方程式(4)を解くことにより \( \lambda \) を決定してから、それらを方程式(5)に代入することにより、 \( c_0 \) を任意定数として、 \( c_n \ (n=1,2,\cdots) \) が決まります。
このことから、方程式(4)のことは決定方程式といいます。
これは \( \lambda \) に関する2次方程式であるので、解 \( \lambda_1,\lambda_2 \) が存在します。
このとき、 \( \lambda_1,\lambda_2 \) が実数解であるとき次のように方程式(1)の基本解が求まることが知られています。
確定特異点 \( x=0 \) のまわりで方程式(1)の基本解は決定方程式の実数解 \( \lambda_1,\lambda_2 \ (\lambda_1≧\lambda_2) \) によって、次のように与えられる。
(1) \( \lambda_1-\lambda_2 \) が非負の整数でないとき
$$ y_1(x)=x^{\lambda_1}\sum_{n=0}^{\infty}c^1_nx^n, \quad y_2(x)=x^{\lambda_2}\sum_{n=0}^{\infty}c^2_nx^n $$
(2) \( \lambda_1=\lambda_2 \) のとき
$$ y_1(x)=x^{\lambda_1}\sum_{n=0}^{\infty}c^1_nx^n $$
$$ y_2(x)=y_1(x)\log |x|+x^{\lambda_2}\sum_{n=1}^{\infty}c^2_nx^n $$
(3) \( \lambda_1-\lambda_2 \) が自然数のとき
$$ y_1(x)=x^{\lambda_1}\sum_{n=0}^{\infty}c^1_nx^n $$
$$ y_2(x)=\alpha y_1(x)\log |x|+x^{\lambda_2}\sum_{n=0}^{\infty}c^2_nx^n $$
ここで、 \( \alpha \) は定数である。
ベッセルの方程式
この解法の1つの具体例として、次のベッセルの方程式について紹介していきます。
微分方程式が
$$ x^2y^{\prime\prime}(x)+xy'(x)+(x^2-\ell^2)y(x)=0 \quad (\ell≧0) $$
という形で表されるとき、 \( \ell \) 位のベッセルの微分方程式という。
0位のベッセルの微分方程式を考える。
$$ x^2y^{\prime\prime}(x)+xy'(x)+x^2y(x)=0 \tag{6} $$
このとき、 \( x=0 \) での級数解を求める。
まず、両辺を \( x^2 \) で割ると、
$$ y^{\prime\prime}(x)+\frac{1}{x}y'(x)+y(x)=0 $$
であるので、 \( x=0 \) はこの方程式(6)の確定特異点である。
まず、式(3)の \( A_1,A_2 \) と方程式(6)を見比べることにより、決定方程式は次のようになる。
$$ \lambda(\lambda-1)+\lambda=0 $$
よって、 \( \lambda_1=\lambda_2=0 \) であるので、定理2から方程式(6)の基本解 \( y_1(x) \) は
$$ y_1(x)=\sum_{n=0}^{\infty}c^1_nx^n $$
となる。 \( c_n^1 \) を求める。そのため、
$$ y’_1(x)=\sum_{n=0}^{\infty}nc^1_nx^{n-1}, \quad y^{\prime\prime}_1(x)=\sum_{n=0}^{\infty}n(n-1)c^1_nx^{n-2} $$
を方程式(6)に代入すると、
$$ \begin{align} 0&=x^2\sum_{n=0}^{\infty}n(n-1)c^1_nx^{n-2}+x\sum_{n=0}^{\infty}nc^1_nx^{n-1}+x^2\sum_{n=0}^{\infty}c^1_nx^n \\ &=\sum_{n=0}^{\infty}\{n(n-1)+n\}c_n^1x^n+\sum_{n=0}^{\infty}c^1_nx^{n+2} \\ &=\sum_{n=0}^{\infty}n^2c_n^1x^n+\sum_{n=2}^{\infty}c^1_{n-2}x^n \\ &=\sum_{n=1}^{\infty}(n^2c^1_n+c^1_{n-2})x^n \quad (ただし、c^1_{-1}=0とする) \end{align} $$
(無限級数の和を考えてよいのかなどの議論については省略する)
したがって、これが任意の \( x \) に対して成り立つ必要があるので、
$$ n^2c^1_n+c^1_{n-2}=0 \quad (n=1,2,\cdots, \quad c^1_{-1}=0) $$
となる。これは \( c^1_0,c^1_1,\cdots \) に関する漸化式であるので、 \( c^1_0 \) を任意定数とすると、
$$ c^1_1=0, \quad c^1_2=-\frac{1}{4}c^1_0, \quad c^1_3=0, \quad c^1_4=\frac{1}{2^52!}c^1_0, \cdots $$
一般に、
$$ c^1_{2m-1}=0, \quad c^1_{2m}=(-1)^m\frac{1}{2^{2m}m!m(n-1)\cdots 2\cdot 1}c^1_0 $$
となり、方程式(6)の基本解 \( y_1(x) \) は次のようになる。
$$ y_1(x)=c^1_0\left( 1-\frac{1}{4}x^2+\frac{1}{2^52!}x^4-\cdots \right) $$
ここで、この任意定数 \( c^1_0 \) を \( c^1_0=1 \) としたものを \( J_0(x) \) とおき、0位のベッセル関数という。つまり、
$$ J_0(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{(n!)^2}\left( \frac{x}{2} \right)^{2n} $$
また、同様にして定理2よりもう一つの基本解 \( y_2(x) \) は次のようになる。
$$ y_2(x)=J_0(x)\log|x|+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^{n-1}}{(n!)^2}\left( 1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{n}\right)\left( \frac{x}{2}\right)^{2n} $$
一般に \( \ell \) 位のベッセル関数 \( J_{\ell}(x) \) は次のようになります。
$$ J_{\ell}(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{n!\Gamma(\ell+n+1)}\left( \frac{x}{2} \right)^{2n+\ell} $$
ここで、 \( \Gamma(s) \) はガンマ関数であり、次で定義されます。
$$ \Gamma(s)=\int_0^{\infty}e^{-x}x^{s-1}dx \quad (s>0) $$
今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。