ベクトル解析07:ベクトルの勾配・発散・回転

こんにちは、ひかりです。

今回はベクトル解析からベクトルの勾配・発散・回転について解説していきます。

この記事では以下のことを紹介します。

  • スカラー場の勾配について
  • ベクトル場の発散について
  • ベクトル場の回転について
目次

スカラー場の勾配

ベクトル解析06の記事でスカラー場とベクトル場について紹介しました。

ここでは、スカラー場やベクトル解析に対してベクトル解析においてとても重要となる3つの演算を定義していきます。

まずは、スカラー場 \( f \) に対して勾配ベクトル \( \text{grad} \ f \) を定義しましょう。

定義1 (スカラー場の勾配ベクトル)

(1) 平面スカラー場 \( f(x,y) \) に対して勾配ベクトル(グラディエント) \( \text{grad} \ f \) を次で定義する。

$$ \text{grad} \ f=\left( \frac{\partial f}{\partial x},\frac{\partial f}{\partial y} \right) $$

これは次のベクトル(のようなもの)

$$ \nabla=\left( \frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial}{\partial y} \right) $$

を用いて次のように表される。( \(\nabla \) はナブラという)

$$ \text{grad} \ f=\nabla f $$

(2) 空間スカラー場 \( f(x,y,z) \) に対して勾配ベクトル(グラディエント) \( \text{grad} \ f \) を次で定義する。

$$ \text{grad} \ f=\left( \frac{\partial f}{\partial x},\frac{\partial f}{\partial y},\frac{\partial f}{\partial z} \right) $$

これは次のベクトル(のようなもの)

$$ \nabla=\left( \frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial}{\partial y},\frac{\partial}{\partial z} \right) $$

を用いて次のように表される。( \(\nabla \) はナブラという)

$$ \text{grad} \ f=\nabla f $$

\( \nabla \) はベクトルのような形をしていますが、正確にはベクトルではないので注意してください。( \( \nabla \) だけだと値がでてきません)

例1

(1) 次の空間スカラー場を考える。

$$ f(x,y,z)=2z^2y-xy^2 $$

このとき、

$$ \text{grad} \ f=\left( \frac{\partial f}{\partial x},\frac{\partial f}{\partial y},\frac{\partial f}{\partial z} \right)=(-y^2,2z^2-2xy,4zy) $$


(2) 次の空間スカラー場を考える。

$$ f(x,y,z)=x^2z+e^{\frac{y}{x}} $$

このとき、

$$ \text{grad} \ f=\left( \frac{\partial f}{\partial x},\frac{\partial f}{\partial y},\frac{\partial f}{\partial z} \right)=\left(2xz-\frac{y}{x^2}e^{\frac{y}{x}},\frac{1}{x}e^{\frac{y}{x}},x^2\right) $$

ベクトル場の発散

次に、ベクトル場 \( \mathbf{f} \) に対して発散 \( \text{div} \ \mathbf{f} \) を定義しましょう。

定義2 (ベクトル場の発散)

(1) 平面ベクトル場

$$ \mathbf{f}(x,y)=(f(x,y),g(x,y)) $$

に対して発散(ダイバージェンス) \( \text{div} \ \mathbf{f} \) を次で定義する。

$$ \text{div} \ \mathbf{f}=\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\partial g}{\partial y} $$

これは \( \nabla \) を用いて次のように表される。

$$ \text{div} \ \mathbf{f}=\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\partial g}{\partial y}=\left( \frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial}{\partial y} \right)\cdot (f(x,y),g(x,y))=\nabla \cdot \mathbf{f} $$

(2) 空間ベクトル場

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z)) $$

に対して発散(ダイバージェンス) \( \text{div} \ \mathbf{f} \) を次で定義する。

$$ \text{div} \ \mathbf{f}=\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\partial g}{\partial y}+\frac{\partial h}{\partial z} $$

これは \( \nabla \) を用いて次のように表される。

$$ \begin{align} \text{div} \ \mathbf{f}&=\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\partial g}{\partial y}+\frac{\partial h}{\partial z} \\ &=\left( \frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial}{\partial y},\frac{\partial}{\partial z} \right)\cdot (f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z))=\nabla \cdot \mathbf{f} \end{align} $$

例2

(1) 次の空間ベクトル場を考える。

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(x^2+yz,y^2+zx,z^2+xy) $$

このとき、

$$ \text{div} \ \mathbf{f}=\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\partial g}{\partial y}+\frac{\partial h}{\partial z}=2x+2y+2z $$


(2) 次の空間ベクトル場を考える。

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(2x^2z,-xy^2z,3yz^2) $$

このとき、

$$ \text{div} \ \mathbf{f}=\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\partial g}{\partial y}+\frac{\partial h}{\partial z}=4xz-2xyz+6yz $$

ベクトル場の回転

最後に、空間ベクトル場 \( \mathbf{f} \) に対して回転 \( \text{rot} \ \mathbf{f} \) を定義しましょう。

定義3 (ベクトル場の回転)

空間ベクトル場

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z)) $$

に対して回転(ローテーション) \( \text{rot} \ \mathbf{f} \) を次で定義する。

$$ \text{rot} \ \mathbf{f}=\left( \frac{\partial h}{\partial y}-\frac{\partial g}{\partial z},\frac{\partial f}{\partial z}-\frac{\partial h}{\partial x},\frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y} \right) $$

これは \( \nabla \) を用いて次のように表される。

$$ \begin{align} \text{rot} \ \mathbf{f}&=\left( \frac{\partial h}{\partial y}-\frac{\partial g}{\partial z},\frac{\partial f}{\partial z}-\frac{\partial h}{\partial x},\frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y} \right) \\ &=\left( \frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial}{\partial y},\frac{\partial}{\partial z} \right)\times (f(x,y,z),g(x,y,z),h(x,y,z))=\nabla \times \mathbf{f} \end{align} $$

例3

(1) 次の空間ベクトル場を考える。

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(x^2y,-2xz,2yz) $$

このとき、

$$ \text{rot} \ \mathbf{f}=\left( \frac{\partial h}{\partial y}-\frac{\partial g}{\partial z},\frac{\partial f}{\partial z}-\frac{\partial h}{\partial x},\frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y} \right)=( 2z+2x,0,-2z-x^2) $$


(2) 次の空間ベクトル場を考える。

$$ \mathbf{f}(x,y,z)=(xz^3,-2x^2yz,2yz^4) $$

このとき、

$$ \text{rot} \ \mathbf{f}=\left( \frac{\partial h}{\partial y}-\frac{\partial g}{\partial z},\frac{\partial f}{\partial z}-\frac{\partial h}{\partial x},\frac{\partial g}{\partial x}-\frac{\partial f}{\partial y} \right)=(2z^4+2x^2y,3xz^2,-4xyz) $$

今回はここまでです。お疲れ様でした。また次回にお会いしましょう。

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